著者
中尾 七重
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.29-38, 2018-01

九州には、広間型間取のテノマ・ナカエ接合分棟型民家と、縦割型間取の平行二棟造系分棟型民家が分布している。そのうち、平行二棟造系民家は、佐賀県南部・福岡県南部・熊本県北部に分布する。この分布域は、肥前守護小弐氏の支配領域および肥後守護菊池氏の支配領域と重なり合うが、守護家活動期と民家建設時期に同時性はない。平行二棟造系民家は、室町幕府の後継者たる江戸幕府の九州支配正統性を示すため、旧守護家支配地にのみ、この民家形式を許可した在地政策が成立起源と推測される。
著者
佐藤 真理子
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.39-42, 2019-01

" 京都の舞妓さんが胸高にきつく締める帯で顔の汗を抑えている" との通説は,皮膚圧-発汗反射によるものと考えられる.本研究は,実際に帯の締め位置で体幹部を圧迫した際.顔面や頭部周辺の発汗がどの程度抑制されるかを明らかにすることを目的とした.健康な若年女性5 名を対象に,35 ℃・50 % RH の暑熱環境下で,腋窩(後腋窩点高)・アンダーバスト(UB,第5,6 肋間近傍)・腰(腸棘点高)の3 部位をベルトで締め,それぞれ約5.0kPa の圧迫を負荷した.測定項目は,局所発汗量(前額,頬部,後頸部,胸部,大腿前面),皮膚温(胸部,上腕部,大腿部,下腿部),直腸温である.その結果,腋窩圧迫時に前額,頬部,後頸部で25 ~ 35 %,UB圧迫時に頬部で約10%,有意に発汗が減少した." 舞妓の胸高な帯による顔の汗抑制" は実証されたが,腋窩とUB のどちらの圧迫時にも大腿部で有意に発汗が増加し(15 ~ 55 %),圧による発汗抑制効果に対する代償性の発汗促進と考えられる.また,腰圧迫時には,顔面部,頭部周辺の発汗増加傾向が示され,男性の和服着装時の帯締めでは,顔面部の発汗増加が生じる可能性が示された
著者
小山 真理
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.69-79, 2017-01

筆者は2016年度より文化学園大学短期大学部において、初めて「文章表現演習」を担当した。これまで留学生を対象とした「日本語」の授業を主に担当してきたため、日本人学生のみの授業はほとんどなく、誤用も留学生とは違うことに気づいた。そこで本稿では、その誤用を洗い出し、日本人短大生の文章表現に関する諸問題を整理して概観した。誤用では「話し言葉」が最も多く、[話すように書く」傾向がはっきりと現れた。それ以外にも、読点が少ないこと、漢字表記や語彙の選択ミスなども目立ち、漢字力や語彙力の不足が明らかになった。しかし、学生へのアンケート調査では、漢字テストを必要だと感じておらず、危機意識が希薄であることがわかった。また、本授業では、学生が作文嫌いにならぬよう、自己理解・他者理解を織り交ぜた教材を作成し、添削を操り返してきた。アンケートでは、全体の9割弱が楽しんで受講でき、全員が少しでも上達したと答え、当初の目的は達成できた。だが、陥りやすい誤用をどう是正するか、語彙力をどうつけさせるかなど課題は多い。今回得た分析結果や問題点を、今後の授業計画・教材開発、指導の一助としたい。
著者
糸林 誉史
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-11, 2017-01

モラル・エコノミーは,社会に埋め込まれ道徳的規範を伴った社会関係に焦点を当てることの重要性を指摘した。だが,地域社会や規範を本質的なものとして想定しており,その規範がなにに由来するのか,どのような実践の場で生成しているのか,その条件とは何かなど,動態的なプロセスや市場経済との関係についての究明が不十分であった。構造的な組み合わせとして文化と経済を分析することの困難を乗り越え,経済的な活動がいかに生じているのか,それが文化的に構築された文脈の中にいかに埋め込まれているのかを明らかにする必要がある。本研究の目的は,1970年代のモラル・エコノミー論争と1990年代の記号論的転回を経由して「経済的なもの」を捉えるための社会的文脈へと拡張するために,各分野の理論を比較検討することによって,結合体,連結体,ネットワークなどの概念と「経済的なもの」をめぐる説明モデルの内容や有効性を検証することである。また,近年,再評価の高まりつつある記述モデルとしての「アクターネットワーク理論」の可能性をみることで,物質的記号論の次元が切り開く社会形成の邂逅の層位の可能性についても検討を加えたい1)。
著者
渋井 君也
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.109-118, 2019-01

『源氏物語』は、中国では「日本の『紅楼夢』」と称されることがよくある。初めて『源氏物語』全文を中国語に翻訳した豊子愷は、かつて「白頭今又訳紅楼(白頭今又『紅楼』を訳す)」と書き、『源氏物語』を翻訳することを、『紅楼夢』を翻訳することに喩えた。『紅楼夢』の研究が中国で「紅学」と称されるのに対し、『源氏物語』の研究は「源学」と称される。近年、中国の『源氏物語』の研究が迅速に進むとともに、『源氏物語』と『紅楼夢』との比較研究は、中国における「源学」研究に占める比重が非常に大きいだけでなく、中国文学と外国文学を含む『紅楼夢』の比較文学の研究においても、それに比肩するのは恐らく『紅楼夢』と『金瓶梅』との比較研究のみである。『源氏物語』がそれほどまでに注目されるのは、主に中国の読者からみれば『源氏物語』が、『紅楼夢』と『金瓶梅』以外に貴族家庭小説の特徴を有し、しかも女性描写への傾注を特色とし、貴族社会を描いた長篇世情小説を提供したためである。
著者
髙木 美希
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.125-139, 2019-01

中国ムスリムの諸民族は中華世界に居住し、中国文化とイスラーム文化双方の影響を受けながら独自の文化を形成してきた。しかし、1949 年に中華人民共和国が成立した後、中国国内では1949 年以前の服装は「封建的」なものであるとして徹底的に排除され、人民服が実質的な国民服とされた。このため、他の民族と同様に、中国ムスリムの伝統服の制作・継承・保存も停滞状態にあると言える。現在、中国国内の博物館や観光地、書籍などで中国ムスリム諸民族の民族衣装が紹介されるが、そのなかには洋服をもとにデザインしたような現代的な衣装が多く、伝統服であるとは言い難い。このような状況をふまえ、本研究では1949 年以前の中国ムスリム女性の服装に関して残された写真をもとに分析し、2 体の服装を再現する。さらに、デザインやパターンを図で示すことによって、中国ムスリム女性の伝統的な服装が未来へと継承されていくことを目指す。