著者
松井 寛二 菅野 茂 天田 明男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.305-312, 1986-04-15

サラブレッド仔馬ならびに母馬各5頭に安静時鼻捻子保定を行い, 心拍数ならびに心電図に現れる変化について比較検討した。仔馬ではいずれの月齢においても, 鼻捻子保定による心拍数の減少は母馬に比較して顕著であり, 仔馬における徐脈効果は鼻捻解除後も少なくとも3〜5分間は持続した。仔馬, 母馬ともに鼻捻子保定による心拍数の減少にともなってA-B誘導心電図のT波の陰性成分が増大した。5頭中2頭の仔馬では, 3.5および4力月齢時の鼻捻子保定により, 第2度房室ブロックが誘発され, この現象は再現可能であった。
著者
桜井 信雄 上原 伸美 山岡 貞雄 天田 明男 千田 哲生
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.4, pp.10-14, 1967-12-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
5

ウマを騒音に曝露した場合における心拍および血液変動について観測し,ついでこれをepirenamine投与および運動負荷の場合と比較した。 1.騒音曝露(90~100phon)によりウマの心拍数は著しく増加した。 2.noiseの負荷によりR.B.C.,Hb,Ht,W.B.C.は増加しE.S.R.,B.W.C.,Eos.は減少した。 3.epirenamine 8mg皮下投与によりnoise負荷の場合とほとんど同様の変動を示したが,この場合心拍は騒音曝露時より変動が軽度であり血液の変動は反対にやや強かった。 4.運動負荷時の心拍数および血液性状の変動は運動の強さによって異なるが一般に騒音曝露時と同様の傾向を示した。 5.epirenamineあるいは運動負荷によりウマの自律神経機能は明らかに交感神経緊張に傾くと考えるが,騒音曝露時における心拍および血液性状の変動からみてこの場合もウマは交感神経緊張に傾くものと考える。
著者
天田 明男 栗田 晴夫
出版者
日本ウマ科学会
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.12, pp.89-100, 1975

競走馬における発作性心房細動の発症の実態を知る目的で,レースで1着馬から大差で遅れてゴールインした馬について心電図学的調査を実施した。調査は,1973年4月から11月までの8カ月間,京都,阪神,中京の各競馬場における出走馬を対象として行った。その結果,サラブレッド競走馬5例に発作性心房細動を認めた。心房細動は,いずれの症例もレース中に発症したが,23時間以内に洞調律に自然に復帰した。5例のうち2例において,,洞調律復帰後の心電図に心房性期外収縮が認められた。<BR>いずれの症例も,洞調律復帰後ただちにトレーニングを再開し,心房細動発症以前と同様の競走成績をあげ得た。しかし,5例のうち1例は,5カ月後に心房細動の再発が認められた。<BR>これらの症例の観察から,競走馬における発作性心房細動の病因,臨床的意義などについて考察した。
著者
天田 明男 千田 哲生 久保 勝義 大石 幸子 桐生 啓治
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.51-69, 1974-12-01 (Released:2011-02-23)
参考文献数
32

競走馬2例の心房細動に遭遇したので,臨床生理学的に観察した。各症例別の観察結果はつぎのとおりであった。 症例1:サラブレッド,牡,1962年生。 1965年12月のレースにおいて競走途中で突然にスピードが落ち1着馬から5.6秒遅れて入線した。心電図検査の結果,心房細動と診断された。その後,乗馬に転用されたが,1970年3.月に殺処分するまで心房細動が持続した。その間の観察所見はつぎのとおりであつた。 心電図所見:P波欠如し,f波が連続的に出現しその周波数は分あたり400~500であった。心拍間隔は極度に不整で,0.4~2.1秒の間で変動していた。QRS幅は0.12秒,Q-T間隔は0.40秒で正常範囲であった。運動中においても心拍間隔の不整がみられ,f波は消失しなかった。さらに運動中において異常に心拍数が増加した。心音図所見:各弁開口部において1音の振幅が大きく,かつその大きさは拍動毎に変化した。右心房内圧:37~65mmHgであり,a,z,c,x,v,yの各波は認められなかった。頸動脈頸動脈血圧:心拍間隔の不整に伴って血圧曲線も変動し,縮期圧は171~123(142±11.5)mmHg,弛緩期圧は148~99(121±12.1)mmHg,脈圧は40~9(21±4.6)mmHgであった。 症例2:繋駕速歩馬,牝,1963年生。 1967年9,月,調教中に馬場で転倒した。その後,乗馬に転用されたが心電図検査により心房細動と診断された。 心電図所見:基本的所見は症例1と同様であった。安静時心拍間隔は0.8~3.28秒(1.71±0.85秒)の範囲で変動し,QRS幅は0.09秒,Q-T間隔は0.50秒,f波の周波数は360~480/分であった。運動中の心電図検査においても症例1と同様所見がみられたが,心拍数は最高258/分まで増加し,さらに心室粗動の短かい発作が散発した。心音図所見:症例1と同様の所見であった。 本例は細動除去のためにアドレナリン作動β遮断薬(プロプラノロール)を投与したが不成功に終った。ついで1968年7月に硫酸キニジンを3目間に計55g投与したところ,除細動に成功した。その後,殺処分された1970年2月まで細動の再発はなく,洞調律が持続した。
著者
天田 明男 千田 哲生
出版者
日本ウマ科学会
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.2, pp.1-8, 1964-03-31 (Released:2011-02-23)
参考文献数
26

競走馬の不整脈を心電図によって診断する基礎資料を得るため,左側下胸 部(心尖部)と右側肩部からの胸部双極誘導法により,育成馬95頭,競走馬59頭,計154頭の心電図を記録し,次のごとき成績を得た。 (1)P波は殆んどの例で2峰性陽性波が記録された。振幅は,育成馬は平均0・30mV,競走馬でね平均0.34mVであった。持続時間は,育成馬は平均0.13秒,競走馬は平均0.15秒であった。 (2)PQ segmentは,殆んどの例で陰性方向に若干偏位していた。Ta波のためと考える。 (3)QRS群は,rS型またはQS型として出現した。S波の振幅は,育成馬では平均2.40mV.競走馬では平均3.24mVで,競走馬の方が大なる値を示した。持続時間は育成馬では,平均0.11秒,競走馬では平均0.12秒であった。 (4)T波は,育成馬においては-+型2相性波を示したものが多く,競走馬では陽性波を示したものが多かった。 (5)PQ間隔は,育成馬では0.40~0.20秒で平均0.29秒,競走馬では0.50~0.23秒で平均0.32秒であった。 (6)QT間隔は,育成馬では0.54~0.34秒で平均0.45秒,競走馬では0.57~0.34秒で平均0.47秒であった。 (7)PQ間隔とPP間隔との関係式およびPQ間隔の正常範囲は次のようであった:PQ=0.07PP+0.20±0.05 終りに臨み,種々御指導を戴き,かつ本稿の校閲を賜った東大農学部野村晋一助教授に深謝する。また,本実験の実施には宇都宮育成牧場長金子忠三氏ならびに廐舎係員各位,東京競馬場および中山競馬場診療所員各位,馬事公苑教育課員各位の御協力に負う所が多かった。茲にその御厚意に謝意を述べる。
著者
天田 明男 千田 哲生
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.2, pp.9-27, 1964

競走馬において屡々遭遇する不整脈の実態を知る目的で,育成馬・競走馬および乗馬合わせて約200頭の心電図を記録したところ,48例の異常心電図に遭遇した。これらの心電図所見は次の通りであった。 (1)異常心電図48例の内訳は,洞性不整脈2例,期外収縮5例,心房細動2例,第1度房室ブロック11例,第2度房室ブロック19例,洞房ブロック3例,心房内ブロック4例,心室内プロック1例,WPW症候群1例であつた。 (2)洞性不整脈(2例):P-QRS-Tの各波に異常なく,P-P間隔に不規則な不整を認めた。 (3)期外収縮(5例):心房性期外収縮3例,心室性期外収縮2例であった。いづれも,一源性かつ固定連結性の期外収縮であった。 (4)心房細動(2例):RR間隔は絶対不整であり,f波は著明で連続的に出現し,その頻度は300~600/min.であった。 (5)第1度房室プロック(11例):PQ間隔の異常延長を見るもので,floating PQを示したものが5例あった。 (6):第2度房室プロック(19例):floating PQを伴ったプロック13例,Wenckebach型のプロック6例であった。心室脱落の頻度は育成馬では散発的であったが,競走馬では規則的で,4:1または5:1プロックであった。また,プロック時のPP間隔はいづれも延長し,ブロック後のQT間隔は,ブロック前のそれに比しいづれも短縮していた。 (7)洞房ブロック(3例):P-SRS-Tの各波に異常なく,PP間隔にWenckebach周期を認めた。 (8)心房内ブロック(4例):異常波形のP波が出現した。 (9)心室内ブロック(1例):異常波形のQRSが出現し,その持続時間も若干延長した。 (10)WPW症候群(1例):WPW型心電図には,PQ間隔の異常短縮QRSの変形,QRSおよびQT時間の延長が認められた。WPW型心電図と短期間に交互に出現したり,また連続的に出現したりした。なお,本例では発作性心臓頻拍は認められなかった。 終りに臨み,種々御指導を戴き,かつ本稿の校閲を賜った東大農学部野村晋一助教授に深謝する。1また本実験の実施には,宇都宮育成牧場長金子忠三氏ならびに廐舎係員各位,東京競馬場および中山競馬場診療所員位,馬事公苑教育課員各位の御協力に負う所が多かった。茲にその御厚意に謝意を述べる。