著者
中川 慎介 丹羽 正美
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.137-143, 2014 (Released:2014-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

末梢と中枢を隔てる血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)は,単に物質の移動を制限する関門として機能しているだけではなく,機能的なneurovascular unitを形成し,神経・グリア系と相互作用を行っていることが指摘され,脳血管障害だけでなく中枢性疾患におけるBBBの役割も注目されている.また,BBBは中枢神経作用薬にとっては,越えなければいけない障壁であり,薬物の脳内移行性を決定する重要な関所である.薬物の脳内移行性検定やBBBに関する基礎研究のために,培養細胞を用いたin vitro実験が広く行われている.不死化脳毛細血管内皮細胞株はその均一性や簡便性から,BBB研究に広く用いられているが,生体内における細胞の機能を比較的保持する初代培養脳毛細血管内皮細胞を用いた研究も重要である.BBBは脳毛細血管内皮細胞だけで構成されるのではなく,周囲のペリサイトやアストロサイトがBBB機能維持に関与している.本稿では,これら3種類のBBB構成細胞の初代培養方法と,インサート膜を用いた共培養方法を紹介する.作製したBBBモデルは薬物の脳内移行性やBBBに関する基礎研究などに活用できる.
著者
熊谷 謙治 進藤 裕幸 丹羽 正美
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特発性大腿骨頭壊死症は近年疫学や臨床的研究が著しく進歩したため、大腿骨頭壊死症はSteroid Hormone治療で一時期に大量投与(12.5mg以上)で増加し、高脂血症との因果関係、更には細動脈や細静脈の内皮細胞の関与も明らかになってきている。近年腎臓などの諸臓器の生体移植や膠原病などでSteroid Hormone増加に相まって、大腿骨頭壊死症の増加が危惧され、社会問題となりうるため注目されている。研究の課題は特発性大腿骨頭壊死症における阻血機序の病態解析で、Steroid Hormone投与によって生じる脂肪細胞の増生、膨化と末梢循環特に血管内皮の関与を解明することを目標とした。上記病態解析のため、約100匹のSHRSP/Izmを17週齢で犠牲死とし、大腿骨頭を採取、光学顕微鏡用に病理組織標本を作製、また採血、多臓器採取も行った。壊死の有無を検鏡し、免疫組織学的に抗ラットの抗体を用いて、レプチン、アジポネクチン、PAI-1、TNFαの骨髄脂肪細胞内、および周囲の定性的反応性が確認された、Steroid Hormone投与の有無、大腿骨頭壊死の有無で各種サイトカインの定量的反応性を評価した。サイトカインの分子生物学的検討には大腿骨頭の光学顕微鏡組織標本から、大腿骨幹部の脂肪細胞から抽出を試みたが、技術的に困難であった。そこで脂肪細胞の動態を検討するためスタチン系薬剤であるプラバスタチンとヘパリン様物質のペントサンを投与する2実験を行った。両者ともに、壊死頻度は減少し、脂肪細胞の縮小・減少がみられ、脂肪細胞の大腿骨頭壊死症に関与の証明や治療薬の探索の観点で収穫が得られた。