著者
久保 雅昭 関屋 昇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.G0422, 2004

【目的】<BR> <BR> 厚生労働省の医療改革により入院在院日数が削減され、以前よりも早期の予後予測や効率的な理学療法が要求されているように思われる。また、入院患者の情報収集についても同様であり、このためには病棟との連携が必須である。当院では、脳神経外科病棟(以下脳外)において、今まで週1回リハビリカンファレンスを開催しているが、患者情報の交換が十分であるとはいえない。最近、脳外での朝・夕の申し送りが廃止され、ウォーキングカンファレンス(以下WCF)が開始されたため、効率的な情報交換を目的にリハビリテーション科(以下リハ科)でも週1回参加することになった。リハ科の参加開始1ヶ月の時点で、連携に関する問題点を明らかにすることを目的として、アンケートによる意識調査を行った。<BR><BR>【方法】<BR> 対象<BR> <BR> 当院脳外に勤務する看護師20名(女性18名、男性2名)経験年数1から30年(4年以下は9名)。リハ科に所属するPT7名・ST1名の8名、経験年数1から4年(女性7名、男性1名)。<BR><BR> WCF開始1ヶ月時にアンケート調査を行った。アンケートの内訳は、患者とその家族関連(以下Pt)5項目、自らの業務関連(以下M)4項目、他職種との連携関連(以下R)5項目、設備関連(以下H)1項目の15項目とした。各項目について、評定尺度(5・7段階)を用いて調査した。これらを経験5年以上の看護師(以下N)、経験4年以下の看護師(以下N4)、およびリハ科で集計し、Nとリハ科、N4とリハ科、NとN4の組み合わせで傾向と要因を比較した(評定尺度の中立要素を基準にポジティブ、ネガティブ要素と定義した)。<BR><BR>【結果】<BR><BR> 各項目の回答率は100%であった。N・N4・リハ科間において最も共通性が認められたのは、H項目のネガティブ要素であった。次はM項目の中立要素に共通性がみられ、NとN4間ではポジティブ要素への共通性も認められた。そしてR項目では、N4とリハ科間にネガティブ要素、NとN4間に中立要素の共通性があった。最もバラツキが大きかったPt項目では、ほとんど共通性は認められなかった。<BR><BR>【考察】<BR><BR> 今回リハ科と病棟の情報共有化について意識調査をWCF開始1ヶ月時に行った。Pt項目のバラツキから情報の共有化が良好でないことが推測され、現状の情報交換方法では限界とも考えられる。また、R・M項目に共通性がないことについては、リハ科だけの要因としてWCFへのとまどいや経験年数、病棟頼りの情報収集等が考えられる。また、看護師とリハ科の設備不足への共通性から患者サービスという視点は同じであること、看護師の業務に対するポジティブな姿勢から、リハ科の積極的な発言やWCFについての探求・応用が、今後の患者の情報共有化に重要であり、各職種間の連携を深めることになると考えられる。<BR>【まとめ】
著者
武田 直人 久保 雅昭 渡辺 裕之
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1124-C4P1124, 2010

【はじめに】<BR> 平成21年8月24日~26日の3日間にわたり、三県省道スポーツ交流事業(以下、三県省道)によるサッカー交流試合が開催された。平成16年度から実施しているこの事業は、3地域の青少年に国際交流の機会を提供し、相互理解を深めるとともに、国際性豊かな青少年の人材育成を図ることを目的に実施している。我々は大会前の練習試合と合わせた全4試合のメディカルサポート(以下、サポート)を行った。今回、三県省道での活動内容とサポート結果を検討したので報告する。<BR><BR>【方法】<BR> 本サポート前に参加した理学療法士は2名であり、ともに同年8月に開催された第40回関東中学校サッカー大会のサポートに参加していた。その経験をもとに再学習を行い、事前準備を行った。大会期間中は理学療法士2名で、全日程で会場に1名のスタッフを配置した。今回のサポートではチームから要請があった場合に対応することを原則として、スタッフはベンチにて待機し、試合前のテーピング、水分補給のインフォメーション、試合中の救護活動(応急処置、救命処置など)、アフターケアを中心に活動を行った。<BR><BR>【対象】<BR> 神奈川県内において17齢以下で選抜された男性選手17名を対象とし、サポート前に本研究の目的、個人情報の使用方法を口頭にて説明し、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 大会期間中の全対応件数は25件であり、各内訳は以下のとおりである。対応時期は、試合前12件、試合中9件、試合後4件であった。試合中に熱中症が2件発生し、障害部位は、足関節7件、下腿部5件、大腿部2件、殿部3件、腰部3件、肘関節1件、手関節1件であった。障害部位の比率としては、足関節約29.2%、下腿部約20.8%、大腿部約8.3%、殿部約12.5%、腰部約12.5%、肘関節約4.2%、手関節約4.2%であった。また、熱中症は全体の約8.3%であった。対応内容は、テーピング7件、アイシング12件、ストレッチ5件、筋力増強訓練1件、止血処置1件、飲水指導1件、問診1件であった。<BR><BR>【考察】<BR> 障害部位の比率としては足関節・下腿部が多く、また大腿部・臀部を含めると約70%の障害が下肢に発生している結果となり、サッカーの競技特性を示す結果となった。対応としてはアイシングとテーピングが大部分を占めたため、RICE処置やテーピングの技術向上が重要であると思われた。また、各所属高校が選手権大会前の合宿や強化トレーニングを開始した時期と今回の三県省道の日程が重なっていたため、選手個人の疲労も蓄積していたと思われる。そのことからも、試合前の水分補給のインフォメーションやアフターケアとして適切なアイシングやストレッチ指導の重要性が連日の試合でのパフォーマンス低下の予防となり、障害予防にもつながるのではないかと考えられた。また、気温が30°C近くであったことなどから大会側へ飲水タイムを設けるよう働きかけたり、障害予防の観点から水分補給の方法の資料を配布したりするなど、対応内容の工夫が必要であると考えられた。
著者
江部 晃史 久保 雅昭 山下 茂雄 鈴木 謙介 福島 隆史 河﨑 賢三 山口 智広
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0939, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 投球動作はコッキング期から加速期にかけて外反ストレスが生じ内側に牽引ストレス、外側には圧迫力が加わる。この外反ストレスは投球肘障害を招く一要因である。Parkらは尺側手根屈筋と浅指屈筋を合わせた筋活動時に外反角度が有意に減少すると報告しており、外反ストレスを制御する働きがあるといわれている。我々は前回、投球時に疼痛を有する選手を対象に手指対立筋の筋機能における客観的評価として手指対立筋筋力を数値化し検討を行った。結果より有症状選手における手指対立筋の筋機能低下が示唆された。そのことから手根骨の不安定性による尺側手根屈筋の機能低下が考えられた。宮野らは握力発揮時には橈側手根伸筋が手関節固定、母指球筋が母指の固定に働き浅指屈筋が握力発揮に主として働いていると考察している。しかしながら、投球肘障害におけるピンチ力と握力の関連性についての報告は少ない。そこで今回我々は高校野球選手におけるピンチ力と握力の傾向を調査した。投球時に肘疼痛を有する選手においてピンチ力との関連性に若干の知見を得たので報告する。【方法】 2011年3月から10月に当院スポーツ整形外科を受診した選手で、初診時筋力測定が可能であった選手のうち高校生のデータを抽出し対象とした。そのうち、投球時に肘疼痛が出現した選手を疼痛群19名(15歳~18歳、平均年齢:15.5歳)、比較対象として既往、来院時に肘疼痛を有さない選手を非疼痛群18名(全例年齢15歳)とした。ピンチ測定はピンチ計を用いて、投球側、非投球側を計測した。対象となる対立手指は、環指/母指、小指/母指とした。測定条件として、立位肘関節伸展位(体側に上肢を下垂させた状態)にて行った。握力測定は握力計を用いて、ピンチ測定と同様の条件で測定した。得られた筋力値を投球側と非投球側の比較と疼痛群と非疼痛群で比較した。尚、統計学的検討にはT検定を用い有意水準は5%とした。【説明と同意】 対象選手が未成年のため保護者に研究の趣旨を説明し同意を得た。【結果】 ピンチ力では疼痛群の小指/母指は投球側0.96kg、非投球側1.15kgであり投球側が有意に低値であった。環指/母指は投球側2.76kg、非投球側2.48kgであり有意差を認めなかった。握力では疼痛群において投球側41.89kg、非投球側44.05kgであり、有意差を認めなかった。非疼痛群ではピンチ力、握力ともに投球側-非投球側間で有意差を認めなかった。また、疼痛群-非疼痛群間での比較についても有意差は認めなかった。【考察】 今回の結果より有症状選手において投球側小指の筋力低下が認められた。我々の先行研究と同様の結果が得られた。宮下らは小指球筋群の収縮不全は手関節尺側の機能低下を招き、結果として尺側手根屈筋の収縮力を低下させていると報告している。また、握力においては疼痛群、非疼痛群ともに有意な差を認めなかった。河野らは競技特性について検討しており野球選手は握力に左右差がないと報告している。今回、有症状選手でも同様の結果を得られ浅指屈筋群を含む前腕筋群の筋機能が保たれていることが示唆された。Parkらは浅指屈筋単独の筋活動では外反角度は減少傾向にあるが有意差はなかったと報告している。よって有症状選手は前腕筋群の機能は保たれているが、手内在筋の筋機能が低下したことにより投球時の外反ストレスによって肘疼痛を有したと考えられた。このことから高校野球選手においては握力測定のみならずピンチ測定を行うことが投球肘障害の機能評価として重要であり、今後の課題として各年代に対して傾向を調査し有効性を明確にしていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究より高校野球選手で投球時に肘疼痛を有する選手において投球側小指対立筋の筋力低下を認めた。一方、握力では有意差を認めなかった為、投球肘障害の機能評価を行う上では握力測定のみならずピンチ測定を行うことが重要であると考えられる。