著者
平井 源一 中山 登 中條 博良 稲野 藤一郎 平野 高司 下田 裕之 田中 修
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.41-48, 1992-03-05 (Released:2008-02-14)
被引用文献数
1

長辺100m, 短辺40mの水田の約西半分(40m×40m)について, 熱赤外画像計測装置(日本電子JTG-3210型)で水稲個体群の表面温度(葉温)を夏期の高温高日射の時期に測定し, 水稲個体群の葉温分布を調べた. 測定は, 1989年7月末~8月下旬に大阪府立大学農学部附属農場で行った. 1. 供試水田上を吹く風のうち, 頻度が最も高かったのは, アスファルト舗装の道路を経て水田に直接吹き込む風(西風) と, 水田上を吹走した後に吹き込む風(東風)であった. これらの風により水稲個体群上には筋状の低温域が形成された. この筋状の低温域(以下稲の波と称す)における葉温は, 横断面の中心部が最も低く, 中心部から外側になるに従って高くなった. 稲の波の横断面中心部における葉温は, 西風では風上側から風下側になるほど低くなり, 東風では風上側と風下側との差を認めなかった. 2. 水稲個体群内に設けた5m間隔のメッシュの交点における一定時間内の平均葉温は, 西風では, 風速がほぼ1m/sec以下の場合は風下側となる水田内部が周縁部よりも高く, 風速がほぼ1m/sec以上の場合は内部が低くなった. 東風では, 風上側と風下側の葉温差は少なく, 風速の影響も小さかった. 以上のように, 水稲個体群の葉温分布は, 水田の立地条件との関連から風向および風速によって異なることが明らかになった.
著者
平井 源一 稲村 達也 奥村 俊勝 芦田 馨 田中 修 中條 博良 平野 高司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.196-202, 2003-06-05
被引用文献数
1 1

本研究は水稲と陸稲の栄養生長期の生育に及ぼす大気湿度の影響を相対湿度60%と90%で比較したものである.その結果,低湿度条件は高湿度条件に比較して,水稲の乾物生産を有意に減少させたが,陸稲では乾物生産の減少は認められなかった.低湿度下の水稲では,単位葉面積当たり気孔密度が増大し,気孔装置面積も大となり葉面積に占める気孔装置面積の割合が高湿度に比較して有意に大きかった.また,水稲は低湿度で,気乱闘度の低下が少なく,単位葉面積当たり蒸散量が顕著に大きくなり,葉身の本部水ポテンシャルが大きく低下することが認められた.一方,陸稲では水稲に比し低湿度によって,気孔密度,気孔装置面積が変化せず,葉面積の中で気孔装置面積の占める割合に湿度間で有意差がなかった.また,陸稲では,低湿度によって気乱闘度が低下し,蒸散量を抑制するため,葉身の本部水ポテンシャルが低下しなかった.さらに,低湿度による葉身の本部水ポテンシャルの低下した水稲では,葉面積の相対生長率(LA-RGR)が,高湿度に比して有意に低下した.なお,純同化率(NAR)は低湿度によって低下したが,高湿度との間に有意差は認められなかった.したがって,水稲では低湿度で有意なNARの低下をまねく以前に葉面積の低下を引きおこし,乾物生産は抑制されたが,陸稲では湿度間で葉面積の生長速度に差を生じなかった.この点が水稲と,陸稲の生育,乾物生産において湿度間に差を生じさせたものと考える.要するに,水稲と陸稲との間には大気湿度,特に低湿度に対する形態的生理的反応のことなることが,湿度間で認められた乾物生産の水稲,陸稲間差異を生じた要因と考えられる.
著者
中條 博良
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.224-231, 1967-06-10

小麦農林27号または小麦農林4号を種々の温度周期の下で処理し, バーナリゼーション効果の差異について研究した。(1) 40日間毎日0℃または10℃で0〜24時間, 18℃で残り時間処理した。毎日の低温処理時間の長短に応じてバーナリゼーショソ効果に差がみられた。(2) 夫々数日間の低温(0℃)処理と高温(20℃)処理とを低温処理日数の合計が所定日数に達する迄くり返した。低温処理または高温処理の連続日数が増加するに従いバーナリゼーション効果は減少し, 低温処理連続日数が10日内外の時処理効果の減少が顕著であった。しかしこのような処理連続日数の増加にともなうバーナリゼーション効果の減少は低温処理温度を10℃とした時または高温処理温度を15℃とした時には少なかった。以上の結果から低温でのバーナリゼーショシ処理が数日以上連続した場合, その処理効果は高温により消去され易くなるものと考えられる。