著者
山岸 宏 中村 譲 和田 芳武 沖野 外輝夫 中本 信忠
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-58, 1966-03-31 (Released:2016-09-05)
被引用文献数
3 2

わが国の4つの温泉地(蓮台寺, 浅間, 戸倉・上山田, 内郷)において, 温泉廃水を含む水体中に南米原産の胎生魚, グッピーが野生化し, 自然繁殖を続けていることを確認し, 主に戸倉・上山田および蓮台寺でグッピー個体群とその環境についての調査を行つた.グッピーは冬季には温泉廃水の混入する場所のみに生息する.これらの場所の水温は20℃前後に維持されている.戸倉・上山田温泉のこのような場所の一つで, グッピーは冬の終りには非常な高密度に達していた.しかし夏になるとグッピーは温泉の影響の少い農業用水, 水田, 川の岸辺の浅水部などへ広く分散する.この時期には越冬場所の個体数は著るしく減少した.これらのグッピーは下水の混入する汚濁のかなり強いところにも生息しうる.しかし耐寒性はない.グッピーの生長は非常に早く, 産子間隔も短いので, 急速に個体数が増加する.このような性質と強い雑食性によつて, 水田その他の水たまりの蚊幼虫の駆除にグッピーを利用することができる.調査した2つの温泉地の水田にはシナハマダラカとコガタアカイエカの幼虫が極めて少なかつた.
著者
小川 賢一 平林 公男 中本 信忠
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-22, 2001-07-30

長野県の諏訪湖で大量発生して,周辺住民や地域の観光施設,工場施設に健康被害や経済的被害等をおよぼしているアカムシユスリカ成虫の群飛形成や音響に対する応答特性を紹介するとともに,これまでに調べられたユスリカ類の音響応答とも比較した.アカムシユスリカ成虫は日中,湖岸の植物の葉上で静止しているが,夕刻に雄は巨大な群飛を形成した.その間,雄は音響トラップから発せられる周波数150Hzと180Hzの音響に顕著に応答し,誘引捕獲された.これらの音響周波数はこれまでに明らかになったユスリカ類の音響応答の中で最も低い周波数であった.諏訪湖で発生するアカムシユスリカとオオユスリカ,および神奈川県川崎市内の都市河川で発生するセスジユスリカとミヤコナガレユスリカの3属4種間で,雄を最も多く誘引捕獲できた音響周波数とその時の気温との間に正の相関関係が認められた.本研究のような,音響による物理的方法や他のさまざまな手段や発想を組み合わせた「環境に優しい」対策や防除法の考えが今後のユスリカ類を始めとする害虫防除法にとって重要なものになっていくと考える.
著者
山岸 宏 中村 譲 和田 芳武 沖野 外輝夫 中本 信忠
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-58, 1966
被引用文献数
2

わが国の4つの温泉地(蓮台寺, 浅間, 戸倉・上山田, 内郷)において, 温泉廃水を含む水体中に南米原産の胎生魚, グッピーが野生化し, 自然繁殖を続けていることを確認し, 主に戸倉・上山田および蓮台寺でグッピー個体群とその環境についての調査を行つた.グッピーは冬季には温泉廃水の混入する場所のみに生息する.これらの場所の水温は20℃前後に維持されている.戸倉・上山田温泉のこのような場所の一つで, グッピーは冬の終りには非常な高密度に達していた.しかし夏になるとグッピーは温泉の影響の少い農業用水, 水田, 川の岸辺の浅水部などへ広く分散する.この時期には越冬場所の個体数は著るしく減少した.これらのグッピーは下水の混入する汚濁のかなり強いところにも生息しうる.しかし耐寒性はない.グッピーの生長は非常に早く, 産子間隔も短いので, 急速に個体数が増加する.このような性質と強い雑食性によつて, 水田その他の水たまりの蚊幼虫の駆除にグッピーを利用することができる.調査した2つの温泉地の水田にはシナハマダラカとコガタアカイエカの幼虫が極めて少なかつた.
著者
平林 公男 山本 優 武田 昌昭 花里 孝幸 中本 信忠
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-101, 2003-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
2

諏訪湖周辺地域においては,ユスリカ類の成虫が恒常的に大量飛来し,周辺住民や観光客から不快害虫として嫌われている.本研究では,湖から発生するユスリカ成虫の防除対策を検討するたあに,成虫の飛翔行動(飛翔時間と飛翔高度)のパターンを調査し,その特徴を把握することを目的として,1989年4月18日から20日まで,同年6月5日から7日まで,1999年6月5日から6日まで,2000年9月4日から6日までの期間,観測を行った.調査は湖東岸に位置する信州大学山地水環境教育研究センターにて行い,ライトトラップを異なった高さ(地上1m,9m,16m)に1器ずつ設置し,オオユスリカとクロユスリカについて捕獲数を調べた.オオユスリカ成虫は16mに設置したトラップで最も多く捕獲されたのに対し,クロユスリカ成虫は,9m設置のトラップで最も多く捕獲された.飛翔時間帯を明らかにするために,調査期間中,2時間おきに調査した結果,オオユスリカ成虫の場合,季節により異なり,春と秋では18:00から20:00まで,夏は18:00から翌朝の6:00までの間,捕獲数が多かった.一方,クロユスリカ成虫の場合は,発生期間をとおして18:00から20:00に多かった.以上のことから,飛翔高度は種ごとに異なり,また,特にオオユスリカについては,季節により飛翔時間帯が異なることが明らかとなった.