- 著者
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小池 司朗
菅 桂太
鎌田 健司
山内 昌和
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.60, 2018 (Released:2018-12-01)
国立社会保障・人口問題研究所は2018年3月,「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」(以下,地域推計)を公表した。この地域推計は,2015年の国勢調査人口を基準として,2045年までの地域別人口を男女5歳階級別に推計したものである。推計手法はコーホート要因法を採用し,推計に必要となる仮定値は過去に観察された出生・死亡・人口移動の地域差を反映させて設定している。したがって,人口移動の地域差が推計結果に大きな影響を与えていることはいうまでもないものの,出生力と死亡力の地域差も推計結果に無視できない影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,地域推計の仮定値を利用し,出生力と死亡力に地域差が存在することによって,将来人口にどの程度の差が生じるかについて検証する。 地域推計においては,出生に関する仮定値として子ども女性比,死亡に関する仮定値として男女年齢別生残率を,それぞれ用いている。そこで,仮に子ども女性比と男女年齢別生残率が全国一律の値であったとした場合,具体的には国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(出生中位・死亡中位仮定)から得られる全国水準の子ども女性比と男女年齢別生残率を各地域に一律に適用した場合の推計値を試算し(以下,出生死亡地域差なし推計),地域推計の結果と比較することによって,出生力と死亡力の地域差が将来推計人口に及ぼす影響を抽出した。また,出生力と死亡力それぞれの地域差の影響をみるために,死亡力のみ地域差が存在しないとした場合の推計値も併せて試算した。なお,両推計値の試算に必要となる人口移動に関する仮定値は地域推計と同じ値とした。 出生死亡地域差なし推計による2045年の人口の試算値を基準とする同年の地域推計の人口との乖離について,出生力と死亡力それぞれの地域差の影響を変化率の形で表すと,都道府県別にみれば,出生力の地域差による影響が最もプラスなのは沖縄県(+9.1%),最もマイナスなのは東京都(-3.3%),死亡力の地域差による影響が最もプラスなのは長野県(+1.2%),最もマイナスなのは青森県(-2.5%)となった。沖縄県以外でも,九州の各県では出生力の地域差による変化率が+2~+5%にのぼり,相対的な高出生率が人口減少の緩和に少なからぬ効果を持っていることが明らかになった。