著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 並木 道義 瀬尾 基治 太田 茂雄 斎藤 芳隆 吉田 哲也 山上 隆正 中田 孝 松嶋 清穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-22, 2008-02

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には,昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある.これに対して,排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は,バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる.しかし,皮膜に要求される強度が大きいため,小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった.我々は,この問題を解決することができるLobed-pumpkin 型気球を考案し,試験開発を行ってきた.多くの地上膨張試験,実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果,設計上および製造上に多様な問題があることがわかり,順次これらの解決を図った.その結果,要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された.
著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2∿3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。資料番号: SA0167081000

1 0 0 0 OA エバール気球

著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂 OHTA Sigeo MATSUZAKA Yukihiko TORIUMI Michihiko NAMIKI Michiyoshi OHNISHI Akira YAMAGAMI Takamasa NISHIMURA Jun YOSHIDA Kenji MATSUSHIMA Kiyoho
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 大気球研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2∿3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。
著者
西村 純 太田 茂雄
出版者
東京大学宇宙航空研究所
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2_B, pp.379-384, 1967-06

資料番号: SA0125001000
著者
並木 道義 松坂 幸彦 鳥海 道彦 内田 右武 平山 昇司 小松 俊郎 本田 秀之 井筒 直樹 齋藤 芳隆 太田 茂雄 山上 隆正 廣澤 春任 松本 敏雄 兒玉 康資 本間 容博
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.25-34, 2001-02

宇宙科学研究所三陸大気球観測所では,スタティック放球方式の一種である立て上げ放球方式を用いて,数多くの大気球の放球を成功させてきた。近年,大型気球の需要が高まり,放球方法の改善と放球場の拡張が必要となっていた。1998年に我々は,新しい大型気球放球装置を用いた放球方法であるセミ・ダイナミック放球方式を開発した。この放球方式は,ガス注入後,ローラー車から気球を解放することによって一気に気球を立て上げ,気球が,観測器直上を固定している大型放球装置の直上にきたとき,大型放球装置から観測器を解放する,という手順で放球を行う。徐々に立てあげていた従来の方式と比べて,ローラーで立て上げて行くときに皮膜を傷つける心配がなくなること,放球作業の時間短縮ができることが利点である。1998年(平成10年)に,飛揚場の先端部分を20m延長し,その延長したほぼ中心部に直径 6 mの回転テーブルを備えた大型気球放球装置を製作した。本ランチャーは,回転テーブルに固定されており,放球時の風向きに合わせて旋回する事が出来る。また,ランチャーに備えた昇降装置により,地面から高さ5mまで観測装置を持ち上げることが可能である。これにより,B1000クラスの大型気球の放球が可能となった。1999年9月6日にこの大型気球放球装置を用いて,最初のテスト気球を放球することに成功し,放球方法および装置の有効性が確認された。
著者
平島 洋 奥平 清昭 中本 淳 村上 浩之 鈴木 裕武 山上 隆正 西村 純 太田 茂雄 並木 道義 宮岡 宏 佐藤 夏雄 藤井 良一 小玉 正弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-134, 1986-10

1985年7月に, 南極昭和基地の共役点であるノルウェーにおいてオーロラ観測の国際共同観測を実施した。日本側の大気球観測は, 地上から直接観測することが難しい降下電子, 自然電波および電離層電場等の時間および空間変動の観測が目的であった。気球搭載観測器としては, オーロラX線撮像装置とVLF受信機であった。日本側の気球は1985年7月2日と7月5日の2回放球した。本論文では, 7月5日に放球され, 観測されたオーロラX線現象について述べる。オーロラX線撮像装置として, 従来から用いていた無機シンチレータを1次元に配置したものと, 厚型のリチウム・ドリフト型Si(Li)半導体検出器の2次元撮像装置を用いた。解析の結果, このオーロラX線現像は, 7月6日23時25分(U. T.)頃に始まり, 数分間継続し, 約50km/minの速度で北西から南東の方向に移動していたことが明らかになった。