著者
大沼 健一郎 小林 沙織 直本 拓己 矢野 美由紀 山﨑 美佳 東口 佳苗 中町 祐司 三枝 淳
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.763-768, 2019-10-25 (Released:2019-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3

腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome; TLS)は,化学療法により大量の腫瘍細胞が崩壊した結果起こる代謝異常で,高カリウム血症,高尿酸血症,高リン酸血症などを呈する。特に,尿酸塩やリン酸塩の腎尿細管腔での析出・沈着は閉塞性腎障害から急性腎不全を引き起こすため早急な対応を要する。我々は,化学療法開始後に尿中にキサンチン結晶の析出をおこし,尿沈渣検査による結晶の形態と溶解性の報告により閉塞性腎障害を防ぎ得た症例を経験した。症例は63歳,男性。頸部リンパ節腫脹を主訴に当院受診し,成人T細胞白血病/リンパ腫と診断された。TLS対策としてラスブリカーゼおよびアロプリノール投与下でCHOP療法を開始し,3日後に尿中に析出物を認めた。尿pH 8.0,尿沈渣で褐色の板状結晶と顆粒を多量に認めた。結晶は水酸化カリウムに溶解,酢酸及び塩酸に不溶であった。補液増量,利尿剤投与,さらにアロプリノール中止により結晶は陰性化した。結石成分分析で98%がキサンチン結晶と同定され,アロプリノール投与が原因となり尿酸の前駆体であるキサンチンが蓄積したと考えられた。すなわち,キサンチン結晶はアロプリノール投与を中止すべきことを示唆する重要な尿沈渣成分であると考えられる。キサンチン結石の症例報告はなされているものの,尿沈渣中のキサンチン結晶を形態学的に報告した例はなく,本症例が初めての報告である。
著者
城尾 可奈 荒川 裕也 野口 依子 岡崎 葉子 佐藤 伊都子 中町 祐司 林 伸英 河野 誠司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.64-69, 2016-01-25 (Released:2016-03-10)
参考文献数
13

コリンエステラーゼ(ChE)はコリンエステルをコリンと有機酸に分解する酵素で,アセチルコリンのみを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリン等に作用しコリンと有機酸に分解するブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の2種類がある。BChEは肝細胞で産生される蛋白で,肝臓の蛋白合成能の指標として肝機能検査に用いられているが,BChEのみ低値となる先天性BChE欠損症が報告されている。遺伝性BChE欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があり注意が必要である。今回我々はBChEが極低値な1症例を経験し,その遺伝子を解析した結果,エクソン2のコドン315でのアデニン(A)の挿入(S型)ホモ接合体を認めた。そのため,下流のコドン322にストップコドンが形成されることが判明した。また,エクソン4のコドン539での遺伝子置換ホモ接合体(K-variant)も認めた。
著者
河野 誠司 中町 祐司 笠木 伸平
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、関節リウマチ(RA)の病態におけるmiRNA-124の関与をインテグリンβ1制御の面から明らかにし、miRNAによるRAの病態解明と診断・治療への応用を図ることを目的とし、以下の結果を得た。(1)RA患者培養滑膜細胞にmiR-124を強制発現させると、インテグリンβ1の発現減少が見られた。(2)ラット・アジュバント関節炎モデルで、miR-124を投与したところ、関節炎の軽減が認められた。さらに関節組織において、インテグリンβ1の発現低下を認めた