- 著者
-
天田 明男
千田 哲生
- 出版者
- Japanese Society of Equine Science
- 雑誌
- 日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
- 巻号頁・発行日
- vol.1964, no.2, pp.9-27, 1964
競走馬において屡々遭遇する不整脈の実態を知る目的で,育成馬・競走馬および乗馬合わせて約200頭の心電図を記録したところ,48例の異常心電図に遭遇した。これらの心電図所見は次の通りであった。 (1)異常心電図48例の内訳は,洞性不整脈2例,期外収縮5例,心房細動2例,第1度房室ブロック11例,第2度房室ブロック19例,洞房ブロック3例,心房内ブロック4例,心室内プロック1例,WPW症候群1例であつた。 (2)洞性不整脈(2例):P-QRS-Tの各波に異常なく,P-P間隔に不規則な不整を認めた。 (3)期外収縮(5例):心房性期外収縮3例,心室性期外収縮2例であった。いづれも,一源性かつ固定連結性の期外収縮であった。 (4)心房細動(2例):RR間隔は絶対不整であり,f波は著明で連続的に出現し,その頻度は300~600/min.であった。 (5)第1度房室プロック(11例):PQ間隔の異常延長を見るもので,floating PQを示したものが5例あった。 (6):第2度房室プロック(19例):floating PQを伴ったプロック13例,Wenckebach型のプロック6例であった。心室脱落の頻度は育成馬では散発的であったが,競走馬では規則的で,4:1または5:1プロックであった。また,プロック時のPP間隔はいづれも延長し,ブロック後のQT間隔は,ブロック前のそれに比しいづれも短縮していた。 (7)洞房ブロック(3例):P-SRS-Tの各波に異常なく,PP間隔にWenckebach周期を認めた。 (8)心房内ブロック(4例):異常波形のP波が出現した。 (9)心室内ブロック(1例):異常波形のQRSが出現し,その持続時間も若干延長した。 (10)WPW症候群(1例):WPW型心電図には,PQ間隔の異常短縮QRSの変形,QRSおよびQT時間の延長が認められた。WPW型心電図と短期間に交互に出現したり,また連続的に出現したりした。なお,本例では発作性心臓頻拍は認められなかった。 終りに臨み,種々御指導を戴き,かつ本稿の校閲を賜った東大農学部野村晋一助教授に深謝する。1また本実験の実施には,宇都宮育成牧場長金子忠三氏ならびに廐舎係員各位,東京競馬場および中山競馬場診療所員位,馬事公苑教育課員各位の御協力に負う所が多かった。茲にその御厚意に謝意を述べる。