著者
小林 庸平 中田 大悟
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.147-169, 2016 (Released:2021-08-28)
参考文献数
24

社会保険料負担の増加は,日本国内の投資を阻害し,空洞化を促進しているのではないかとの指摘があるが,それを実証的に分析した研究は,国内外を問わず非常に乏しい。本稿では,健康保険料データと企業データをマッチングさせた個票データを用いて,企業の健康保険料負担が,設備・研究開発・対外直接投資にどのような影響を与えているかを実証的に分析した。分析の結果,健康保険料負担の増加は,⑴企業の国内投資を一定程度抑制させた可能性がある,⑵研究開発投資には大きな影響は与えていない,⑶海外進出を行うかどうかの意思決定には影響を与えていないものの,既に海外進出を行っている企業の対外直接投資を増加させた可能性がある,といった結果が得られた。
著者
中田 大悟
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.235-253, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
34

2020 年初頭から世界を襲った新型コロナ危機における世界各国の緊急財政対応について,その対応策のバリエーションを整理するとともに,日本の緊急財政対応策と類似の政策を行った国々における政策評価分析について,サーベイを行った。特に,特別定額給付金に類似した家計への直接移転政策を行ったアメリカ,韓国,イスラエルにおける分析,雇用調整助成金に類似した雇用維持政策を実施したアメリカ,オーストラリアにおける分析,さらには日本では実施されなかったものの議論の俎上にあがることは多かった付加価値税(消費税)率の引き下げを行ったドイツにおける分析について,この数年で公表されたものについてサーベイした。これら諸外国の経験,分析結果をまとめることで,今後の日本の政策形成に関わる示唆と知見を整理する。