著者
杉村 朋子 原 健二 久保 真一 西田 武司 弓削 理絵 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.842-850, 2012-12-15 (Released:2013-01-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2 4

尿試料からの簡易薬物スクリーニング検査を実施している3次救命救急センターや高度救命救急センターでは,これまでTriage DOA(シスメックス社)が使用されてきた。2010年11月にはこれに加えて,尿検査キットINSTANT-VIEW M-I(TFB社)が国内販売となった。そこで当施設において薬物分析結果に基づいた両キットの比較検討を行った。対象は2010年12月28日から2011年8月30日までの約8か月間で,救急初療時に検査が必要と判断し,採尿可能であった症例を対象とした。Triage DOAおよびINSTANT-VIEW M-Iの検査を施行し,1項目でも陽性を認めた45症例に対し,当大学法医学教室でガスクロマトグラフ質量分析装置(Gas Chromatograph Mass Spectrometer,以下GC/MS)および液体クロマトグラフ質量分析装置(Liquid Chromatography - tandem Mass Spectrometry,以下LC/MS/MS)を用いた薬物分析を実施した。比較検討の結果,INSTANT-VIEW M-Iの方が操作は簡便で所要時間も短時間であった。しかし,結果の判定はTriage DOAの方が簡単であった。薬物検査の性能に関しては,感度はINSTANT-VIEW M-Iが高く,特異度はTriage DOAが高い傾向にあった。両キットで三環系抗うつ薬とベンゾジアゼピン系の偽陽性率が高く,数例で偽陰性も認めた。簡易スクリーニング検査には偽陽性(偽陰性)があるということを理解したうえで用いることが重要である。
著者
柏木 正之 原 健二 ウォーターズ ブライアン 久保 真一
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究期間内において、ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)法、ガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析装置(GC-MS/MS)を用いて、インスリン製剤の添加物であるm-クレゾールの検出が可能であることが確認され、応用することにより、その定量も可能であると考えられた。また、インスリンアナログの検出法について、液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて検討を行い、その定量の可能性が示唆された。
著者
久保 真一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.770-774, 2004-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
22
被引用文献数
1

頭部外傷症例に求められる法医学的課題は,受傷時の模様を再現し,被害者の傷害の責任の所在を解明するための情報(資料)の提供,法的因果関係の解明にある.この情報とは,損傷の種類(名称)のみならず,成傷器具の種類(鈍器,鋭器など),外力の種類,成傷機転(打撲,転倒・転落),受傷時の身体状況(飲酒,薬物摂取,疾病),受傷後死亡までの状態(意識レベル,行為能力など),死亡例では死因の解明である.成傷機転では,同側挫傷が認められた場合は打撲が,対側挫傷の場合は転倒・転落が疑われる.成傷器具は,外表の損傷の種類から判断可能である.受傷時の飲酒の程度は,血液・尿ばかりでなく頭蓋内血腫からも分析可能である.
著者
原 健二 久保 真一 柏木 正之
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

火災で発生する熱分解物すなわち煙成分を焼死体の血液から証明する研究をした。方法としては、固相マイクロ抽出を使って揮発性成分を抽出し、低温濃縮ガスクロマトグラフィー質量分析法を使った。この方法により、熱分解産物であるフェニルアセチレン、スチレン、インデン、ナフタレンが熱傷を伴う焼死体の血液から検出されることがわかった。すなわち、この分析において、焼死体の血液から火災で発生した煙成分を証明することができる。煙成分の検出は火災発生時において焼死体が生存していた証拠になる。