著者
田代 綾美 宮本 恵美 古閑 公治 久保 高明 大塚 裕一 船越 和美
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.310-320, 2018-12-15

近年,超高齢化に伴い,誤嚥性肺炎に罹患する患者は年々増加している.一般的な喉頭挙上にかかわる筋力強化訓練は実施上の配慮の必要な場合が多い.本研究では,簡易に行える構音訓練が喉頭挙上訓練として有効であるか,その効果について表面筋電計を用いて検討した.「カ」は「タ」や「ラ」と比べて舌骨上筋群の筋活動が有意に高く(p<0.01),嚥下おでこ体操と比較して舌骨上筋群の筋活動が同程度であることが明らかとなった.さらに,1か月後の訓練効果を比較した際,「カ」連続構音群では,水の嚥下で単位時間当たりの筋活動量の増加(p<0.05),および筋活動持続時間の短縮が認められた(p<0.05).これは,舌骨上筋群は主に「速筋」により構成されていると推察されることから,「等張性運動」に相当する「カ」連続構音群で訓練効果がみられたのではないかと考えた.このことから,「カ」連続構音訓練は喉頭挙上訓練として有効であることが示唆された.
著者
安田 大典 久保 高明 益満 美寿 岩下 佳弘 渡邊 智 石澤 太市 綱川 光男 谷野 伸吾 飯山 準一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.341-352, 2015-10-27 (Released:2015-11-12)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:本研究の目的は、大学生の入浴スタイルの違いが、睡眠と作業効率に及ぼす影響を検討すること。さらに、保温増強が作業効率に及ぼす影響を検討することである。方法:対象は、普段シャワー浴のみの健常学生18名とした(19.6±0.7歳、平均年齢±SD)。41°Cの浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(保温無群:BB)と、入浴後に保温シートと寝袋にて身体を被覆し30分間保温する群(保温群:BBW)について、各々を2週間で実施するcrossover研究を行った。なおWash-out(シャワー浴)期間は2週間とし、平成24年11月〜12月の6週間実施した。測定した項目は、起床時の起床時睡眠感(Oguri-Shirakawa-Azumi sleep inventory MA version; OSA-MA)、主観的入浴効果(Visual Analog Scale; VAS)、作業効率検査(パデューペグボードのアセンブリー課題)の3項目について測定を実施した。起床時の主観的評価は6週間毎朝記載してもらった。作業効率検査は2週間ごとに4回行った。結果:OSA-MAのBBおよびBBWは、シャワー浴と比較して有意差はなかった。VASの結果は、BBおよびBBWは、シャワー浴と比較して、熟睡感、身体疲労感、身体の軽快感が有意に高値を示した。パデューペグボードテストは、BBおよびBBWはシャワー浴に比べて有意に高値を示した。考察:シャワー浴からバスタブ浴へ入浴スタイルを変えることで睡眠の質が良好となり疲労回復がなされ、その結果、パデューペグボードの作業効率が向上したと考えられる。
著者
久保 高明 安田 大典 渡邊 智 石澤 太市 綱川 光男 谷野 伸吾 飯山 準一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.124-134, 2017-10-31 (Released:2017-12-21)
参考文献数
49

背景:頻回のバスタブ浴を行う日本の中高年者は,睡眠の質やメンタル面が良好であるとの諸家の報告がある.  目的:本研究の目的は,大学生の入浴スタイル(シャワー浴,バスタブ浴,無機塩類含有炭酸ガス入浴剤添加浴)の違いが,睡眠と気分・感情に及ぼす影響を検討することである.  対象と方法:普段シャワー浴のみの健常学生20名(平均年齢20.3±2.1歳)を対象とし,41℃の浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(BB)と,前述の浴槽に無機塩類含有炭酸ガス入浴剤常用量30gを添加し入浴する群(BBK)について,各々を2週間で実施するcrossover研究を行った.なおwashout期間を2週間とし,研究開始の1週間前からのアンケート調査を含めて,計7週間の研究を2015年10~12月に実施した.計測項目は睡眠に関するものはOSA睡眠感調査票MA版(OSA-MA)および1ch式ポータブル睡眠脳波計(EEG)で,OSA-MAは毎朝記載させ,EEGは毎就寝中に計測した.気分・感情に関するものは日本語版Profile of Mood States短縮版(POMS),うつ病自己評価尺度(SDS),やる気スコア(AS)で2週間ごとの計4回記載させた.  結果:睡眠について,OSA-MAの「起床時眠気」と「疲労回復」はシャワー浴に比べBBKで有意差を認めた.EEGについては有意差を認めなかった.気分・感情について,POMSのT得点は,シャワー浴に比べBBで活気(V)が有意に値が高かった.そしてシャワー浴に比べBBKで活気(V)が有意に値が高く,疲労(F)で有意に値が低かった.POMSのtotal mood disturbance (TMD)スコアは,シャワー浴に比べ,BBおよびBBKで有意に値が低かった.SDSスコアはシャワー浴に比べBBKで有意に値が低かった.ASはシャワー浴に比べBBおよびBBKで有意に値が低かった.  考察:睡眠については,BBKでは炭酸ガスによる血管拡張作用や無機塩類による浴後保温持続効果,そして香りや色調による疲労軽減・活力低下予防効果がOSA-MAの主観的評価に影響を及ぼしたと考えた.気分・感情については,睡眠脳波では有意な差を認めなかったため,睡眠とは独立した因子,すなわち温熱暴露習慣が気分や感情に関する中枢神経機能に影響を及ぼしたものと考えた.  結論:シャワー浴習慣からバスタブ浴習慣に行動変容することは,健常学生のメンタルヘルスを向上させる.