著者
清水 昌人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.85-100, 2017 (Released:2017-07-27)
参考文献数
22
被引用文献数
5

本稿では2014年と2015年の住民基本台帳のデータを用い,外国人の社会増加が日本人の社会減少を量的にある程度以上補っている市区町村を観察した.筆者らは先の論稿で2014年の転出入を分析したが,集計値等を再検討すると,外国人の出国の多くが「その他」の職権消除に分類されていると推測されるため,本稿では転出入に「その他」の記載・消除(国籍変更等除く)を含めて社会増加・減少を分析した.その結果,外国人の社会増加が日本人の社会減少を完全に補う地域は,転出入のみで社会増加・減少を見た前稿に比べて大幅に減った.ただし完全にではないが,前者が後者を半分以上カバーし,かなりの程度補っている地域を加えた数は,2015年には少ないながら一定数にのぼる.2014年と2015年の比較では,これら市区町村の増加は三大都市圏から離れた地域等で小さいこと,かなりの程度以上補われている状態への移行やそこからの離脱は頻繁に起きること等を示した.
著者
清水 昌人 中川 雅貴 小池 司朗
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.375-389, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
18

本研究では全国の自治体における日本人と外国人の転入超過の状況を観察した.特に外国人の転入超過が日本人の転出超過の絶対値と同じか上回っている自治体を中心に,自治体の地域分布や人口学的特徴を検討した.総務省の2014年のデータを用い,総人口の転入超過を日本人分と外国人分に分けて分析した結果,外国人分の転入超過が日本人分の転出超過の絶対値と同じか上回っている自治体は分析対象全体の7%だった.それらの自治体は相対的に北関東や名古屋圏などで多く,北海道や東北で少なかった.また単純平均によれば,相対的に国外からの外国人分の転入が多いほか,総人口が多い,日本人の65歳以上人口割合が低い,外国人割合が高いなどの特徴があった.今回の分析による限りでは,全体として外国人の転入超過が自治体人口の転出超過に対して十分な量的効果をもたらしているとはいえず,またこのことは特に小規模自治体で顕著だった.
著者
清水 昌人
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.59-71, 1997-03-31
被引用文献数
2

本稿では, 近年注目されている来日外国人の居住の問題を, 生活空間の観点から把握するため, 外国人就学生の日常行動についてその空間的側面を検討した. アンケート調査の結果から, 以下の点が明らかになった. (1)彼らの主要活動場所である学校・アルバイト先・住居は, 平均して各々30分程度の時間距離にある. これらの位置関係は彼らの日常生活の時間配分・空間行動を規定する. (2)住居周辺で過ごす時間が長くても, 居住地域に対する積極的な関心が生まれるとは限らない. (3)彼らの交遊関係は, その主要な部分が学校の友人との付き合いで占められる. (4)友人関係が住居周辺で形成される場合でも, そのことが地域に対する興味・関心に結びつくわけではない. また「セグリゲーション」の状態について予察を行い, 中国籍者と韓国籍者では活動空間が異なること, 中国籍者が社会関係の面で日本人からより「凝離」しているのは時空間収支が不利なためであること, などの可能性を示唆した.
著者
清水 昌人
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
2019

<p>東京都の住民登録(基本台帳)人口移動報告により,他の道府県から東京都区部に転入した人の地域分布を出発地別,到着区別に検討した。1960年代後半と2010年代前半の転入数を1㎢あたりの転入数や立地係数など4つの指標で分析したところ,東北・北関東からの転入者と西日本からの転入者の間で,到着地の違いが比較的大きかった。また,埼玉,千葉,神奈川からの転入では,各県に隣接する区およびその周辺部への集中が顕著だった。ただし,出発地ごとの分布のかたよりは2010年代には全体に縮小し,多くの出発地集団で以前よりも似通った分布が観察されるようになった。</p>