著者
唐澤 敏彦 笠原 賢明 建部 雅子
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.357-364, 2001-06-05
被引用文献数
3 2

AM菌との共生程度が低い作物を栽培した跡地では、後作物のAM菌感染率が低くなるために、その生育が劣る。そこで、翌春まで裸地になる上記作物の収穫跡地に、宿主作物を緑肥として降雪時まで栽培することによって、翌年の作物生育を改善できるか検討した。結果の概要は次の通りである。 (1)生育初期における後作トウモロコシの生育、リン吸収、AM菌感染率は、裸地あるいは非宿主作物(シロガラシ)跡地に比べて、宿主作物(ヒマワリ、ベッチ)を栽培した跡地で著しく優れ、収穫時にも優る傾向がみられた。 (2)後作トウモロコシの生育、リン吸収、AM菌感染率は、緑肥作物のすき込みの有無の影響を受けなかった。 (3)以上の結果から、宿主の栽培によって増殖したAM菌が、後作物のAM菌感染率を高め、それが、ヒマワリやベッチの導入効果の主な原因になっていると考えられた。そこで、緑肥作物を選定する際の基準に、AM菌との共生程度を加えることが有効である。 (4)ヒマワリを9月以降に播種した場合、トウモロコシに対する効果は認められなかった。そこで、緑肥としてAM菌の宿主作物を導入する場合、8月に播種する必要がある。
著者
義平 大樹 唐澤 敏彦 中司 啓二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.165-174, 2000-06-05
被引用文献数
2

道央多雪地帯においてコムギ, ライムギより多収を示す秋播ライコムギ品種と低収にとどまる品種の生育特性の違いを把握し, ライコムギの多収品種育成のための育種目標および多収を実現するための栽培上の注意点を明らかにするために, ライコムギ品種, 北海道の秋播コムギ品種, および秋播ライムギ品種の子実収量とその関連形質を4ヶ年にわたり比較調査した.ポーランド育成のライコムギ品種に, コムギ品種およびライムギ品種に比べて子実収量の高いものが多かった.しかし, ロシア, ウクライナ, フランス, カナダ, 韓国, イングランド育成のライコムギ品種の子実収量はコムギ品種に比べて低かった.前者の多収要因は, コムギに比べて一穂重および地上部重が大きいこと, ライムギに比べ収穫指数が高いことにあると考えられた.後者の低収要因には, 第一に雪腐病発病度が高いこと, 第二に穂数が少ないこと, 第三に収穫指数が低いことがあげられ, 長稈のライコムギ品種において倒伏も低収に関与すると考えられた.道央多雪地帯においてライコムギの多収を実現するためには, 育種目標として冬枯れに対する耐性に優れたもの, 穂数が多く収穫指数の高いものを選抜すること, 栽培技術としては冬枯れによる穂数の減少を防ぐことが重要であり, これらがある程度満たされた時, 穂重型で地上部重の大きいライコムギの特性が多収性に結びつくことが示唆された.