著者
高井 研 中村 龍平 山本 正浩
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

研究期間において、(1)現場深海熱水噴出孔において硫化物チムニーの内外で600mV程度の起電力が潜在的に存在し、実際の電子伝達能を有していること、(2)にもかかわらず、実験室内実験において、チムニーに生息する微生物群集を植種源として、天然チムニー電極や様々な電極を支持体とした電気合成微生物群集の増殖が観察されないこと、が明らかになった。これらの結果を踏まえて、深海熱水現場環境での電気合成微生物群集の増殖実験を行い、電気合成微生物群集の形成を示唆する結果を得た。自然深海熱水噴出孔のチムニーにおいて電気合成微生物群集が生育可能であることが明らかになった。
著者
山本 正浩 中村 龍平 笠谷 貴史 熊谷 英憲 鈴木 勝彦 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-11-09)

深海熱水噴出孔では海底面から熱水が噴出し、周囲の海水によって冷却されることで鉱物が沈殿し鉱体が形成される。我々はこの鉱体の主要成分である硫化鉱物が導電性を持つことを明らかにしている。鉱床下に存在し、海底に湧出する熱水は還元的な化合物(硫化水素、水素、メタン)に富み、海底面から浸透し鉱床近傍で接する海水は酸化的な化合物(酸素、硝酸、硫酸)を含む。我々は、熱水中の還元剤の持つ電子が硫化鉱物を介して海水中の酸化剤に受け渡される放電現象の存在を提唱し、実際にこの現象が深海熱水噴出域の海底の広域で起きていることを現場電気化学計測によって明らかにした。また、この放電現象を人為的に制御することで発電技術として利用可能であることも明らかにしている。本発表では、上記について説明するとともに、今後の深海底発電技術の開発、およびその模擬として行っている陸上温泉での発電試験の結果についても紹介する。