著者
浅野 毅 中川 慎介 角家 健
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

血液脳脊髄関門保護効果を有する薬剤同定のハイスループットスクリーニング(HTS)方法を確立した。次に、既存薬のスクリーニングによって、候補薬剤を同定し、in vitro血液脳脊髄関門モデル、マウス脊髄損傷モデルによって、候補薬剤が血液脳脊髄関門保護効果を持つことを確認した。また、候補薬剤の1つであるBerberineを脊髄損傷マウスに投与することで、歩行機能が向上し、損傷脊髄の損傷範囲が減少することが明らかになった。これら一連の結果は、今回開発したHTS方法が血液脳脊髄関門機能保護効果を持つ薬剤の絞り込みに有用であり、同定された薬剤が脊髄損傷に対する神経保護効果を持つことを示している。
著者
中川 慎介 丹羽 正美
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.137-143, 2014 (Released:2014-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

末梢と中枢を隔てる血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)は,単に物質の移動を制限する関門として機能しているだけではなく,機能的なneurovascular unitを形成し,神経・グリア系と相互作用を行っていることが指摘され,脳血管障害だけでなく中枢性疾患におけるBBBの役割も注目されている.また,BBBは中枢神経作用薬にとっては,越えなければいけない障壁であり,薬物の脳内移行性を決定する重要な関所である.薬物の脳内移行性検定やBBBに関する基礎研究のために,培養細胞を用いたin vitro実験が広く行われている.不死化脳毛細血管内皮細胞株はその均一性や簡便性から,BBB研究に広く用いられているが,生体内における細胞の機能を比較的保持する初代培養脳毛細血管内皮細胞を用いた研究も重要である.BBBは脳毛細血管内皮細胞だけで構成されるのではなく,周囲のペリサイトやアストロサイトがBBB機能維持に関与している.本稿では,これら3種類のBBB構成細胞の初代培養方法と,インサート膜を用いた共培養方法を紹介する.作製したBBBモデルは薬物の脳内移行性やBBBに関する基礎研究などに活用できる.