著者
伊藤 研一 清水 一雄 吉田 明 鈴木 眞一 今井 常夫 岡本 高宏 原 尚人 筒井 英光 杉谷 巌 杉野 公則 絹谷 清剛 中駄 邦博 東 達也 野口 靖志 阿部 光一郎 内山 眞幸 志賀 哲
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.310-313, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
4

本邦においても進行甲状腺癌に対する分子標的薬が承認され,放射性ヨウ素治療(RAI)抵抗性進行性分化型甲状腺癌に対する治療が新しい時代に入った。しかし,適応患者の選択に際しては,病理組織型,進行再発後の放射性ヨウ素(RAI)治療に対する反応などを適切に評価した上で判断することが重要であり,分子標的薬特有の有害事象に対する注意も必要である。分子標的薬の適正使用に際しては治療による恩恵と有害事象を十分に考慮した適応患者の選択が肝要である。また,未解決の問題に関しては,本邦での臨床試験による検討が必要と考えられる。
著者
伊藤 研一 大場 崇旦 家里 明日美 岡田 敏宏 花村 徹 渡邉 隆之 伊藤 勅子 小山 洋 金井 敏晴 前野 一真 望月 靖弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.168-174, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
55

甲状腺未分化癌は発生頻度の少ないorphan diseaseであるが,甲状腺癌死に占める割合は高くその予後は極めて不良である。甲状腺未分化癌のほとんどは,分化癌から脱分化のステップを経て発症してくると考えられているが,未分化転化の機序も解明されていない。現在のTNM分類では,原発巣の状況と遠隔転移の有無でⅣA,ⅣBとⅣCに分類されているが,多くは診断時ⅣB以上である。本邦と海外で共通に報告されている予後因子としては,診断時の年齢,原発巣の広がり,遠隔転移の有無がある。本邦で設立された甲状腺未分化癌研究コンソーシアムでの世界に類をみない多数例の解析では,急性増悪症状,5cmを越える腫瘍径,遠隔転移あり,白血球10,000mm2以上,T4b,70歳以上が有意な予後不良因子であった。今後,新規治療戦略の開発とともに,未分化癌においても治療戦略に有用なバイオマーカーが同定されることが期待される。
著者
雨宮 智浩 青山 一真 伊藤 研一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.86-95, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
28

Due to COVID-19, university lectures in Japan faced a change of face-toface lecture to a live online lecture. However, students at home need extra efforts to stay engaged to online lectures. This paper aims to increase engaged participants by changing the instructorߣs face shown over the lecture slide. First, students selected an in-favor and out-of-favor instructor photo which was both used to animate facial expressions in real-time using an open source deepfake software “Avatarify”. Students posted comments during the lecture and answered a simple quiz at the end. No significant difference was found for the quiz result, although the number of posting comments increased for the favorable photo. Therefore, we speculate that facial appearance influences the engagement of student participation in a live online lecture.
著者
伊藤 研一
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.117-126, 2015-03

いわゆる『逆転移』は心理療法において頻繁に生じ、またとても重要である。しかしながら経験の少ない初心心理療法家にとって逆転移に適切に対処することは容易ではない。クライン,J.が開発たインタラクティブフォーカシングはこの『逆転移』を感じ、吟味するのに有効な方法であることがわかった。そこで私たちが経験した初心心理療法家のインタラクティブフォーカシングの例をあげて、その意味について検討する。はじめに逆転移の意味について精神分析の観点と心理療法のより広い文脈から論じた。次に『逆転移』を経験するために調整したインタラクティブフォーカシングの方法を紹介し、例をあげた。最後に『逆転移』に関連したインタラクティブフォーカシングの意味について検討した。
著者
伊藤 研一 Kenichi Ito
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.14, pp.149-167, 2016-03

カール・ロジャーズが来談者中心療法において中核条件を提示することで何を目指そうとしたかについて論じた。中核条件とは共感的理解および無条件の尊重、純粋性である。筆者はロジャーズとユージン・ジェンドリンについて二つの疑問をあげた。なぜ、ロジャーズは心理療法についてまったく技法に言及しなかったのか。彼は初期のころ提起した反射技法を次第に遠ざけるようになったのである。なぜジェンドリンはフォーカシングにおいて関係を重視するのか。熟練したフォーカサーは自分が熟練したリスナーを必要としていないこと、フォーカサーとリスナーとの関係はあまり重要でないことを知っている。彼らは深く自分自身のフェルト・センスをあてにしているのである。筆者がセラピスト役として、大学院生がクライエント役として経験した心理療法ロールプレイングが先の二つの疑問に関する仮説を与えてくれると考えられた。反射技法だけを使いながら、私はクライエントと自分のフェルト・センスに注意を向けていた。学生は自分が自分の内的自己に入り込んでいて、セラピストとではなく、自分自身とやりとりしているように感じたと語った。彼女はセラピストがそこにいないように感じたこともあった。そのような関係をロジャーズは目指したのだと私は気づいた。セラピストの感情から切り離された技法はそのような関係の妨げとなると彼は考えたのではないか。しかし、もしわたしたちが自分のフェルト・センスに触れながら反射技法を使えば、先のロールプレイングセッションのように、クライエントは自分の内的自己とコミュニケートすることができるようになると期待される。次に、ジェンドリンが関係を重視したのは関係によってクライエントは自分のフェルト・センスとやりとりできるようになるからだと私は考えた。はじめのうち、クライエントは自分自身のフェルト・センスではなく、セラピストをあてにしている。クライエントは中核条件が満たされた関係を経験してはじめて、自分自身を信頼し始め、自分のフェルト・センスをあてにし始めるのである。What Carl Rogers was aiming at when he presented the core conditions in clinent-cenntered psychotherapy is discussed. The core conditions are empathetic understanding, unconditional positive regard, and genuineness.I raised two questions about Rogers and Eugene Gendlin. Why did Rogers choose not to refer to no techniques about psychotherapy? He gradually came to avoid the reflection technique he had proposed early on. Why did Gendlin emphasize the relationship in focusing?Experienced focusers know they need no experinced listeners, and that the relationship between the focuser and the listener is not very important. They depend deeply on their felt sense.The psychotherapy role playng session I experienced as the therapist role with a graduate student, the client role, was considered to give a hypothesis about the two questions.While I used only reflection technique, I was paying attetion to the client and to my “felt sense”. The student said that she got in touch with her inner self and that she felt as though she were communicating with herself, not with the therapist. She sometimes felt as if the therapist were not there. I found that such a relationship was what Rogers had been aiming at. He might have thought that the technique dissociated from the therapist’s feelings would prevent such a relationship. But if we use the reflection technique, keeping in touch with our felt sense,clients are expected to come into communication with their inner self as in that role playing session.Next, I supposed that Gendlin made much of the relationship in the therapy session because it could enable a client to communicate with his or her felt sense, because at first a client depends on a therapist, not on his or her felt sense. It is not until he or she experiences the relationship in which the core conditions are satisfied that he or she begins to trust him- or herself and to depend on his or her felt sense.
著者
伊藤 研一
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.227-237, 2014-03-01

スーパービジョンにおいて生じるパラレルプロセスについて、スーパーバイザーがフォーカシングを行なうことによって気づいた事例を検討した。パラレルプロセスとは、精神分析における概念である。クライエント、治療者間で生じた転移、逆転移関係が、スーパーバイジー、スーパーバイザー間に持ち込まれる。筆者が行なっていたスーパービジョンで感じていた違和感についてフォーカシングしたところ、スーパーバイジーの言動によって「良い気持ち」を感じている自分に気づいた。その感じをもとに、次回のスーパービジョンセッションで、ある局面でスーパーバイジーに「どんな感じがしているか」尋ねたところ、「良い人になろうとしている」と答えた。それはまさにクライエントが治療者であるスーパーバイジーに「良い面」を見せようとしていることに対応していた。このことにスーパーバイジーは実感として気づくことができた。スーパーバイザーがフォーカシングによってパラレルプロセスに気づくことの利点について検討した。\ In a case concerning parallel process in psychotherapy supervision, the author examines a focusing session. Parallel\process is an interesting concept in psychoanalysis. Transference and countertransference between therapist and client are brought about in the relationship between supervisor and supervisee. A focusing session about uncomfortable feelings arising during supervision made me realize that I actually felt comfortable and happy during the process. When I asked the supervisee in the next supervision what she felt in her therapy session, she answered that she tried to show her good side to her client. As a parallel consequence, her client also tried to show her good side to the therapist. Th e supervisee comprehended this sequence profoundly. e merits of realizing a parallel process with a supervisor via a focusing session were discussed.
著者
伊藤 研一 道明 義弘 イトウ ケンイチ ドウミョウ ヨシヒロ Kenichi ITO Yoshihiro DOMYO
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.1-49, 1998-02

COMPUSTATのデータベース(アメリカ、カナダ企業の財務データベース)をパソコンで用いることができるようにするシステムを開発した。これまで、パソコンでこのデータベースを利用しているという例がなく、また、パソコンだけで利用可能にした例はないので、どのように利用可能にしたかを報告することを目的としている。そのプロセスは、次の五段階によっている。第一段階は、MTからパソコンのハードディスクにデータを移し、コードをASCIIコードに変換する。第二段階は、複数のMTファイルを一つのファイルに結合する。第三段階は、データベースのフォーマットを変更し、データ項目を連続させる。第四段階は、5年間で1レコードとなっているそれぞれの年について、各年のレコード長をそろえる。第五段階では、各年のデータ項目を連続させて、年ごとにデータを利用できるようにする。第六段階では、それぞれの項目のデータを見やすく整形している。この処理過程を経ることによって、COMPUSTATのデータベースは、パソコンで利用可能になっている。カナダ企業、アメリカ企業と日本企業の行動比較が可能になる。日米加産業構造の一端を示す産業業種分類とその分類に属する会社数について、資料を作成し、比較のための基礎資料とした。
著者
和田有子 田中夕祈 嶋谷裕子 山田雄次 長谷川藍子 肥田重明 谷口俊一郎 寺崎貴光 瀬戸達一郎 福井大祐 高野環 伊藤研一
出版者
一般社団法人 日本脈管学会
雑誌
第55回日本脈管学会総会
巻号頁・発行日
2014-10-17

ヒトや哺乳類の常在菌であり病原性のない嫌気性菌であるBifidobacterium longum(B.Longum)菌を嫌気的環境への特異的DDSとして用いた血管新生療法の可能性について,ヒトbFGF遺伝子を組み込んだbFGF-B.Longumを作製し検討した。【方法】ヒトbFGF遺伝子およびその発現遺伝子を組み込んだプラスミドベクターをB.Longum菌にトランスフェクトし,bFGF-B.Longumを作製した。これをマウス下肢虚血モデル(bulb/c,14W)に尾静注した。投与後3日目および血流改善後にサクリファイスを行い,健常下肢,虚血下肢それぞれの組織内菌数を建嫌気培養にて確認した。ついでレーザードップラー血流計を用いて経時的に下肢血流を測定した。【結果】bFGF-B.Longumは投与後3日目には健常部位から消失し虚血部位にのみ集積した。血流改善後は患肢からも消失した。またbFGF-B.Longum投与群ではPBS投与群に比べ有意に下肢血流を改善した。【考察】bFGF-B.Longumは全身投与(静注)によっても虚血部位にのみ特異的に集積し,局所での血流改善をきたすこと,また血流改善以降は自然に治療部位より消失することが示された。既存の血管新生療法はそのDDSに虚血部位特異性がないため,一般的に筋注や動注で用いられその侵襲性が問題となる上,副作用発現時や治療後の遺伝子の除去が困難といった問題がある。B.LongumをDDSとして用いた血管新生療法は,デリバリーシステムの疾患部位特異性と虚血感度によって,低侵襲でかつ安全な治療法となりうると考えられた。
著者
小野田 尚佳 神森 眞 岡本 高宏 中島 範昭 伊藤 研一 宮崎 眞和 吉田 明
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-114, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
9

甲状腺乳頭癌(PTC)に対する放射性ヨウ素内用療法の現状を把握し,意義を見出すため,多施設共同の後ろ向き研究を行った。ʼ03~ʼ12年に初発のPTCに対し全摘術を受けた患者1,324例のデータを7施設から集積した。全摘,内用療法施行とも増加傾向にありʼ12年には全初発PTC手術例の60%,25%を越えた。内用療法は480例に施行され全摘例の36%に相当,M1,Stage ⅣB,ⅣC症例の2/3に施行されていた。疾患特異的生存率は内用療法施行群で有意に不良であった。予後リスクによって層別化すると内用療法施行により生命予後に差は認めなかったが,中間リスクの施行例は非施行例に比し術後診断の進行度が有意に高かった。本研究により内用療法の現状が明らかとなり,中間リスク患者での効果が示唆されたが,適応や治療法の問題点も確認され,内用療法の意義を見出すためにはさらなる症例集積研究が必要と考えられた。
著者
伊藤 研一郎 西村 秀和 小木 哲朗
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00113-17-00113, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

Navigation systems are nowadays widely used for cars though it is yet to be able to say popularized for motorcycles. While motorcycle navigation systems are not popularized yet, previous research indicates motorcyclist's high demand against a useful navigation system. The absence of useful motorcycle navigation system is an issue of current products not capable of providing navigation information efficiently. To work with the issue, information presentation design is necessary to consider the motorcyclist's characterful viewpoint movement of looking at the road surface carefully in a vertical movement. As a solution to this issue, we propose the use of head-up display for information presentation. Previous studies have revealed the amount and positions suitable to present information for motorcyclist while riding, although the timing of information presentation is yet to be discussed. Thus, in this paper, the information presentation timing to provide navigation information has been evaluated. Experiment using an immersive CAVE motorcycle simulator was conducted with the configuration of five timings between 25 m to 85 m prior to the intersection under conditions of urban street with 30 km/h speed limit. Durations of motorcyclist's viewpoint movement and five scale subjective ratings were used for evaluation. The experimental results from 10 subjects showed a statistically significant difference in subjective ratings. In conclusion, suitable information presentation timing of riding in urban streets with 30 km/h speed limit is around 40 m to 55 m prior to the target intersection.
著者
村瀬 嘉代子 柏女 霊峰 伊藤 研一
出版者
大正大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

われわれは幼児から成人にわたるライフサイクルの中で、(1)両親像、家族像がどのように形成され、成長変化していくか(2)そうした過程の中で変わらず根底にあるものは何かについて、調査研究を進めてきた。結果としていくつかの重要な知見を得た。第1は、年齢、性差を越えて存在する「厳父慈母」原型の存在、第2は発達の節目における両親像、家族像の変客、第3は両親像と適応との密接な関係である。さらに、両親像、家族像が混乱したり、十分に形成されないことが予想される養護施設の子どもを対象に調査研究を行った。(1)実父母の養育が十分とは言えない場合の両親像・家族像のありよう、(2)施設での養育が(1)をどう補い、変容し得るか(3)適応状態に(1)と(2)はどう影響するか、(4)今までの調査結果との比較検討、について新たな示唆が得られることを目的とした。施設は子供にとってみれば、家庭に相当するところであり、その場所への調査に行くことは極めて侵襲的となる危険があるため、方法論としては以前からの子供に対する方法論に加えて、いくつかの慎重な配慮をした。調査研究の結果、幼児被験者数が限られているため、はっきりとした発達傾向を見いだすことはできない。しかし事例の中には生後すぐに実母と分離していて、実親が両親像の形成にほとんど関与していないにもかかわらず、いわゆる典型的な「厳父慈母」的回答をした幼児がいた。小学生以上の場合、現実の生活状況に即した質問をしたため、実際の両親像については明らかにされない。しかし女性職員を通じて「ほめてくれる」「看病」「悲しい時慰めてくれる」体験をし、しかもそれを求めている姿が浮かび上がって来た。また理想の両親の関係として、厳父慈母とよき連携を上げている。このことは両親像や家族像の混乱が想定される場合でも(あるいは混乱があるからこそ)厳父慈母(特に慈母像)が中核に存在していると考えられる。