著者
中山 二博 木佐貫 聡 黒江 和斗 伊藤 学而
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.339-348, 2001-10-30
被引用文献数
13

鹿児島大学歯学部附属病院矯正科は1980年4月に開設され,口唇裂口蓋裂を有する矯正患者についても治療を行ってきた.開設時から2000年3月までの20年間に受診した口唇裂口蓋裂患者の実態と経時変化を調査することを目的として,統計的観察を行い,以下の結果を得た.<BR>1.矯正科を受診した口唇裂口蓋裂の初診患者は624名で,同科の初診患者全体の7.8%を占めていた.ただし初診後に実際に矯正治療を開始した患者でみれば,その18.4%を占めていた.<BR>2.口唇裂口蓋裂の初診患者数には1980年度,1984年,1990年度,1995年度にピークがあったが,全体的には年を追って緩やかな減少傾向を示していた.<BR>3.口唇裂口蓋裂患者の初診時年齢は平均7歳6ケ月であったが,特に4歳児から7歳児までの乳歯咬合期後半と前歯群交代期の者が多かった.<BR>4.口唇裂口蓋裂の初診患者を,ほぼ乳歯咬合期に対応する0~5歳,混合歯列期に対応する6~11歳,永久歯咬合期に対応する12歳以降に区分して年次推移を見ると,最初の8年間は6~11歳の初診患者が多かったが後半の8年間では0~5歳が多くなっていた.<BR>5.口唇裂口蓋裂の初診患者の紹介元は,当院第一および第二口腔外科が8割以上を占めていた.<BR>6.裂型別頻度は,唇裂5.6%,唇顎裂21.4%,唇顎口蓋裂55.8%,口蓋裂17.0%であった.経時的には,唇顎口蓋裂が78.0%から36.1%に減少し,口蓋裂が6.3%から33.7%に増加していた.唇顎裂,唇顎口蓋裂の裂側は,両側20.1%,左側54.4%,右側25.5%であった.<BR>7.唇裂,唇顎口蓋裂では男子が多く,口蓋裂では女子が多かったが,唇顎裂では男女ほぼ同数であった.<BR>8.咬合異常は,反対咬合が68.8%,叢生が12.5%,上顎前突が10.4%であった.ただし,反対咬合は経時的に84.9%から44.6%に減少し,上顎前突は2.5%から16.9%に増加していた.
著者
中山 二博 濱坂 卓郎 大勝 貴子 梶原 和美 小椋 幹記 黒江 和斗 伊藤 学而
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.49-57, 2003
被引用文献数
7

近年,増加している成人女性の矯正治療に伴う問題点を調査するため,鹿児島大学歯学部附属病院矯正科では,就業女性の矯正治療モニターを募集した。矯正治療モニターに応募した123名のうち,モニター選考の口腔診査に参加した67名にアンケート調査を行い,矯正治療を受けようと決めた動機と矯正治療モニターに応募した経緯を分析した。矯正治療の動機は,歯並びの見た目が悪い97%,顔貌が気になる66%,歯磨きがしにくい64%などであった。歯並びが気になり始めたのは13〜15歳,顔貌が気になり始めたのは16〜18歳であった。対象の90%は矯正治療の未経験者で,治療を受けなかった理由は治療費が高い82%,治療期間が長い75%などであった。応募の動機は,モニター募集に触発された88%,治療費が減額される78%,大学病院だから安心73%などであった。治療を始めようと思った理由は,モニター募集があったから82%,経済的余裕ができた46%,大人でも治療できると分かった39%などであった。モニター応募者には10代から審美的改善への欲求があった。受療に至らなかった理由として費用,治療期間などのほか,成人は矯正治療できないと考えていた者が3割もあり,矯正治療に対する正確な情報が不足していることが明らかになった。矯正治療モニターの募集が,結果的に成人の矯正治療に関する情報不足の解消と,潜在的治療希望者に受療のきっかけを与えた。