著者
稲村 達也 Nguyen Thi Mai Huong 藤田 三郎 鈴木 朋美 絹畠 歩 岡田 憲一
出版者
近畿作物・育種研究会
雑誌
作物研究 (ISSN:1882885X)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.41-49, 2022 (Released:2022-10-21)
参考文献数
16

大福遺跡とベトナムのトゥン・ノイ・ラム遺跡(Thung Noi Lam)から検出された出土米ブロック,および唐古・鍵遺跡と大中の湖南遺跡から検出された出土稲わらブロックを対象に,X線Computed Tomography(CT)計測をSPring-8において画素サイズ25.1μmおよび12.04μmの計測条件で実施し,ブロックに内在する穂軸と伸長茎の微細構造が明瞭な2次元連続画像を得た.その画像の解析によって,穂軸と伸長茎の節に着生する苞葉の形状から穂首節を判別し,その苞葉の形状と一次枝梗の着生位置に基づいて穂首節の下端に接続する穂首節間を特定することで,穂首節間の横断面画像から大維管束の数を評価できることを明らかにした.
著者
小葉田 亨 植向 直哉 稲村 達也 加賀田 恒
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.315-322, 2004 (Released:2004-11-17)
参考文献数
36
被引用文献数
39 45

近年, 西日本を中心に乳白米多発による品質低下が起きている. 乳白米発生原因としては, 登熟期高温による子実成長過程への直接的影響, あるいは着生穎花数が多い, あるいは葉色の落ちたイネで乳白米発生が著しくなるなどから子実への同化産物供給不足が考えられる. そこで, 本研究では3年間にわたり島根県と大阪府の気温・立地条件の異なる3地域でコシヒカリを栽培し, 圃場条件下での乳白米発生状況と登熟期間引きにより物質生産を増やしたときの乳白米発生を調べ, 同化産物供給不足が乳白米発生の主原因であることを明らかにしようとした. 一部地域では登熟期にフィルムで覆った高温区を設けた. その結果, 穂揃い後30日間の平均気温(T30)は23~29℃となり, 籾の充填率は70~90%, 乳白米発生率は0.8~16.0%の変異を示した. T30が高いほど乳白米率が大きなばらつきを持ち増加した. そこで穂揃期以降, 栽植密度を半分に間引いたところ, どの地域, 温度処理でも間引きにより籾の充填率はほぼ90%近くまで増加し, ほとんどの地域で乳白米率が6%以下に減少した. 全結果を込みにすると, 充填率が増えると乳白米発生率が低下した. したがって, 間引きは幅広い温度域で籾の充填率と乳白米発生率を改善した. 以上から, 乳白米は子実の同化産物蓄積過程自体が高温で阻害されるよりも, 高温によって高まった子実乾物増加速度に対して同化産物供給が不足することにより主に生ずると推定された. そのため, 登熟期の同化促進技術は乳白米発生の抑制に有効であると考えられた.
著者
小葉田 亨 植向 直哉 稲村 達也 加賀田 恒
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.315-322, 2004-09-05
被引用文献数
6

近年,西日本を中心に乳白米多発による品質低下が起きている.乳白米発生原因としては,登熟期高温による子実成長過程への直接的影響,あるいは着生穎花数が多い,あるいは葉色の落ちたイネで乳白米発生が著しくなるなどから子実への同化産物供給不足が考えられる.そこで,本研究では3年間にわたり島根県と大阪府の気温・立地条件の異なる3地域でコシヒカリを栽培し,圃場条件下での乳白米発生状況と登熟期間引きにより物質生産を増やしたときの乳白米発生を調べ,同化産物供給不足が乳白米発生の主原因であることを明らかにしょうとした.一部地域では登熟期にフィルムで覆った高温区を設けた.その結果,穂揃い後30日間の平均気温(T_<30>)は23〜29℃となり,籾の充填率は70〜90%,乳白米発生率は0.8〜16.0%の変異を示した.T_<30>が高いほど乳白米率が大きなばらつきを持ち増加した.そこで穂揃期以降,栽植密度を半分に間引いたところ,どの地域,温度処理でも間引きにより籾の充填率はほぼ90%近くまで増加し,ほとんどの地域で乳白米率が6%以下に減少した.全結果を込みにすると,充填率が増えると乳白米発生率が低下した.したがって,間引きは幅広い温度域で籾の充填率と乳白米発生率を改善した.以上から,乳白米は子実の同化産物蓄積過程自体が高温で阻害されるよりも,高温によって高まった子実乾物増加速度に対して同化産物供給が不足することにより主に生ずると推定された.そのため,登熟期の同化促進技術は乳白米発生の抑制に有効であると考えられた.
著者
池永 幸子 遠藤 好恵 稲村 達也
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.207-214, 2010-06-05

田畑輪換を実施する集落営農において土壌特性値の空間変動を考慮した局所管理を行うための基礎情報を得ることを目的として,連続圃場の集合体(16ha)を対象に9つの土壌特性値の空間変動解析を行った.2ha圃場群を対象にした10×10mメッシュ上での土壌サンプリングに基づく空間変動解析の結果から,調査対象とした土壌特性値の最短レンジが46mとなった.この結果に基づいて,124圃場の集合体では,10×33.3mメッシュ上で土壌サンプリングを行い,9つの土壌特性値について空間変動解析を行った.その結果,土壌有機物,全窒素,全炭素および粒径組成は,地形の影響を受けた空間依存性を示し,年次間で比較的安定していると考えられ,これらの土壌特性値は,輪換ブロックを決定するための指標として有効性が示唆された.pH,EC,CECおよび可給態窒素は,栽培管理の前歴の影響を受けた空間変動を示し,年次間の変動が大きいと考えられ,輪換ブロック内での局所管理の指標として有効であると考えられた.田畑輪換がコムギやダイズなどの畑作物と水稲を栽培することを考慮すると,集落単位で田畑輪換を行う際には,第一に,土壌有機物や粒径組成など複数の土壌特性値を用いて,土壌からの養分供給と畑作物生育に強い影響を及ぼす排水性などを同時に評価した輪換ブロックを設定して,効率的な肥培管理や排水対策といった土壌管理を行い,第二に,各輪換ブロックで作物に応じて,可給態窒素等の土壌特性値に基づく可変施肥など局所管理を決定する必要があると考えられた.
著者
平井 源一 稲村 達也 奥村 俊勝 芦田 馨 田中 修 中條 博良 平野 高司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.196-202, 2003-06-05
被引用文献数
1 1

本研究は水稲と陸稲の栄養生長期の生育に及ぼす大気湿度の影響を相対湿度60%と90%で比較したものである.その結果,低湿度条件は高湿度条件に比較して,水稲の乾物生産を有意に減少させたが,陸稲では乾物生産の減少は認められなかった.低湿度下の水稲では,単位葉面積当たり気孔密度が増大し,気孔装置面積も大となり葉面積に占める気孔装置面積の割合が高湿度に比較して有意に大きかった.また,水稲は低湿度で,気乱闘度の低下が少なく,単位葉面積当たり蒸散量が顕著に大きくなり,葉身の本部水ポテンシャルが大きく低下することが認められた.一方,陸稲では水稲に比し低湿度によって,気孔密度,気孔装置面積が変化せず,葉面積の中で気孔装置面積の占める割合に湿度間で有意差がなかった.また,陸稲では,低湿度によって気乱闘度が低下し,蒸散量を抑制するため,葉身の本部水ポテンシャルが低下しなかった.さらに,低湿度による葉身の本部水ポテンシャルの低下した水稲では,葉面積の相対生長率(LA-RGR)が,高湿度に比して有意に低下した.なお,純同化率(NAR)は低湿度によって低下したが,高湿度との間に有意差は認められなかった.したがって,水稲では低湿度で有意なNARの低下をまねく以前に葉面積の低下を引きおこし,乾物生産は抑制されたが,陸稲では湿度間で葉面積の生長速度に差を生じなかった.この点が水稲と,陸稲の生育,乾物生産において湿度間に差を生じさせたものと考える.要するに,水稲と陸稲との間には大気湿度,特に低湿度に対する形態的生理的反応のことなることが,湿度間で認められた乾物生産の水稲,陸稲間差異を生じた要因と考えられる.