著者
中村 一平 奥田 昌之 鹿毛 治子 國次 一郎 杉山 真一 藤井 昭宏 松原 麻子 丹 信介 芳原 達也
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.279-289, 2004-12-31
被引用文献数
1 1

【目的】現在まで高齢者の介護予防や体力増進に関する多くの研究が行われているが,コントロール群との比較を行っているものは数少ない.今回,運動介入の効果を検証するため,同一町内に居住し,同じ介護老人福祉施設で同じサービスを受けている高齢者を居住地区と通所曜日により2群に分け,対照群をおき非介入期間を設け運動介入時期をずらしてクロスオーバー研究を行った.【方法】ある介護老人福祉施設の「生きがい活動支援通所事業」の参加者に,研究調査に関して文書で説明を行い,書面で同意を得た女性25名(80.3±3.4歳)を対象とした.2003年6月〜2004年1月に,介入先行群10名に3ヵ月間に5回の運動介入を行い,3ヵ月後に介入する群を入替え,介入後行群15名に同様の運動介入を行った.また,介入期間中はホームプログラムを促した.運動は特別な道具が要らず簡単なものとし,ウォーミングアップ5分,ストレッチング15分,筋力増強15分,クールダウン5分の計40分間で,デイサービスの時間に行った.測定項目は,握力,背筋力,10m歩行速度・歩数,40・30・20cm台からの立ち上がり,40cm台昇降,開眼・閉眼片足立ち,タンデム歩行安定性,Danielsらの徒手筋力検査法,老研式活動能力指標とした.【結果と結論】クロスオーバー研究でコントロールとなる非介入期間と比べて介入期間のトレーニング実施により背筋力(p=0.032)が増強した.介入期間の前後では背筋力の他に,股関節屈曲力,膝関節屈曲力・伸展力,足関節底屈力が増加したが,これらも非介入期間と比較すると有意差はなかった.クロスオーバー研究の制限はあるが,地域高齢者のデイサービス利用者で平均80歳の高年齢の場合には,月2回の運動指導のみで自宅でのトレーニングを促しても身体能力の向上という効果はでにくいと考えられる.
著者
東 泰弘 高畑 進一 松原 麻子 西川 拡志 重田 寛人 由利 禄巳 中岡 和代 兼田 敏克
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.161-166, 2019-02-10

要旨 【背景】日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(日本版A-ONE)の内的妥当性を検討した.日本版A-ONEは,日常生活活動(activities of daily living;ADL)観察を通して,神経行動学的障害を同定する評価法である.【対象と方法】対象は,脳卒中の診断のある65例であった.全65例の22 ADL項目に対してRasch分析を行った.次に属性による特徴を明らかにするために右半球障害30例と左半球障害35例に分けて同様に分析した.【結果】全65例の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「浴槽移乗」,「洗顔と手洗い」の5項目が不適合項目となった.右半球障害の分析では,「理解」,「浴槽移乗」の2つが,左半球障害の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「洗顔と手洗い」の4つが不適合項目となった.【結語】全65例で不適合項目となった5つを除く17項目で内的妥当性が認められた.不適合項目になった理由として,特定の障害の有無で能力が決定する項目があったことが考えられた.今後は,対象者数を増やして検討する.
著者
東 泰弘 松原 麻子 西川 拡志 西川 智子 高畑 進一
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.194-203, 2017-04-15

要旨:国外で標準化されているADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(以下,A-ONE)の本邦での信頼性と妥当性を検討した.A-ONEは,5領域22項目のADL観察を通して神経行動学的障害を同定する評価法である.信頼性は,4名の対象者のビデオ映像を用い評価者3名で評価者間および評価者内信頼性を検討し中等度以上の一致率を認め,妥当性は,22名の対象者にA-ONEとADL評価および各種高次脳機能検査を実施し両者間に中等度以上の相関を認めた.しかし評価しなかった項目や日本人の生活習慣に合致せず検討できなかった項目があった.今後の課題は,日本版A-ONEを作成し,すべての項目で対象者数を増やし信頼性と妥当性を検討することである.
著者
松原 麻子 車谷 洋 村上 恒二 青山 信一
出版者
広島大学保健学出版会
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.27-34, 2004-03
被引用文献数
1

頸髄損傷者の食事動作に関して,スプーンの使用方法を替えることにより,上肢各関節(肩・肘・前腕・手関節)の角度と運動の範囲がどのように変化するかを明らかにするために,三次元動作解析を行った.対象はC6レベルの頸髄損傷者5人で,「ヨーグルトを食べる」という課題を2種類の自助具(自助具1:母指側使用,自助具2:手掌側使用)を用い実施した.撮影された画像から時間と上肢各関節角度を求め,自助具1,自助具2使用時で比較検討した.結果,自助具1使用時には自助具2使用時と比べ,1回の食事動作におけるすくう動作が占める割合が多い傾向にあった.また,食物をすくう際に肩関節屈曲,肩関節外転の運動が多く必要とされ,一連の動作を通じて前腕が回内方向に移行し,肩関節が屈曲・外転方向に移行することが明らかとなった.以上より,前腕の回外運動が十分可能である場合には手掌側使用の自助具の導入が望ましく,また母指側使用で食事を行う場合には,食物を口へ運ぶ動作だけでなく,すくう動作においても肩関節の運動が必要になることを十分に考慮した上で,自助具の提供やセッティングを行うことが重要であることが示唆された.The purpose of the present experiment was to examine how the upper limb movements (shoulder, elbow, forearm, wrist) of patients with spinal cord injury (C6 level) were affected while using two types (type 1: pronation type, type 2: supination type) of self-helping device. Five subjects were required to eat 5 spoonfuls of yoghurt. We recorded the position of 11 light reflecting markers attached to the subjects' body with three cameras. We divided the eating action into three phases, the scoop phase, reach-to-mouth phase, and reach-to-plate phase. These kinematic landmarks were used to define the dependent variables. We calculated five joint angles (shoulder flexion, shoulder abduction, elbow flexion, forearm supination, wrist extension) with a three-dimensional video-based motion analysis system (APAS System, Ariel Dynamics), and analyzed how they changed at each phase. We compared them while using type 1 and type 2. While using type 1, the scoop phase played a larger part than other phases, and shoulder flexion, shoulder abduction and elbow flexion angles increased, not only in the reach-to-mouth phase but also in the scoop phase, and the supination angle decreased. This result suggests that patients who can supinate their forearm had better use type 2, and also that it is important to consider upper limb movements in the scoop phase when we provide patients with a self-helping device. In this study, however, we focused only on upper limb movements. We also have to analyze head, neck and trunk movements and examine the relationship among upper limb, head, neck and trunk.