- 著者
-
丸 祐一
- 出版者
- 科学技術社会論学会
- 雑誌
- 科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.108-118, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
- 参考文献数
- 30
- 被引用文献数
-
1
臨床研究が倫理的であるための原則の1 つとしてエマニュエルら(2004)は協働的パートナーシップ(collaborative partnership)をあげている.このようなパートナーシップを構築する活動としては,例えば,臨床試験への「患者・市民参画」(Patient and Public Involvement(PPI))がある.PPIは,診療ガイドラインや臨床試験の研究計画の作成などに患者参画を求める英国での運動であるが,近年,PPIは役に立っているのかという観点から評価に曝されている.しかしPPIが患者・市民の「権利」だから行われるべきならば役に立つかどうかとは無関係に参画は保障されなければならないのではないだろうか.また,医療者と患者・市民との理性的な対話による合意形成というパートナーシップのあり方は,生命倫理における市民運動的な情念を飼い慣らす「生―権力」的な働きをしているのではないか.