著者
東 華岳 安達 泰弘 林 春樹 久保 金弥
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.245-253, 2015-12-01 (Released:2015-12-13)
参考文献数
52
被引用文献数
14 37

骨粗鬆症は骨量の減少と骨質の劣化が特徴で,骨折しやすくなるもっとも一般的な代謝性骨疾患である.超高齢社会の到来を受け,骨粗鬆症は大きな社会問題になっている.一方,生体はつねにさまざまなストレスにさらされ,その生理機能に影響を及ぼしている.最近の研究によれば,慢性の精神的ストレスがさまざまなシグナル経路を介し骨粗鬆症の危険因子である.本総説では,慢性の精神的ストレスと骨粗鬆症との関連性について,最近の進展状況を概説する.中枢神経系,特に視床下部による骨代謝調節機構の存在が明らかにされてきた.ヒトおよび動物研究によると慢性の精神的ストレスが視床下部-下垂体-副腎皮質系,交感神経系,および内分泌・免疫系への影響を介して骨量を低下させ,骨質を悪化させる.噛む動作にはストレス緩和作用があることが証明されている.噛む動作は,ストレス誘発神経内分泌反応を弱め,ストレス性骨量減少を改善する.したがって,噛む動作は,慢性の精神的ストレスに関連する骨粗鬆症の予防・治療において,有用なアプローチになりうる.また,慢性の精神的ストレス,噛む動作と骨粗鬆症との相互関係についてのメカニズムも考察した.慢性の精神的ストレスは視床下部-下垂体-副腎皮質系と交感神経系を活性化させ,性ホルモンと成長ホルモンを抑制し,炎症性サイトカインを増加させ,骨形成の抑制と骨吸収の促進により最終的に骨量減少を引き起こす.
著者
飯沼 光生 安井 清子 峯田 淑江 山田 幸子 田村 康夫 久保 金弥 桑野 稔子
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.150-155, 2004-11-20

痴呆と口腔状態や生活自立度との関係を調べることを目的として,老人保健施設の入所者を対象に実地調査を行った.調査対象は愛知県一宮市の老人保健施設入所者である.年齢66歳から97歳の男性17名と女性36名の計53名(平均82.9歳)であり,平成12年12月に調査を実施した.調査した老人の痴呆度はIが12名,IIが13名,IIIが21名,IVが6名,Vが1名と重度の者は少なく,痴呆初期の者がほとんどであった.生活自立度と痴呆度の関係は,食事,理解表出,社会交流と痴呆度との間に負の相関が認められた.残存歯数と痴呆度との間には有意な相関関係が認められなかったが,機能歯数との間には負の相関が認められた.痴呆度と口腔状態総点との間には負の相関は認められなかったが,痴呆度と生活自立度総点との間に負の相関が認められた.
著者
久保 金弥 檜山 征也 匂坂 恵里 水野 潤造
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.311-322, 2012 (Released:2021-10-08)
参考文献数
52

Stress affects memory acquisition, but the direction of the effect varies. Some studies report that stress enhances memory, and others report that stress impairs memory. The relation between the effect of pleasant stimuli on neural activity in the hippocampus and memory acquisition is unclear. The amygdala has a primary role in processing emotion and mediates affectively-influenced memory. The hippocampus is critically involved in memory. We evaluated the effect of pleasant and unpleasant stimuli on neuronal activity in these regions during picture-encoding using functional magnetic resonance imaging and memory acquisition. To test whether pleasant and unpleasant stimuli affect memory acquisition, a recall test was administered 20 minutes after encoding. Fifteen subjects (8 men; mean age 37.9±12.9 years [range 20-61]) participated. Pleasant and unpleasant stimuli increased blood oxygenation level-dependent (BOLD) signals in the amygdala. The pleasant stimulus enhanced neuronal activity in the hippocampus (i.e., increased BOLD signals) and increased memory acquisition. The unpleasant stimulus decreased both hippocampal neural activity and memory acquisition. Visual Analogue Scale scores for the pleasant and unpleasant stimuli were 8.7±0.5 and 9.0±0.6, respectively. Thus, pleasant and unpleasant stimuli might influence memory acquisition by increasing or reducing hippocampal activity during picture-encoding.
著者
久保 金弥 伊藤 正樹 伊藤 徹魯 岩久 文彦
雑誌
障害者歯科 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-27, 2001-02-28
参考文献数
5
被引用文献数
4
著者
伊藤 徹魯 藤田 明良 久保 金弥
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 : Wildlife conservation Japan (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.51-66, 2001-07-31

We studied nine marine mammal records from two old Korean texts, Chinese writting, Goshu-enjimon-chosen-sanko (Goshu's long, scattered manuscripts) and Chosen-Ocho-jitsuroku (A Korean True Account on the Monarchial Age). Four of the records were identified or assumed to be on the Japanese sea lion (Zalophus californianus japonicus) and five on larga seals (Phoca largha). The Japanese sea lion lived from the end of 17th c. to the beginning of the 19th c. and the larga seal from the 3rd c. B.C. to the end of 18th c. Two places where the sea lion are reported to have lived were Ullung-do in the Sea of Japan, and the estuary of the Tumangang in northeastern Korea, bordering on Russia. One place that the seal is reported to have lived was Kangnung located on the eastern coast of the Korean Peninsula. The other four places were somewhere around "the eastern waters", broad area containing the Bo Hai, Huang Hai and Sea of Japan. We confirmed that sea lions had had a breeding colony at Ullung-do at the end of 18th c., and estimate that their population size was substantial during three periods, the end of 17th and 18th c. and the beginning of 19th c.
著者
久保 金弥 岩久 文彦 小野塚 実
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.335-340, 2008-06
著者
市橋 幸子 荒川 容子 倉田 知香 飯沼 光生 田村 康夫 久保 金弥 岩久 文彦
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.87-92, 2008-02-20
被引用文献数
1

本研究は,高次脳中枢の中でストレスによる影響を最も受けやすいといわれている海馬にスポットをあて,老化促進モデルマウスP8系を用いて,咬合不全が海馬機能に与える影響を検討した。咬合挙上は,マウスの上顎臼歯部に歯科用光重合レジンをもることにより行った。はじめに,ストレス物質である血中のコルチコステロン(CO)濃度を測定した。その結果,老齢期の咬合挙上マウスでは,血中CO 濃度が顕著に上昇していたため,咬合挙上がストレッサーとして作用していることが確認された。次いで,海馬の記憶機能が測定できるモリス水迷路学習テストを行い,咬合挙上と空間認知能との関係を検討した。また,Fos 陽性細胞の発現率から記憶運動にリンクした海馬への情報入力量を検討した。その結果,老齢期の咬合挙上マウスでは,水迷路テストによりプラットホームへの到達時間が延長するとともに,Fos 陽性細胞数が減少していたことから,咬合挙上により海馬への情報入力量が減少し,空間認知能が低下することが示唆された。次に水迷路テスト終了後,咬合挙上と老化プロセスとの関連を検討するため,海馬神経細胞数の計測を行った。老齢期の咬合挙上マウスでは,海馬神経細胞数の減少がみられたことから,咬合挙上が海馬の老化を促進させることがわかった。最後に,海馬におけるグルココルチコイドレセプター陽性細胞とグルココルチコイドレセプターmRNA の発現状況を調べ,咬合挙上が視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA-axis)に与える影響を検討した。咬合挙上マウスでは,GR 陽性細胞とGRmRNA の発現が減少したことから,海馬からHPA-axisへのネガティブフィードバック機構が抑制されていることが判明した。本実験により,咀嚼機能の維持や咬合不調和の改善は,「食べることができる」ようにするということだけでなく,海馬機能(記憶能力)の維持に重要であることが脳科学的に証明された。また,歯の喪失している高齢者の有病率や認知症発症率が高いという疫学調査の結果を考え合わせれば,高齢化が進む我が国において咬合の維持・回復は認知症予防につながる可能性があると期待される。