著者
中根 佳江
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.9, pp.83-106, 2015-03-20

ここ数年、保育者から表現をしない子どもへの指導について、良く質問を受けるようになった。そこで筆者が各園でリトミック指導時に保育者の子どもへの関わり方に注目したところ、保育者の音楽的表現力の差がある事に気づいた。 子どもを取り巻く環境として、家庭では保護者が忙しく、子どもとゆっくり歌を歌うという時間もない。そして保育現場では、様々な取り組みに追われ、子どもと楽しく音楽的活動を行う気持ちの余裕が減少しているように見受けられる。 そのような環境の中で、保育者の音楽的表現力の差が子どもの音楽的表現力の向上に関連されると推測し、本研究では、調査①では、保育者への研修を行い、リトミックの理解と音楽的表現力の向上についての調査を行う。調査②では、保育者の被験児への音楽的表現力についての観察記録により、子どもの音楽的表現力についての調査を行う。 以上の調査より、保育者自身が表現することを楽しいと感じ、保育者が表現力を高め、表現に関する視野を広げて子どもに関われば、子どもの音楽的表現力の向上に影響を及ぼすことがいえる。
著者
藤本 早苗 小椋 たみ子 渡辺 俊太郎
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-28, 2020-03-20

女性の社会進出が進み、一日の多くの時間を保育施設で過ごす子どもの数も増加する中で、集団への適応の如何は子どもにとって大きな課題となり得る。本研究では、社会的スキル、実行機能及び言語能力の3者を適応に関わる領域として捉え、幼児期におけるそれら3領域の関連を検討することを目的とした。近畿圏内の保育所、幼稚園、認定こども園の担任保育士に質問紙調査を実施し、3歳後半から6歳の就学前児 652 名に対する回答を得た。それらの保育者評定の得点について因子分析した結果、社会的スキル3下位尺度(主張スキル・協調スキル・自己統制スキル)、実行機能2下位尺度(抑制力・状況対応力)、言語能力2下位尺度(外言活用力・メタ言語活用力)を抽出した。分散分析の結果、7下位尺度の全てにおいて、性別と年齢の交互作用は有意ではなく、それぞれの主効果のみが有意であった。具体的には、女児が男児よりも有意に得点が高く、また、5歳前半児がそれ以前の年齢群よりも有意に得点が高かった。パス解析の結果、言語能力から社会的スキルと実行機能への影響が大きいこと、そして、言語能力の中でも、外言やメタ言語を活用する能力の発達が、幼児期における社会的スキル及び実行機能の獲得・発達に対して、共通の重要な要件となっている可能性が示唆された。
著者
俵谷 好一 藤田 善正 西岡 毅 弘田 陽介
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Journal of Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-18, 2018-03-20

2017 年に告示された学習指導要領によって、各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントが導入された。そして、学校教育の改善・充実および評価のサイクルの実質化が各学校に求められるようになった。本稿では、この新しい流れを受けて、具体的な単元計画を提出し、体育と道徳の合科的な学習による身体と心をつなぐ二事例を提案したい。一つ目の事例である集団でのボールゲームでは、チームワークや他者への配慮を学ぶような道徳教材を組み入れて、個々の児童の立場や個性に応じた思考と技術が学べる単元計画を私たちは考えた。また二つ目には、私たちは個人の体操技術の向上のために、他の児童との対話が必要になるような設定と読み物を用意する。実技を行う児童と運動観察者の児童は、それぞれの運動についての工夫を考えるが、その際にどのように伝えるかというコミュニケーションの問題も含まれている。この二つの事例を通して、私たちは教科としての体育と道徳をつなぎ、その二つの教科の特性から複眼的に考え、対話するような授業実践(対話的実践)を構想する。このように、今日のカリキュラム・マネジメントの議論の文脈から、この事例を捉えなおし、より深い子どもたちの学びを促進するような提案をし、対話による心身のつながる実践を生み出していくことを本稿の目的としたい。
著者
弘田 陽介
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-16, 2017-03-20

要旨:2005 年の中央教育審議会の答申、2008 年の幼稚園教育要領の改訂を経て、幼児教育学・保育学の領域において、「協同」というキーワードが議論されるようになってきた。そして、現在、2018 年の幼稚園教育要領の改訂に向けて、新たな望ましい資質・能力としての「協同性」についての議論が深められている。このような経緯を踏まえ、本稿は、協同性概念を再定位しようとするものである。その際、これまでの一連の議論の主導者とも言える無藤隆の著作からその概念を抽出するが、そこから浮かび上がってくるのが「身体知としての協同性」である。この身体知という発想は、現在の幼児教育における協同性の捉え方にはあまり理論的には反映されていないものである。本稿論者は、今後身体から協同性を捉えなおしていくための準備作業として、この無藤の概念を手がかりに協同性概念の整理と経緯説明を行った。
著者
大方 美香
出版者
大阪総合保育大学
雑誌
大阪総合保育大学紀要 (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.4, pp.129-144, 2010-03-20