著者
金子 純二 笠谷 貴史
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.87-94, 2022-12-25 (Released:2022-12-25)
参考文献数
15

伊豆-小笠原弧の東青ヶ島海丘カルデラの既知海底熱水活動域において,海底広域研究船「かいめい」に搭載した中深海用マルチビーム音響測深機(Multibeam echo sounders:MBES)を使用し,発振周波数を70~100 kHzに設定しプルーム調査を行い,高分解能の水柱部の音響散乱データを取得した.音響散乱を定量的に解釈するため逆距離加重(Inverse Distance Weighting:IDW)法により散乱強度を要素としたボクセルモデルを作成し,複数の音響散乱を発生要因ごとに識別した.本研究で着目した音響散乱は,基部がチムニーやマウンド周辺に位置し,形状は底辺が幅約80 m,高さ約190 mの円錐形状であり,散乱の消失水深は約560 mであった.また,散乱強度構造は基部が約20 dBとなり水塊との境界は約9 dBであった.これまで確認されている沖縄トラフの音響散乱との類似点から,今回検出した音響散乱は,海底熱水活動に由来したCO2 液滴によるものと判別した.伊豆-小笠原弧における高周波MBES による船舶プルーム調査手法とボクセルモデルによる解析手法の有効性を示した.
著者
笠谷 貴史
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.1-2, 2020

<p>2008年に始まった文部科学省による「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム」(2011年度に「海洋資源利用促進技術開発プログラム」へと名称を変更,以下,基盤ツール)を契機に,日本国内における探査技術の開発が始まった。物理探査誌でも2011年の64巻4号において,基盤ツール等で開発中であった探査手法に関する特集「海底熱水鉱床探査の未来」が組まれ,会員の皆さまに当時の最新の開発動向を紹介した。2014年度からは内閣府戦略的イノベーションプログラムによる次世代海洋資源調査技術「海のジパング計画」(以下,「海のジパング計画」)が始まり,熱水鉱床のみならず,コバルトリッチクラストやレアアース泥など,様々な海洋金属資源に関する成因研究が始まると共に,様々な探査技術の開発も並行して行われた。「海のジパング計画」における探査技術開発では,大学や研究機関による研究開発のみならず,それらの技術移転あるいは民間企業が主導する技術開発が行われると共に,実海域において民間企業による調査航海が行われたことが大きな特徴であり,それらの技術的な成果は「海底熱水鉱床調査技術プロトコル」としてまとめられた。また,環境を持続的に利用するため,近年では海底資源開発に関する海底環境への影響を評価することが非常に重要になってきたため,環境影響評価に関する調査手法・評価技術の構築も課題の一つとなった。この「海のジパング計画」は2018年度で終了し,探査技術の開発の一つの大きな区切りを迎えた。</p><p>物理探査学会会誌編集委員会では,「海のジパング計画」で大きく進展した熱水鉱床に関する物理探査技術を用いた探査事例や,海洋資源開発を取り巻く状況を会員の皆さまにいち早くお届けするため,特集「海底熱水鉱床探査に向けて」を企画した。本特集は,熱水鉱床探査に関わる広い範囲をカバーする7編からなり,そのうち2編はこれからの物理探査・資源開発と切り離して考えることが出来ない環境影響評価に関するものとなっている。</p><p>簡単に本特集の紹介をしたい。中核となる探査技術に関しては,民間企業が中心となって進められた音波探査(多良ほか),電気・自然電位探査(久保田ほか),重力探査(押田ほか)の3編で,熱水域で実施された最新の興味深い観測・解析事例が紹介されている。北田ほかでは,地球深部探査船「ちきゅう」の掘削航海時に実施された高温高圧下での孔内検層技術にチャレンジングな事例について述べている。環境影響評価については,海底での資源開発と環境影響評価に関する論説(山本ほか)と,実際の調査業務に関しての技術動向についてまとめた技術報告(後藤ほか)の2編があり,これらにまとめられた環境影響評価の必要性や技術動向は,本学会の会員に大いに参考になると思われる。そのほか,「海のジパング計画」で作成された「海底熱水鉱床調査技術プロトコル」に則って概査から準精査に至る技術検証とAUVの活用に関するケーススタディ(笠谷ほか),探査技術の進展による科学的成果を中心とした解説(石橋・浦辺)も掲載されている。</p><p>本特集の著者の皆さまからは,スケジュールの厳しい中,技術開発・研究の最新の成果についてご寄稿いただき,会誌編集委員会からお礼申し上げたい。今回の特集は,気軽に読んでいただけるよう,技術報告やケーススタディ,解説を中心とした構成となっている。本特集が,海洋における物理探査技術の活躍する場を大きく広げ,今後のさらなる技術開発の方向性を考える契機となれば幸いである。</p>
著者
中村 昌彦 百留 忠洋 笠谷 貴史 岩本 久則 大田 豊
出版者
公益社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
日本船舶海洋工学会論文集 (ISSN:18803717)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.89-102, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
11

“YUMEIRUKA" is an AUV that Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC) has developed and is operating. A seabed resource exploration is carried out by two-set simultaneous operation with AUV “JINBEI" developed by JAMSTEC. “YUMEIRUKA" towing a sensor cable, and the cable is oscillated by the AUV. The up-and-down oscillation of the sensor has a bad influence on the exploration result. Therefore, in order to perform accurate seabed resource exploration, it is necessary to comprehend the motion of the sensor cable and to optimize it. In this paper, motion simulations of a sensor cable towed by X rudder AUV “YUMEIRUKA" are shown.
著者
山本 正浩 中村 龍平 笠谷 貴史 熊谷 英憲 鈴木 勝彦 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-11-09)

深海熱水噴出孔では海底面から熱水が噴出し、周囲の海水によって冷却されることで鉱物が沈殿し鉱体が形成される。我々はこの鉱体の主要成分である硫化鉱物が導電性を持つことを明らかにしている。鉱床下に存在し、海底に湧出する熱水は還元的な化合物(硫化水素、水素、メタン)に富み、海底面から浸透し鉱床近傍で接する海水は酸化的な化合物(酸素、硝酸、硫酸)を含む。我々は、熱水中の還元剤の持つ電子が硫化鉱物を介して海水中の酸化剤に受け渡される放電現象の存在を提唱し、実際にこの現象が深海熱水噴出域の海底の広域で起きていることを現場電気化学計測によって明らかにした。また、この放電現象を人為的に制御することで発電技術として利用可能であることも明らかにしている。本発表では、上記について説明するとともに、今後の深海底発電技術の開発、およびその模擬として行っている陸上温泉での発電試験の結果についても紹介する。
著者
後藤 忠徳 笠谷 貴史 荒木 英一郎 浅川 賢一 佐柳 敬造
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

H17年度には海底付近で人工電流を発生させた場合の地下構造探査の可能性を数値計算により確認した。2度の調査航海において深海曳航体へ搭載した人工電流源を用いて海底電気探査を実施した。またスマトラ地震の余震活動データなどを解析して海底地震観測の精度の議論を行った。これらの結果に基づき、豊橋沖海底ケーブル先端へ接続可能な海底磁力計や海底地震計などの開発や改良を行った。H18年度にはこれらの海底観測機器の水中動作試験を行った。またケーブル敷設船へ乗船し、豊橋沖海底ケーブルの引き上げ・ケーブル先端への分岐装置取り付け・ケーブル再敷設作業を行った。H19年度には新規に開発・改良を行った海底観測機器を豊橋沖海底ケーブル先端の分岐装置へ接続した。深海での接続作業にはJAMSTEC調査船および無人探査機を用いた。この結果、東海地震想定震源域の海底に地震・地殻変動・地下水流動などの総合観測ステーションを構築することができた。また海底ケーブルに流れている人工電流を用いた人工電磁探査モニタリングも開始することができた。観測成果の一例として、平成19年6月には掛川で発生したM4.3の地震波動に伴って海底電場が変動することが明らかとなった。一方、豊橋沖海底ケーブルを用いた海底下モニタリングに先立って、同海域の地殻電気伝導度構造を知る目的で、H18年度からH19年度にかけて自己浮上式の海底電位差磁力計(OBEM)など、のべ12台を東海沖海域へ設置した。これによって沈み込むフィリピン海プレートやその上の島弧地殻の電気伝導度構造を明らかにすることができた。以上の海底ケーブル観測システムの紹介、海底電気探査の成果および間隙水圧変動に伴う電磁場変動現象に関して、複数の研究成果として報告した。
著者
大志万 直人 吉村 令慧 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 藤井 郁子 藤 浩明 塩崎 一郎 笠谷 貴史 山崎 明 藤井 郁子 下泉 政志 村上 英記 山口 覚 上嶋 誠 新貝 雅文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本海の鳥取県沖の海域と陸域での観測を連携させた電場・磁場観測を実施した。観測は、1)鳥取県と兵庫県の県境付近沖の海域を含む測線と、2)隠岐諸島周辺海域の日本海を含む測線で実施した。これらの測線に沿って、海域では海底磁力電位差計、および海底地電位差計を用いた観測を、また、陸域では、長周期電場・磁場観測を実施した。得られた広域比抵抗構造モデルによると、陸域では上部地殻が高比抵抗領域、下部地殻が低比抵抗領域として検出された。さらに日本海下深部に低比抵抗領域が見出された。