著者
川上 栄子 小嶋 汐美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.115, 2011

【<B>目的</B>】日本には様々な年中行事があり、気候、風土を生かした様々な行事食がある。しかし、現在の食を取り巻く環境は、近年急速に変化し、伝統的な食文化の伝承が困難な状況である。食育の1つの要因である食文化の伝承は、食育を推進する管理栄養士の教育において意義を理解させ、実践を促すことが必要である。そこで、今回、どのような行事食が作られ、食べられているか実態調査を行ない、本地域の特徴を生かした今後の指導対策を検討することとした。本報では主な行事食の実施状況を分析し、地域特性等検討結果について報告する。<BR>【<B>方法</B>】本校健康栄養学科(管理栄養士養成課程)1年~2年生64名及び保護者を対象に平成22年1月に行なった。調査方法は日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食」の調査票及び10項目のアンケートを自己記入方式にて実施。調査結果の内、五節句の行事食の喫食状況に着目、学生と保護者別に集計し比較した。<BR>【<B>結果及び考察</B>】回収票は学生55枚、保護者58枚であった。正月料理の雑煮は学生92%、保護者97%の喫食状況率であった。五節句では人日の七草粥では学生42%、保護者57%。上巳の寿司は学生61%、保護者93%。端午の柏餅は学生45%、保護者73%。七夕のそうめんは学生3%、保護者13%。重陽の菊花酒は学生0%、保護者0%であった。お正月の雑煮の他は上巳のお寿司が両者とも過半数の喫食率であったが、他の節句では学生の喫食率の低さが目立った。この結果から食文化伝承に必要な要素は、まず食べる機会があること、そして自分自身が作る立場となって初めて受け継がれていくことが明らかになった。このことから、大学生の実習内容に年中行事の実施、伝承の価値を高める工夫し、喫食率、継承意識の向上を図る必要がある。
著者
高塚 千広 村上 陽子 川上 栄子 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 静岡県に伝承されてきた間食や行事食に関する家庭料理の中から、次世代に伝え継ぎたいおやつのあり方や特徴について考える。<br />【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。<br />【結果】昭和35~45年頃の食料事情と聞き書き証言を踏まえると、家庭では「おやつ」の習慣は定着していなかったと解釈される。日常食として、さつまいもや小麦(粉)の料理が静岡県全域にあり、ときには間食に用いられていた。その他、魚介 (イカ嘴、イワシ等の稚魚、貝類)、寒天、小豆、落花生、雑穀(キビ、ソバ)、種実類(トチ)等が間食になることがあった。炒ったソバやアズキを石臼で挽いた「たてこ」や、複数の穀類と豆を組み合わせた「とじくり」は西部特有である。もち米(餅)・うるち米(団子)の菓子は、正月や五節句、仏事用で、柏餅に材料の地域差があり、大福の形状や名称に変形が見られた。屋外の遊びの場面で、子どものおやつに通じる食事があり、川で採った小魚を河原の焚き火で加熱したり、山野で果実を摘んだり、駄菓子屋では、薄いお好み焼き、おでんこんにゃく、アイスキャンデー等があった。中部では明治以降から製餡業が盛んで、現在も県内に製餡業者が多く存在する。以上のことから、静岡県では、おやつに適する様々な農水産物の保存技術や料理が様々な形で伝承されてきたことがわかる。これらの食材は、噛みごたえ等の食感、色や香りを味わうことができ、デンプンやカルシウム、食物繊維等の補給にも役立つ。
著者
新井 映子 高塚 千広 川上 栄子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 竹下 温子 中川 裕子 村上 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.161, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から、行事食として食されてきた料理を東部、中部、西部に分け、各地域別に明らかにすることを目的とした。【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(浜松市、湖西市)の各地域において居住歴が30〜81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。【結果】歴史的、地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部、中部、西部の3地域について、各地域に特有の食材を生かした行事食やそれらの調理法について示す。東部の富士宮では、富士山の火山灰土壌で落花生栽培が盛んなため、おせちのなますには粗くすりつぶした落花生を入れる「落花生なます」が作られる。伊豆半島の主要な漁港である伊東では、祭りなどの行事食として鯖のそぼろをのせた「鯖の箱ずし」が作られる。中部は正月に黒豆、田作り、数の子を用意し、里芋やごぼう、椎茸の「煮しめ」、大根と人参の「なます」にいかやしめ鯖を加える。かつおだしに大根と里芋、角餅の「雑煮」やまぐろの「にぎりずし」を作る。おせちに練り製品を入れる。クチナシで色づける「菱餅」や「染飯」がある。西部の湖西市は「新居の関所」がある町で、東海道を往来する旅人によって「すわま」という波形をあしらった餅菓子が伝承され、上巳の節句に作られている。浜松市山間部の水窪周辺では、雑穀を中心とした食文化があり、4月8日(花祭り)に大豆、そば粉、小麦粉で「とじくり」いう団子をつくって仏壇にお供えしている。以上のことから、静岡県では東部、中部、西部の各地域に特有の食材が、行事食にも生かされていることが明らかとなった。
著者
川上 栄子 村上 陽子 高塚 千広 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から,副菜(野菜・きのこ・芋・海藻料理)として食されてきた料理を県内の各地域別について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき,静岡県東部(沼津市,富士市,伊東市),中部(静岡市,焼津市,藤枝市)および西部(袋井市,浜松市)の各地域において居住歴が30&#12316;81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。</p><p>【結果および考察】今回は歴史的,地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部(伊豆),中部(駿河),西部(遠江)の3地域に分け,豊富な素材の生かし方や調理法について列挙する。温暖な気候に恵まれ,1年中野菜が採れるため,高塩蔵品は少なく,漬け物類も酸味を効かせたものや,野菜そのものの味を生かした薄塩のものが多い。東部のみずかけ菜の漬け物,わさびの茎の三杯酢漬け,大根の甘酢漬け,中部の大根のゆず漬け,しょうがの酢漬け,西部の子メロン漬けなどに代表される。また,地域の農産物の食べ方として,東部の落花生のなます,中部の自然薯のとろろ汁,西部の蒟蒻の味噌おでん,糸蒟蒻のくるみ和え,海老芋の煮物などがある。また,静岡県は,伊豆沖,駿河湾,遠州灘と海に囲まれていて海産物も豊富であることから,主菜だけではなく副菜にも海産物が使われていた。いわしのつみれ汁,なまり節のサラダ,潮汁,いわしの酢の物,ぼらの酢味噌和えなどである。しかし,お茶やみかんが静岡を代表する特産品にもかかわらず,昭和35〜45年頃は副菜としては利用されていなかったことが明らかとなった。</p>
著者
川上 栄子 森下 紗帆
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

<br><br><b>【目的】</b>日本の食文化において緑茶は欠かすことのできないものであり、最近では、緑茶が健康に及ぼす好効果も評価されている。また、静岡県では日本有数な緑茶の産地として有名であるが、急須で入れる緑茶(リーフ)を飲む習慣が薄れ、家庭でもペットボトル緑茶が飲まれている現状がある。そこで、その実態を明らかにするために、緑茶離れが進んでいる大学生を対象にアンケートを行なった。<br><br><b>【対象及び方法】</b>本調査は、2015年6月~12月の間に、授業において説明の上、同意が得られた学生に対して、自己記入アンケート形式で行われた。対象者は、H市内の2校に通う大学生213名で、その内訳はT大学169名(女98名、男71名)、S大学44名(女35名、男9名)である。アンケート調査は4項目とした。質問内容は属性、各食事の主食の内容、各食事における1日の飲料の種類及び量、1日の食事以外に飲む飲料の種類及び量である。統計分析はSPSS(ver.20)により行なった。有意水準は5%とした。<br><br><b>【結果】</b>対象者の年齢、体形、居住状況は以下の通りであった。T大学の平均年齢は19.8歳、S大学は20.0歳。T大学の自己申告の体形が、やせ22名(13%)、普通123名(72.8%)、肥満24名(14.2%)。S大学はやせ3名(6.8%)、普通29名(65.9%)、肥満12名(27.3%)であった。また。T大学の居住状況は単身62名(36.7%)、核家族82名(49.1%)、3世帯同居24名(14.2%)。S大学は単身16名(36.4%)、核家族19名(43.2%)、3世帯同居9名(20.4%)であった。2大学間の属性に大きな差異がなかったため213名の調査結果をまとめた結果、朝食時では緑茶(リーフ)が16.4%、ペットボトル緑茶が15.5%であり、昼食時では緑茶(リーフ)が12.7%、ペットボトル緑茶が37.1%で、夕食時は、緑茶(リーフ)が21.6%、ペットボトル緑茶が18.3%という結果であった。<br><br><b>【結論】</b>緑茶は、昼食時では緑茶(リーフ)よりペットボトル緑茶が飲まれている。朝食時と夕食時においては、ペットボトル緑茶より緑茶(リーフ)が飲まれていることがわかった。