著者
中岡 和代 立山 清美 倉澤 茂樹 丹葉 寛之 高畑 進一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.151-162, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
13

本研究の目的は,自閉スペクトラム症(以下,ASD)児の食に関する行動を測定する尺度である「食に関する行動質問紙」の妥当性と信頼性を検討することであった.3〜18歳のASD児を対象に保護者に回答を求める調査を実施し,分析対象者は384名であった.ASD児の平均年齢は9.8±4.2歳,性別は男児301名,女児82名,未回答1名であった.因子分析の結果,5因子42項目となり,因子は【偏食】,【不器用・マナー】,【食への関心・集中】,【口腔機能】,【過食】と命名された.Cronbachのα係数は全体で0.930,5因子において0.781〜0.923であり,「食に関する行動質問紙」の構成概念妥当性,内容的妥当性,信頼性(内的整合性)が確認された.
著者
倉澤 茂樹 立山 清美 丹葉 寛之 中岡 和代 大歳 太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.605-615, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
16

要旨:通常の学級に在籍する不器用さを呈する学習障害児に対して,作業療法士(以下,OT)が約7ヵ月間にわたり7回学校を訪問し,保護者および教職員にコンサルテーションを実施した.保護者および教員の主訴に対し,OTは特性要因図を用いて本児の状況を説明し,OTが提案する支援方法について理解を得た.結果,対象児の特性を生かした教授方法や書字しやすい教材を工夫したことによって,文字の読み書きが習得され,教科学習に対する動機の向上も認められた.家庭での問題行動は,ペアレント・トレーニングを実施したことで減少した.
著者
山本 直毅 今村 明 中岡 和代
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1108-1115, 2020-09-15

はじめに 感覚刺激への過敏性や低感受性は,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)によくみられる特性である.ASDの感覚特性は,聴覚,触覚,味覚,嗅覚,視覚,前庭感覚,固有感覚のいずれにおいても生じ,臨床的には痛みの感覚や内臓感覚にも生じ得る.このような独特の特性ゆえに,「些細な話し声でも,神経に直接響くような強烈な刺激となる場合があり,パニックになってしまう」,「鳥肌が立つほど寒い真冬でも薄着でいて,風邪をひいてしまう」等,われわれとは別の感覚で世界を捉えていて,生活の困難さを抱えている場合がある.こういった感覚特性に対する理解を深めることは,それに対する支援を考えるうえで重要である. 本稿ではまず,ASDの感覚に対する反応とその中で用いられる用語について解説しつつ,それぞれの感覚領域における実際上の問題について述べる.次に,感覚特性において,多様な表現型が生じる仕組みを,生物・心理・社会モデル(Bio-Psycho-Social Model;以下,BPSモデル)として説明する.最後に,それぞれの感覚領域における支援について解説する.
著者
東 泰弘 高畑 進一 兼田 敏克 中岡 和代 石原 充
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.214-224, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
26

日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(A-ONE)の信頼性と妥当性を古典的テスト理論に基づいて検討した.日本版A-ONEは,5領域22項目の日常生活活動(ADL)観察を通して,ADLを妨げている神経行動学的障害を同定する評価法である.20名の脳血管障害(CVA)患者に対して,評価者内信頼性および評価者間信頼性を検討し高いkappa係数を認めた.36名のCVA患者に日本版A-ONEと既存のADL評価および各種神経心理学的検査を実施し,併存的妥当性を検討し両者間に中等度以上の相関を認めた.これらにより,日本版A-ONEの信頼性と妥当性が確認できたと考える.今後は,CVA患者以外の対象者も含め検討していく.
著者
東 泰弘 高畑 進一 松原 麻子 西川 拡志 重田 寛人 由利 禄巳 中岡 和代 兼田 敏克
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.161-166, 2019-02-10

要旨 【背景】日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(日本版A-ONE)の内的妥当性を検討した.日本版A-ONEは,日常生活活動(activities of daily living;ADL)観察を通して,神経行動学的障害を同定する評価法である.【対象と方法】対象は,脳卒中の診断のある65例であった.全65例の22 ADL項目に対してRasch分析を行った.次に属性による特徴を明らかにするために右半球障害30例と左半球障害35例に分けて同様に分析した.【結果】全65例の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「浴槽移乗」,「洗顔と手洗い」の5項目が不適合項目となった.右半球障害の分析では,「理解」,「浴槽移乗」の2つが,左半球障害の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「洗顔と手洗い」の4つが不適合項目となった.【結語】全65例で不適合項目となった5つを除く17項目で内的妥当性が認められた.不適合項目になった理由として,特定の障害の有無で能力が決定する項目があったことが考えられた.今後は,対象者数を増やして検討する.