著者
青山 智夫 神部 順子 中山 榮子 長嶋 雲兵
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.49-77, 2012-04-28 (Released:2012-05-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

2011年3月12日以降に東京電力福島第1原子力発電所から南,北西方向に拡散した放射性物質の4カ月間にわたる変化を次のようにまとめた.空間線量率,環境資料等を文部科学省,地方自治体等が公表した資料から抽出し,5月15日から7月29日間の福島県,関東各県の主要都市の空間線量率が自然界で本来の物理的半減期と異なる速度で半減することを表す指標(滞留半減期)を計算した.また福島県相馬郡飯舘村八木沢地区の土壌,雑草,陸水の放射線強度の時間変化を示して議論した.さらに東京と福島市の下水汚泥の放射線強度の問題点を示した.これにより放射性物質と大気に関する知見として,放射性物質は浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter, SPM)として移動するが,それは環境省大気汚染物質広域監視システムでは検出しにくいタイプのSPMであること,そして放射性SPM分布には複雑な構造が存在することを示した.またその構造はγ線のエネルギー分布観測で識別できること,加えて放射性SPMの移動には大気境界面が関与していることを示した.さらに沈降した放射性物質と降雨との関連,空間線量率の微細動現象の周期性を示し,同現象と気温の相関を示した.
著者
高尾 哲也 藤本 清彦 中山 榮子 佐々木 央 永井 寛 桃原 郁夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.757-765, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
19

木製まな板およびエンボス加工されたプラスチック製まな板について, 新品および使用済みのまな板をそれぞれ3枚入手し, 模擬的な調理後の洗浄, 次亜塩素酸消毒処理, 自然乾燥の各工程における一般生菌数および大腸菌群数を測定した. また, まな板の表面粗さの定量的な検討を行い, 粗さと生菌数等との関係を検討した. 模擬的な調理を行った後の, 洗浄, 消毒, 乾燥工程後の一般生菌数及び大腸菌群数は木製新品まな板, 木製使用済みまな板, プラスチック製使用済みまな板間で有意な差はなかった. 一方, 未使用および使用済みまな板双方で表面粗さは, まな板によって差があるものの, 全体としては木製まな板の方がプラスチック製まな板と比べて小さかった. 数年間使用したことにより平滑性が低下した木製まな板でも, 粗さはエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であった. まな板の表面粗さと微生物の残存性との関係を検討した結果, 凹凸の平均粗さ (Pa) が乾燥時の一般生菌数と大腸菌数で正の相関を, 凹凸差を示す最大高さ (Pz) が洗浄後と消毒後の一般生菌数と大腸菌数とに対して正の相関を示した. 一方, 最大深さ (Pv) はこれらと相関を示さなかった. これらの事から木製まな板においては, Pa及びPzがエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であり, 「大量調理施設衛生管理マニュアル」が定める洗浄, 消毒, 乾燥工程を経れば, 木製まな板とエンボス加工された使用済みプラスチック製まな板との間で, 洗浄性や消毒性, 微生物の生残性にも有意な差は無く, 両者を同様に使用でき, 衛生性の差も大きくないと考えられた.
著者
八木 徹 神部 順子 中山 榮子 長嶋 雲兵 青山 智夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.199-209, 2014 (Released:2014-10-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

茨城県西南部,千葉県北西部,埼玉県西部の放射性物質の2012年4月から2013年3月までの一年間の環境動態を調べた.ガンマ線空間線量率の時系列変化をフーリエ変換してNyquist周波数48.2時間を境界として低周波,高周波成分とに分けた.低周波成分では,つくばみらい,石岡,牛久,土浦市,境町で7~8月に放射性物質の流入を示す線量率増加があった.高周波成分の中では24時間周期の現象がフーリエ・スペクトル中に特徴的に見出された場所があった.その現象を詳しく調べるため,毎日の4, 12, 20時の空間線量値の時系列変化を一年間にわたって調べた.12時の空間線量値は各地点特有の変化を示した.低周波,高周波成分の両方で放射性物質の移動が確認された.
著者
青山 智夫 八木 徹 神部 順子 中山 榮子
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.1105270129-1105270129, (Released:2011-05-28)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

2011年3月11日14時46分, M9.0の東北地方太平洋沖地震が誘発させた福島第1原子力発電所事故の放射性物質拡散について測定値に基づき考察した.(1) 放射性物質の拡散は方向による相違がある.原発から北西方向に20, 30, 40, 65 kmの地点で年間空間線量率の積算値を予測すると293, 162, 41.1, 16.2 mSv/yearとなり,40 km地点の実測値を737時間積算すると7.6 mSvとなった.(2) 同地点の土壌から105 Bq/kgオーダの 137Cs が3月20日と26日に検出された.土壌中の137Csの残存放射線量はバラツキが大きく,時系列関数は計算できなかった.131Iの滞留半減期は9.6日である.池水中の137Csの滞留半減期は11日,131Iは7.2日であった.これらの数値は4月14日17時までに公表されたデータに基づいて算出された.