- 著者
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中本 淳
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.157-172, 2009 (Released:2022-07-15)
- 参考文献数
- 19
我が国の公共事業関係費は,財政再建の過程で大きく削減されてきた。本稿では,動学的一般均衡モデルを構築し,公共投資削減のマクロ経済効果および最適水準について考察した。また,モデルの中に人口動態の変化を取り入れることで,少子高齢化の進展が,これらの結果にどのような影響を与えるかについても考察した。 先行研究を参考にパラメーターを設定して数値計算を行った結果,公的資本投資の削減は,社会厚生を約1%減少させる。また,少子高齢化の進展を考慮に入れて同様の計算をすると,社会厚生の減少は約2%となった。すなわち,少子高齢化の進展を考えると,余力のあるうちに貯蓄・投資をしておくことがより望ましい。また,少子高齢化がマクロ経済に与える影響としては,少子化による1人当たり資本装備率の上昇よりも,高齢化による相対的な消費者人口の増大の効果が大きく,このことから高齢者を労働市場に参加させる仕組みの構築が必要であろう。