著者
中尾 七重
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.29-38, 2018-01

九州には、広間型間取のテノマ・ナカエ接合分棟型民家と、縦割型間取の平行二棟造系分棟型民家が分布している。そのうち、平行二棟造系民家は、佐賀県南部・福岡県南部・熊本県北部に分布する。この分布域は、肥前守護小弐氏の支配領域および肥後守護菊池氏の支配領域と重なり合うが、守護家活動期と民家建設時期に同時性はない。平行二棟造系民家は、室町幕府の後継者たる江戸幕府の九州支配正統性を示すため、旧守護家支配地にのみ、この民家形式を許可した在地政策が成立起源と推測される。
著者
中尾 七重
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.603, pp.147-154, 2006-05-30 (Released:2017-02-17)
参考文献数
51

In this paper we argue the coincidence of distribution area of Honmune style minka and the territory controlled by the Ogasawara, the Constable of Shinano. The factors of the coincidence are as follows: 1. The Ogasawara made it their policy to give members of the local gentry permission to erect decorative gables in the Sengoku period. 2. Under the peasant proprietorship of the Edo period, these of jizamurai descent and village officials expressed their status through minka design. 3. The feudal lord allowed this because it was conducive to stability and smooth collection of land tax. In conclusion, the Honmune style originated in medieval times and revived at the Edo period.
著者
中尾 七重
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.39-49, 2011-01

歴史的建造物の建築年代はこれまで建築史研究において様式編年の手法を用いて調べられてきた。重要文化財等の文化財指定においても建築物の歴史的評価においても建築年代は重要な建築情報である。編年法は優れた方法であるが,編年の最初の時期設定や調査遺構数が少ない場合などの弱点も存在する。絶対年代によって相対年代法である編年を補う方法として,年輪年代法と放射性炭素年代測定法の紹介を行う。そして放射性炭素年代測定法の原理(<14>^の生成と壊変,生命体の<14>^C取り込み),高精度化をもたらしたAMS(Accelerator Mass Spectrometry)法,暦年較正法と暦年較正曲線(IntCal),ウィグルマッチ法(wiggle-matching)について解説する。放射性炭素年代測定法を建築史研究において使いこなすために,測定対象の選定,測定部再の選定と試料採取の方法,解析グラフの見方を説明し,放射性炭素年代測定法が建築史研究に益する研究方法であることを述べる。