著者
久井 情在
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.364-380, 2019-11-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

「平成の大合併」後,旧市町村が「ローカル・ガバメントからローカル・ガバナンスへ」という変化を体現する空間単位として注目されている.本稿では,旧市町村がローカル・ガバナンスの構成単位として定着する可能性について,大分県佐伯市の旧町村地域政策である2つの事業を事例に考察した.具体的には佐伯市と合併した旧8町村のうち,旧直川村と旧米水津村におけるそれぞれの事業の実施主体と活動スケールを調べた.その結果,当初は両地域とも行政の主導によって旧村スケールの事業が展開されており,旧米水津村ではスケールが保たれたまま,徐々に住民主導に移行していた.一方,旧直川村では実施主体が小地域スケールの住民団体に置き換わっており,旧村スケールの住民主導の実施主体は現れていない.このことは,旧市町村スケールにおけるローカル・ガバナンスの勃興が,必ずしも期待できないことを示唆している.