著者
藤原 智美 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.129, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】食品廃棄物である茶殻は旨味成分が茶葉の約80%も流出しており、飲料としての価値はないが、5大栄養素は変化しておらず、カテキン類も60%近くが残存しており、まだまだ多方面で利用可能である。全国の食品廃棄物リサイクルの用途は肥料・飼料化が75%を占めており、茶殻の肥料化は、新たな商品価値を生み出すと考えられた。また高抗酸化能やグルタミン酸が豊富な事で知られる「茶樹きのこ」はお茶の樹に生息するきのこであり、茶殻を利用した菌床開発により茶樹きのこのような付加価値の高いきのこを栽培できるのではないかと考え、菌床開発および収穫後の成分分析を行う事を目的とした。【方法】菌床はおがくずと米糠が1瓶あたり10:9になるように配合し、含水率を80%に調整したものを基本培地として、茶殻を米糠の10、30、60%置換した培地の計4培地を用意した。1瓶あたり15gの菌を接種後、菌糸蔓延→菌かき→子実体形成の工程を踏み、ヒラタケを栽培した。採取後、HPLC法にて遊離アミノ酸、グアニル酸、DPPH法により抗酸化能の測定を行った。【結果】米糠を30%茶殻に置換することで、他の培地より子実体の形成・成長が早く栽培が容易になることが明らかとなったが、60%置換すると菌糸がうまく蔓延できないことが判った。成分分析の結果、遊離アミノ酸は茶殻を添加することで、アラニン、アルギニン、セリン、チロシン、ロイシン、グルタミン酸が有意に増加し、減少する遊離アミノ酸は見られなかったのに対し、核酸関連物質のグアニル酸は有意に低下してしまうことが判った。今回得られた成分値の変化が味に違いをもたらすのか、官能評価によって今後検討していく。
著者
高塚 千広 村上 陽子 川上 栄子 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 静岡県に伝承されてきた間食や行事食に関する家庭料理の中から、次世代に伝え継ぎたいおやつのあり方や特徴について考える。<br />【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。<br />【結果】昭和35~45年頃の食料事情と聞き書き証言を踏まえると、家庭では「おやつ」の習慣は定着していなかったと解釈される。日常食として、さつまいもや小麦(粉)の料理が静岡県全域にあり、ときには間食に用いられていた。その他、魚介 (イカ嘴、イワシ等の稚魚、貝類)、寒天、小豆、落花生、雑穀(キビ、ソバ)、種実類(トチ)等が間食になることがあった。炒ったソバやアズキを石臼で挽いた「たてこ」や、複数の穀類と豆を組み合わせた「とじくり」は西部特有である。もち米(餅)・うるち米(団子)の菓子は、正月や五節句、仏事用で、柏餅に材料の地域差があり、大福の形状や名称に変形が見られた。屋外の遊びの場面で、子どものおやつに通じる食事があり、川で採った小魚を河原の焚き火で加熱したり、山野で果実を摘んだり、駄菓子屋では、薄いお好み焼き、おでんこんにゃく、アイスキャンデー等があった。中部では明治以降から製餡業が盛んで、現在も県内に製餡業者が多く存在する。以上のことから、静岡県では、おやつに適する様々な農水産物の保存技術や料理が様々な形で伝承されてきたことがわかる。これらの食材は、噛みごたえ等の食感、色や香りを味わうことができ、デンプンやカルシウム、食物繊維等の補給にも役立つ。
著者
新井 映子 高塚 千広 川上 栄子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 竹下 温子 中川 裕子 村上 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.161, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から、行事食として食されてきた料理を東部、中部、西部に分け、各地域別に明らかにすることを目的とした。【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(浜松市、湖西市)の各地域において居住歴が30〜81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。【結果】歴史的、地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部、中部、西部の3地域について、各地域に特有の食材を生かした行事食やそれらの調理法について示す。東部の富士宮では、富士山の火山灰土壌で落花生栽培が盛んなため、おせちのなますには粗くすりつぶした落花生を入れる「落花生なます」が作られる。伊豆半島の主要な漁港である伊東では、祭りなどの行事食として鯖のそぼろをのせた「鯖の箱ずし」が作られる。中部は正月に黒豆、田作り、数の子を用意し、里芋やごぼう、椎茸の「煮しめ」、大根と人参の「なます」にいかやしめ鯖を加える。かつおだしに大根と里芋、角餅の「雑煮」やまぐろの「にぎりずし」を作る。おせちに練り製品を入れる。クチナシで色づける「菱餅」や「染飯」がある。西部の湖西市は「新居の関所」がある町で、東海道を往来する旅人によって「すわま」という波形をあしらった餅菓子が伝承され、上巳の節句に作られている。浜松市山間部の水窪周辺では、雑穀を中心とした食文化があり、4月8日(花祭り)に大豆、そば粉、小麦粉で「とじくり」いう団子をつくって仏壇にお供えしている。以上のことから、静岡県では東部、中部、西部の各地域に特有の食材が、行事食にも生かされていることが明らかとなった。
著者
竹下 温子 松元 圭太郎 立石 百合恵 森中 房枝
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 = Bulletin of Faculty of Nursing and Nutrition Kagoshima Immaculate Heart University
巻号頁・発行日
vol.15, pp.55-60, 2011-07

昨今,日本の教育の中で,食育が重要視され,小さいころからの食生活の育成に力を入れているが,その食育の一環として,地産地消と地場の活性をテーマに鹿児島県薩摩川内市の甑島で非常に豊漁である「きびなご」と,薩摩川内市の食材を使った特産品を作ろうと,鹿児島県薩摩川内市にある医療法人九十九会 関小児科医院の管理栄養士さんが立ち上がり,川内きびなご鮨という,鹿児島の郷土料理である酒寿司をアレンジした特産品を考案した。この「川内きびなご鮨」は「食&アグリ・マッチングフェア」コンテストに入賞し,高い評価を得た一品である。 我々はそのきびなご鮨の製造工程のひとつである,きびなごの昆布締めの保存日数(発酵過程)における味の変化について研究依頼を受け,食品の味を決める遊離アミノ酸の測定と発酵過程における微生物の変化について調べることを目的とし,16S rRNA遺伝子による菌の同定を行っている。本研究は,その目的の中の一つとして,きびなごにもともと存在していると考えられる海洋性の菌について,保存日数における菌変化の有無を菌数およびコロニー観察・グラム染色にて比較・検討した結果を報告する。 保存日数における菌の変化を調べるため,味付けをせず,食塩水に浸漬後,真空保存したきびなご(サンプル①),調味後真空し1週間冷蔵保存したもの(サンプル②),調味後真空し2日間冷蔵保存後,チルドにて60日間保存したもの(サンプル③),調味後真空し1晩冷蔵保存後,チルドにて90日間保存したもの(サンプル④)の4サンプルを提供して頂き,段階希釈後,一般海洋性細菌用培地であるZobell培地にて菌の培養を行った。 その結果,①は100CFU/mlの菌が増殖し,④は面白いことに希釈倍数の高い10-4のみに30万CFU/mlの菌が増殖した。何かの影響を受け,希釈倍率が高くなってから菌が増殖してくることもあるため,このプレートからも50株釣り菌した。④については海洋性の菌でない可能性もあり,発酵食品に非常に多く存在する乳酸菌の可能性も示唆されたため,GYP白亜寒天培地にて刺針による培養を行った。その結果,非常に弱いが,クリアゾーンを形成しており,酸を作り出す菌であることがわかった。②,③については,Zobell培地に菌を観察することができなかった。標準寒天培地による生菌数については,保存期間が長いものほど,菌が増殖していることがわかった。 真空後のチルド保存が90日の④は試食にて非常に美味しいと評判のあった昆布締めであり,生菌数や海洋性の菌数からみても一番菌が増殖していた。次に,60日間チルド保存の③についても生菌数は非常に多かったが,海洋性の菌は増殖されてこなかった。これらのことより,海洋性の菌以外のものが優勢的に増えてしまった③より,海洋性の菌も増殖することができる環境下であった④の方が旨味や風味が増していると考えられ,海洋性の菌が水産食品の発酵に重要な役割を与えている可能性が示唆された。Dietary education has been regarded as important, and lays emphasis on upbringing of child's eating habits in recent years in Japan. Under the theme of local production for local consumption and local promotion, a plan to make a special product, used Kibinago (Spratelloides gracilis) that was able to capture it abundantly on Koshiki-Island and other cooking ingredients in Satsuma-Sendai city, was carried out as a part of the dietary education."Sende Kibinago Sushi"arranged the "Sake Zushi"which was local cooking of Kagoshima, was developed by a registered dietitian in Satsuma-Sendai city as the special product, and won prizes in food contests and got high evaluation in Kagoshima. We are investigating that the effect of saving day of Kibinago, sandwiched between sheets of kelp that is one in process of manufacture of the Kibinago-sushi, on change of the taste. In this study, we investigated the change of the number of marine bacteria in four samples; vacuum-packed Kibinago without seasoning (sample①), vacuum-packed seasoning Kibinago after 1-week cold storage (sample②), vacuum-packed seasoning Kibinago after 2-day cold and 60-day chilled storages (sample③), vacuum-packed seasoning Kibinago after 1-night cold and 90-day chilled storages (sample④), with Zobell nutrient medium for general marine bacteria. The colonies of general marine bacteria cultured with the Zobell medium were observed in sample①and sample④(100 and 300,000 cfu/mL, respectively). No colony was observed in the Zobell medium of sample②and③. The colonies of sample④were observed only in the most diluted sample (dilution ratio:10-5). On the other hand, the viable cell number cultured with standard agar nutrient medium was increased with the extension of the save days. Fifty colonies in the Zobell medium of sample ④ were picked up and cultured in glucose-yeast extract-peptone (GYP) chalk agar medium. All colonies cultured in the GYP medium formed clear zone slightly. The result suggested that the marine bacteria in sample④have acid production capacity. The bacteria identification by 16s ribosomal RNA gene analysis has been not finished, therefore, it was attempted to speculate the bacterial strain based on a classification by colony's shape in reference to previous reports identified marine bacteria in "Syuto (dish of pickled skipjack tuna entrails)" by 16s ribosomal RNA gene analysis and classification by colony's shape. The bacteria in sample④were speculated to belong to the genus Staphylococcus. The Kibinago sandwiched between sheets of kelp of sample④obtained highest evaluation by the tasting. The bacteria in the genus Staphylococcus were reported to be concerned with formation of Umami and fragrance, therefore it was considered to be indispensable to marine fermented foods. Therefore, it was speculated that the marine bacteria in sample ④is concerned with formation of Kibinago-sushi's taste. However, further investigations are needed to identify the marine bacteria in sample④and to confirm the mechanism of the effect of the marine bacteria on the taste of Kibinago-sushi.
著者
川上 栄子 村上 陽子 高塚 千広 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から,副菜(野菜・きのこ・芋・海藻料理)として食されてきた料理を県内の各地域別について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき,静岡県東部(沼津市,富士市,伊東市),中部(静岡市,焼津市,藤枝市)および西部(袋井市,浜松市)の各地域において居住歴が30&#12316;81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。</p><p>【結果および考察】今回は歴史的,地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部(伊豆),中部(駿河),西部(遠江)の3地域に分け,豊富な素材の生かし方や調理法について列挙する。温暖な気候に恵まれ,1年中野菜が採れるため,高塩蔵品は少なく,漬け物類も酸味を効かせたものや,野菜そのものの味を生かした薄塩のものが多い。東部のみずかけ菜の漬け物,わさびの茎の三杯酢漬け,大根の甘酢漬け,中部の大根のゆず漬け,しょうがの酢漬け,西部の子メロン漬けなどに代表される。また,地域の農産物の食べ方として,東部の落花生のなます,中部の自然薯のとろろ汁,西部の蒟蒻の味噌おでん,糸蒟蒻のくるみ和え,海老芋の煮物などがある。また,静岡県は,伊豆沖,駿河湾,遠州灘と海に囲まれていて海産物も豊富であることから,主菜だけではなく副菜にも海産物が使われていた。いわしのつみれ汁,なまり節のサラダ,潮汁,いわしの酢の物,ぼらの酢味噌和えなどである。しかし,お茶やみかんが静岡を代表する特産品にもかかわらず,昭和35〜45年頃は副菜としては利用されていなかったことが明らかとなった。</p>
著者
竹下 温子 勝又 真里奈 高林 由佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】昨今、食育は日本の教育の中で重要視され、地産地消によって食文化を守ることも重要な役割とされている。その中で食育の一環として、鹿児島の管理栄養士らが地産地消と地場の活性をテーマに「川内きびなご鮨」を考案した。その製造工程にきびなごの昆布締めがあり、保存期間の違いによってうまみが増し、爽やかな酸味が生まれるという。 我々はこの味の変化について保存期間の違いによる微生物の動態変化、および微生物の関与が人の味覚に影響を及ぼすか、遊離アミノ酸量を押さえながら比較・検討することを目的とした。【方法】保存法の異なった4種のサンプルを用い、菌数測定に、標準寒天培地(T)およびGYP白亜寒天培地(G)を用いた。全サンプル200の菌について高分子DNAを抽出(Benzyl chloride法)、グループ分け(RAPD法)、16S rDNAのPCR増幅、塩基配列決定後DDBJの相同検索にて同定した。遊離アミノ酸測定はOPAプレラベル法を用いた。【結果】菌数はT・G培地ともに冷蔵保存期間が長いものほど多かった。次に22グループに分かれた代表菌株はすべて<i>Stapylococcus</i>属と100%の相同性を示した。遊離アミノ酸の総量は保存期間の長い順で増加していた。この結果は菌数増加量と一致しなかった。官能試験の総合評価は遊離アミノ酸の増加量に比例せず、最も遊離アミノ酸量が多かったサンプルについては、熟成からさらに腐敗に進んでいる可能性があると考えられた。その他、微生物が関わるとされている酸味・香気は嗜好調査との相関は見られなかったが、菌数と総合評価の傾向が近く、やはり何らかの形で美味しさに影響を与えていると考えられた。