著者
高橋 淑郎 中島 範昭 佐藤 真実 藤盛 啓成 石田 孝宣
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.203-208, 2019 (Released:2020-02-21)
参考文献数
45

近年,世界的に甲状腺微小乳頭癌に対する過剰診断・過剰治療が問題視されている。欧米のガイドラインでは過剰診断にならないよう1cm以下の結節に対するFNAを推奨しない方向に進んでいるが,我が国では世界に先駆けて微小癌に対する非手術・経過観察(active surveillance)の前向き試験が行われ,この結果,本邦のガイドラインでは微小癌に対するactive surveillanceが認められるようになった。本邦からの微小癌に対するactive surveillanceのエビデンス発信により,諸外国でもactive surveillanceが受け入れられつつあるようであるが,微小癌の治療選択を標準化するために克服しなければならない課題は残っており,そのためには我が国だけでなく諸外国からのエビデンスの蓄積,医療者および一般社会への教育,啓蒙も必要である。
著者
小野田 尚佳 神森 眞 岡本 高宏 中島 範昭 伊藤 研一 宮崎 眞和 吉田 明
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-114, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
9

甲状腺乳頭癌(PTC)に対する放射性ヨウ素内用療法の現状を把握し,意義を見出すため,多施設共同の後ろ向き研究を行った。ʼ03~ʼ12年に初発のPTCに対し全摘術を受けた患者1,324例のデータを7施設から集積した。全摘,内用療法施行とも増加傾向にありʼ12年には全初発PTC手術例の60%,25%を越えた。内用療法は480例に施行され全摘例の36%に相当,M1,Stage ⅣB,ⅣC症例の2/3に施行されていた。疾患特異的生存率は内用療法施行群で有意に不良であった。予後リスクによって層別化すると内用療法施行により生命予後に差は認めなかったが,中間リスクの施行例は非施行例に比し術後診断の進行度が有意に高かった。本研究により内用療法の現状が明らかとなり,中間リスク患者での効果が示唆されたが,適応や治療法の問題点も確認され,内用療法の意義を見出すためにはさらなる症例集積研究が必要と考えられた。