著者
樫田 陽子 町田 登 山本 剛 桐生 啓治
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器 (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.6-11, 1999 (Released:2005-11-11)
参考文献数
18

レースにおいて突然1着馬から大差で遅れて入線し,その直後の心電図(ECG)検査で発作性心房細動(AF)が認められた2例の所見について報告した。症例1ではレース終了10分後にAFが確認され,頻発性多源性心室性期外収縮(VPC)を伴っていた。本例は24時間後には正常洞調律に復帰していたが,その後の調教で状態不良のため競走馬から除籍された。症例2ではAF発症時にVPCは認められず,洞調律復帰後の成績は良好であった。運動直後に発作性AFが起こりVPCが併発した場合,予後は不良となる可能性が示唆された。
著者
天田 明男 千田 哲生 久保 勝義 大石 幸子 桐生 啓治
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.51-69, 1974-12-01 (Released:2011-02-23)
参考文献数
32

競走馬2例の心房細動に遭遇したので,臨床生理学的に観察した。各症例別の観察結果はつぎのとおりであった。 症例1:サラブレッド,牡,1962年生。 1965年12月のレースにおいて競走途中で突然にスピードが落ち1着馬から5.6秒遅れて入線した。心電図検査の結果,心房細動と診断された。その後,乗馬に転用されたが,1970年3.月に殺処分するまで心房細動が持続した。その間の観察所見はつぎのとおりであつた。 心電図所見:P波欠如し,f波が連続的に出現しその周波数は分あたり400~500であった。心拍間隔は極度に不整で,0.4~2.1秒の間で変動していた。QRS幅は0.12秒,Q-T間隔は0.40秒で正常範囲であった。運動中においても心拍間隔の不整がみられ,f波は消失しなかった。さらに運動中において異常に心拍数が増加した。心音図所見:各弁開口部において1音の振幅が大きく,かつその大きさは拍動毎に変化した。右心房内圧:37~65mmHgであり,a,z,c,x,v,yの各波は認められなかった。頸動脈頸動脈血圧:心拍間隔の不整に伴って血圧曲線も変動し,縮期圧は171~123(142±11.5)mmHg,弛緩期圧は148~99(121±12.1)mmHg,脈圧は40~9(21±4.6)mmHgであった。 症例2:繋駕速歩馬,牝,1963年生。 1967年9,月,調教中に馬場で転倒した。その後,乗馬に転用されたが心電図検査により心房細動と診断された。 心電図所見:基本的所見は症例1と同様であった。安静時心拍間隔は0.8~3.28秒(1.71±0.85秒)の範囲で変動し,QRS幅は0.09秒,Q-T間隔は0.50秒,f波の周波数は360~480/分であった。運動中の心電図検査においても症例1と同様所見がみられたが,心拍数は最高258/分まで増加し,さらに心室粗動の短かい発作が散発した。心音図所見:症例1と同様の所見であった。 本例は細動除去のためにアドレナリン作動β遮断薬(プロプラノロール)を投与したが不成功に終った。ついで1968年7月に硫酸キニジンを3目間に計55g投与したところ,除細動に成功した。その後,殺処分された1970年2月まで細動の再発はなく,洞調律が持続した。
著者
中村 孝 中張 淳平 町田 登 桐生 啓治 町田 昌昭
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.405-408, 1984-06-01

日本カモシカの剖検例5例の肝臓に槍形吸虫 (Dicrocoelium dendriticum) の寄生をみとめた。吸虫は胆管内に寄生し, 粘膜における上皮細胞の過形成および globule leucocyte の出現, 粘膜下織におけるリンパ球・好酸球の浸潤, 胆管壁における肉芽組織増殖および線維性肥厚がみられた。
著者
樫田 陽子 町田 登 山本 剛 桐生 啓治
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器 (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.6-11, 1999

レースにおいて突然1着馬から大差で遅れて入線し,その直後の心電図(ECG)検査で発作性心房細動(AF)が認められた2例の所見について報告した。症例1ではレース終了10分後にAFが確認され,頻発性多源性心室性期外収縮(VPC)を伴っていた。本例は24時間後には正常洞調律に復帰していたが,その後の調教で状態不良のため競走馬から除籍された。症例2ではAF発症時にVPCは認められず,洞調律復帰後の成績は良好であった。運動直後に発作性AFが起こりVPCが併発した場合,予後は不良となる可能性が示唆された。
著者
関 慶久 樫田 陽子 町田 登 桐生 啓治
出版者
Japanese Society of Veterinary Cardiology
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.74-77, 1998-12-01

うっ血性心不全の症状を呈して死亡したアミメキリン(Giraffa camelopardalis reticulata)の心臓を病理学的に検索した。心臓は拡大して丸みを帯び,両心室腔は著しく拡張していた。左心室内には前乳頭筋と後乳頭筋の位置に2個の硬い灰白色腫瘤病変(それぞれ6×4cm,8×3cm)が認められた。腫瘤は乳頭筋の頂上部.腱索ならびに僧帽弁弁尖の一部を巻き込んでいた。また,左心房の心内膜面には噴流病変が形成されていた。病理組織学的に,これらの腫瘤病変は腱索に主座した心内膜炎の瘢痕化病巣(線維性心内膜炎)とみなされた。
著者
藤本 胖 門田 耕一 森口 良三 桐生 啓治 松川 清 千早 豊
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.19, pp.69-88, 1982-12-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
39

過去30年間 (1949-1979) に集められた馬白血病群 (EL) 14頭が病理形態学的に観察され, 腫瘍細胞の特徴により次の型に分類された。A. リンパ肉腫12例: リンパ球性リンパ肉腫 (2例), リンパ球性及び前リンパ球性リンパ肉腫 (3例), リンパ芽球性リンパ肉腫 (1例), 未分化組織球性リンパ肉腫 (1例), 組織球性リンパ肉腫 (2例) 及び組織芽球性リンパ肉腫 (1例)。B. 幹細胞性白血病1例。C. 骨髄性白血病1例。14例は2乃至3歳馬5例, 8乃至17歳馬6例, 年齢不詳馬3例よりなっていた。リンパ肉腫罹患馬12例は多中心型9例, 消化器型1例, 孤立リンパ腫2例よりなっていた。2例が皮下組織腫瘍を伴っていた。ELに最も頻繁に冒される臓器はリンパ節で, 次で脾臓, 腎臓, 腸及び肝臓であった。心臓, 肺, 胸腺, 躯幹筋及び皮膚はより低い頻度で冒されていた。組織球性リンパ肉腫の超微形態において, 特に粗面小胞体の分布及び構造に幅広い変化が見られた。腫瘍細胞の細胞質において, 大型空胞が屡々見られた。高度な多形性の核と著しく大きい核小体, 拡大したゴルジー野, 豊富なブリーリボゾームは高度な代謝活性を示すものである。電顕的検索では何処にもウイルス粒子を見ることは出来なかった。