著者
平賀 敦 山野辺 啓 久保 勝義
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Journal of Equine Science (ISSN:13403516)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.127-130, 1995-03-31 (Released:2011-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
6 8

この研究の目的は,競走馬のスタートダッシュ時のストライド幅,ストライド数,隣接した2蹄跡間の歩幅であるステップレングス(Steplength)と速度との関係を知ることであった.ストライド数は最初の数完歩に若干の変動を認めるものの,スタート直後からほぼ最大レベルで一定となったのに対し,ストライド幅は25-30完歩でほぼ最大に達した.このことから,実質的な速度増加はストライド幅の増加によるものの,スタート直後ではストライド数を最大にすることの貢献が大きいものと思われた.ステップレングスについては,Mid step lengthが最初から最大レベルに達したのに対し,Airborne step lengthは最大に達するのに時間を要した.これは,スタート直後にAirborne step lengthを急速に増加させることができないため,Mid step lengthを最大限に増加させることにより,速度の増加を行なっていることを示しているものと思われた.
著者
天田 明男 千田 哲生 久保 勝義 大石 幸子 桐生 啓治
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.51-69, 1974-12-01 (Released:2011-02-23)
参考文献数
32

競走馬2例の心房細動に遭遇したので,臨床生理学的に観察した。各症例別の観察結果はつぎのとおりであった。 症例1:サラブレッド,牡,1962年生。 1965年12月のレースにおいて競走途中で突然にスピードが落ち1着馬から5.6秒遅れて入線した。心電図検査の結果,心房細動と診断された。その後,乗馬に転用されたが,1970年3.月に殺処分するまで心房細動が持続した。その間の観察所見はつぎのとおりであつた。 心電図所見:P波欠如し,f波が連続的に出現しその周波数は分あたり400~500であった。心拍間隔は極度に不整で,0.4~2.1秒の間で変動していた。QRS幅は0.12秒,Q-T間隔は0.40秒で正常範囲であった。運動中においても心拍間隔の不整がみられ,f波は消失しなかった。さらに運動中において異常に心拍数が増加した。心音図所見:各弁開口部において1音の振幅が大きく,かつその大きさは拍動毎に変化した。右心房内圧:37~65mmHgであり,a,z,c,x,v,yの各波は認められなかった。頸動脈頸動脈血圧:心拍間隔の不整に伴って血圧曲線も変動し,縮期圧は171~123(142±11.5)mmHg,弛緩期圧は148~99(121±12.1)mmHg,脈圧は40~9(21±4.6)mmHgであった。 症例2:繋駕速歩馬,牝,1963年生。 1967年9,月,調教中に馬場で転倒した。その後,乗馬に転用されたが心電図検査により心房細動と診断された。 心電図所見:基本的所見は症例1と同様であった。安静時心拍間隔は0.8~3.28秒(1.71±0.85秒)の範囲で変動し,QRS幅は0.09秒,Q-T間隔は0.50秒,f波の周波数は360~480/分であった。運動中の心電図検査においても症例1と同様所見がみられたが,心拍数は最高258/分まで増加し,さらに心室粗動の短かい発作が散発した。心音図所見:症例1と同様の所見であった。 本例は細動除去のためにアドレナリン作動β遮断薬(プロプラノロール)を投与したが不成功に終った。ついで1968年7月に硫酸キニジンを3目間に計55g投与したところ,除細動に成功した。その後,殺処分された1970年2月まで細動の再発はなく,洞調律が持続した。