著者
高塚 千広 村上 陽子 川上 栄子 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 静岡県に伝承されてきた間食や行事食に関する家庭料理の中から、次世代に伝え継ぎたいおやつのあり方や特徴について考える。<br />【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。<br />【結果】昭和35~45年頃の食料事情と聞き書き証言を踏まえると、家庭では「おやつ」の習慣は定着していなかったと解釈される。日常食として、さつまいもや小麦(粉)の料理が静岡県全域にあり、ときには間食に用いられていた。その他、魚介 (イカ嘴、イワシ等の稚魚、貝類)、寒天、小豆、落花生、雑穀(キビ、ソバ)、種実類(トチ)等が間食になることがあった。炒ったソバやアズキを石臼で挽いた「たてこ」や、複数の穀類と豆を組み合わせた「とじくり」は西部特有である。もち米(餅)・うるち米(団子)の菓子は、正月や五節句、仏事用で、柏餅に材料の地域差があり、大福の形状や名称に変形が見られた。屋外の遊びの場面で、子どものおやつに通じる食事があり、川で採った小魚を河原の焚き火で加熱したり、山野で果実を摘んだり、駄菓子屋では、薄いお好み焼き、おでんこんにゃく、アイスキャンデー等があった。中部では明治以降から製餡業が盛んで、現在も県内に製餡業者が多く存在する。以上のことから、静岡県では、おやつに適する様々な農水産物の保存技術や料理が様々な形で伝承されてきたことがわかる。これらの食材は、噛みごたえ等の食感、色や香りを味わうことができ、デンプンやカルシウム、食物繊維等の補給にも役立つ。
著者
川上 栄子 村上 陽子 高塚 千広 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から,副菜(野菜・きのこ・芋・海藻料理)として食されてきた料理を県内の各地域別について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき,静岡県東部(沼津市,富士市,伊東市),中部(静岡市,焼津市,藤枝市)および西部(袋井市,浜松市)の各地域において居住歴が30&#12316;81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。</p><p>【結果および考察】今回は歴史的,地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部(伊豆),中部(駿河),西部(遠江)の3地域に分け,豊富な素材の生かし方や調理法について列挙する。温暖な気候に恵まれ,1年中野菜が採れるため,高塩蔵品は少なく,漬け物類も酸味を効かせたものや,野菜そのものの味を生かした薄塩のものが多い。東部のみずかけ菜の漬け物,わさびの茎の三杯酢漬け,大根の甘酢漬け,中部の大根のゆず漬け,しょうがの酢漬け,西部の子メロン漬けなどに代表される。また,地域の農産物の食べ方として,東部の落花生のなます,中部の自然薯のとろろ汁,西部の蒟蒻の味噌おでん,糸蒟蒻のくるみ和え,海老芋の煮物などがある。また,静岡県は,伊豆沖,駿河湾,遠州灘と海に囲まれていて海産物も豊富であることから,主菜だけではなく副菜にも海産物が使われていた。いわしのつみれ汁,なまり節のサラダ,潮汁,いわしの酢の物,ぼらの酢味噌和えなどである。しかし,お茶やみかんが静岡を代表する特産品にもかかわらず,昭和35〜45年頃は副菜としては利用されていなかったことが明らかとなった。</p>