著者
森本 果歩 中川 嵩章 真田 純子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.961-968, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
15

路線的商業地域は、戦前期に行われたほとんどの都市計画で採用されたが、計画意図や指定後の土地利用変化は明らかになっていない。この研究は、道路の規模や沿道の土地利用といった特徴からみた計画意図の変遷と,指定後の土地利用変化を把握し,戦前期の東京都市計画における路線的商業地域の性質を明らかにすることを目的とする。東京都市計画の指定の状況と指定時の議論を分析すると、戦前期では、路線的商業地域は主に住居地域内で使われていた。①計画街路の商業発展を補助する ②計画街路が完成するまでの間、既に商業発展している路線を代替商業中心地にする ③商業地を路線的に連続させる 上記の3つの計画意図がみられ、沿道の用途面と体裁面が考えられていた。指定後の沿道の土地利用変化をみると、効果がみられた路線もあればそうでない路線もあるが、都市を商業的に発展させる手段としての汎用性があったことが,戦前期に全国的に広まった理由と考えられる。
著者
中川 嵩章 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.5-20, 2021 (Released:2021-01-20)
参考文献数
81
被引用文献数
1

本研究は,法定都市計画以前の愛知県豊橋における,道路整備,遊廓移転,電気軌道敷設の都市整備事業について,史料収集,文献調査を行い,それらが複合的に推進された要因を明らかにした.土地の買収,貸付として利益を見込んだ豊橋市による遊廓移転は,都市整備事業に出費した費用を都市経営として賄う戦略であったと考えられる.そして,豊橋電気株式会社の役員らを発起人とする豊橋電気軌道(1次)の出願,特許にあたっては,豊橋電気株式会社が強い影響力を持っていたと考えられる.遊廓移転によって郊外の荒れ地約20,000坪を開発し,そこへ道路を開削,電気軌道を敷設する構想の背景には,豊橋電気株式会社の電気需要創出策があった可能性を指摘し,近代都市の経営という観点から官民が連携した総合的施策展開であると論じた.