著者
中村 豪志 棚田 大輔 岡村 佐紀 乾 貴絵 土井 陽子 宮脇 弘樹 廣瀬 宗孝 木村 健 清水 忠 田中 明人 馬渕 美雪
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.231-239, 2021 (Released:2021-07-15)
参考文献数
28

メサドンは血中濃度の定常状態に日数を要し7日間増量できず,血中濃度や薬効の個人差も大きく早期効果判定が難しい.日本人がん患者の血中濃度等に関する報告はほとんどないため,血中濃度と疼痛スコア(NRS)の変動,血中濃度の変動因子等を検討した.血中濃度と相関があったのは体重換算投与量のみであった.有効例ではNRSは投与開始後7日目まで経時的に低下し,1日目から有意差が認められたが,無効例では3日目まで低下傾向にあったがそれ以降変化がなかった.血中濃度は有効例では7日目に110 ng/mlまで上昇し,無効例ではすでに3日目にその濃度に達し,血中濃度と薬効に相関はなかった.各個人の血中濃度は3日目以降緩やかな上昇あるいは低下傾向にあったが,1例のみ上昇し続けた.以上より,早期に効果判定できる可能性が示されたが,血中濃度が7日目まで上昇し続けた例もあったことから,早期の増量は慎重に行うべきと考えられた.
著者
中村 豪志 川畑 翔 川野 裕也 萩原 純一 加茂 智彦 小川 芳徳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.269-273, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
20

〔目的〕縦手すりにもたれて,一側上肢で下衣を上げ下げする動作の効果を検証することとした.〔対象〕健常な男性10名とした.〔方法〕服の上から「短パン」を装着し,これを上げ下げする動作を測定した.手すりなしと手すりにもたれた姿勢で動作を行い,時間,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂の上下移動距離の姿勢による相違点を解析した.〔結果〕手すりにもたれた動作では,手すりなしの動作と比較して,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離の平均が有意に低かった.手すりにもたれた動作では,上げる動作における重心総軌跡長と矩形面積,下げる動作における矩形面積と耳垂移動距離で正の相関がみられた.〔結語〕一側上肢で下衣を上げ下げする動作は,縦手すりに寄りかかることでバランスが向上する.
著者
中村 豪志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.765-769, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

〔目的〕介護老人保健施設における在宅復帰の要因を明らかにすることとした.〔対象と方法〕全国老人保健施設協会に加入している九州・沖縄の介護老人保健施設(542施設)の施設ケアマネジャーとした.郵送による自記式質問紙調査を行った.〔結果〕有効回答は147通だった(回収率27.1%).在宅復帰支援に関する要素は,3因子から構成されていることが分かった.在宅強化型老健は,それ以外の老健と比較して利用者に対するADL支援と家族介護者に対する情報提供支援の実践度が高かった.〔結語〕老健からの在宅復帰には利用者に対するADL支援とともに,家族介護者に対する教育的支援が重要な要因である.
著者
中村 豪志 樋口 博之 萩原 純一 新町 景充 宮崎 真由美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1404-EbPI1404, 2011

【目的】<BR> 麻痺側上肢が実用的に使用できない脳血管障害片麻痺者にとって、洋式便座での排泄動作(以下、トイレ動作)は自立が難しいADLのひとつであり、手すりの利用が重要である。従来、トイレ動作における標準的なトイレの手すりとしては、便座に座って患側の壁に壁離れ寸法が数センチのL字手すり(以下、標準型手すり)を設置するというケースが多く見られる。しかし、この環境では、L字手すりが立ち座り動作や移乗動作の補助にはなるが、立位保持の際に健側上肢の動きが壁によって制限され、下衣の上げ下げ動作の補助にはなりにくい。<BR> そこで、壁離れ寸法を20~25cmとし、一部にクッション材を当てたL字手すり(以下、支持型手すり)を考案した。脳血管障害片麻痺者が支持型手すりを利用すると、手すりの縦部分で麻痺側の胸部もしくは頭部を支持して、自由度が高くなった健側の上肢で下衣の上げ下げ動作が容易になる。これによって、下衣の上げ下げ動作が自立もしくは介助量軽減した症例を経験し、支持型手すりによるトイレ動作が効果的ではないかと感じた。<BR> 本研究では、標準型手すりによるトイレ動作と支持型手すりによるトイレ動作を比較・検証し、考察することを目的とした。<BR>【方法】<BR>1.対象者 <BR> 対象者は、宮崎県内の介護老人保健施設を利用されており、車椅子を日常的な移動手段としている脳血管障害を有する者で、麻痺側の上肢が実用的に使用できない者とした。認知機能の低下により動作指示の理解ができない者は除外した。そのうち、同意を得られた10名を対象とした。内訳は、男性4名、女性6名、平均年齢68.9±10.3歳だった。<BR>2.実験手順<BR> 実験1:対象者の腰部周囲計に3cmプラスした長さのセラバンドを下衣に見立てて、両側の膝蓋骨上周囲と腸骨周囲を基準線とし、セラバンドを基準線まで上げる動作・下げる動作を標準型手すり、支持型手すりで各々3回繰り返す。動画データをパソコンに取り込んだ後、動画再生ソフト上で上げ下げ時間を測定する。<BR> 実験2:便座に移乗していただいてから立ち上がり、健側下肢の横に50cmの棒を設置する。姿勢が安定したら、膝を曲げないようにして健側の上肢を垂直下方の限界点まで伸ばす動作を標準型手すり、支持型手すりで各々3回繰り返す。撮影した動画データを「Quick time pro」でイメージシークエンスに変換した後、「Image J」に取り込んで、基準として設置した50cmの棒の上端から手指の最下点までの距離を測定する。<BR> 統計的処理として、paired-t検定を行い、実験1と実験2で、標準型手すりと支持型手すりとの比較を行った。<BR>【説明と同意】<BR>書面と口頭による説明を本人もしくは家族に行ない、同意を得た後書面にサインをいただいた。<BR>【結果】<BR> 実験1では、標準型手すりの上げ下げ時間平均は26.8±11.1秒、支持型手すりでの上げ下げ時間平均は22.8±9.8秒だった。10名中、7名が支持型手すりで上げ下げ時間が短かったが、有意差は見られなかった。実験2では、標準型手すりでのリーチ距離は15.7±9.3cm、支持型手すりでのリーチ距離は17.5±8.2cmだった。10名中6名が支持型手すりでのリーチ距離が長かったが、有意差は見られなかった。<BR>【考察】<BR> 今回の実験に使用した手すりは、施設内にある既存のトイレ手すりのみだったので、対象者の身長や体幹の変形などを考慮した手すりの設定ができなかったが、それを考慮しても全ての脳血管障害片麻痺者に適するというわけではなかった。今後は、1)脳血管障害片麻痺者でも状態は様々なので、対象者個々人のバランス能力や体格に応じた手すりを設定する。2)もたれかかる動作を意識した運動療法のプログラムを確立する。3)手すりの素材や形状をさらに工夫する、という点を考慮し、より有効な手すりとして実用化できるように努めたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 支持型手すりでのトイレ動作を確立できれば、脳血管障害片麻痺者が使用する手すりの選択肢のひとつとして適用できると思われる。それによって、脳血管障害片麻痺者に対してADLやQOLの向上に貢献できるのではないかと考える。また、家庭復帰につながれば、地域福祉・地域リハビリテーションにも貢献できるのではないかと考える。