著者
安田 大典 久保 高明 益満 美寿 岩下 佳弘 渡邊 智 石澤 太市 綱川 光男 谷野 伸吾 飯山 準一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.341-352, 2015-10-27 (Released:2015-11-12)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:本研究の目的は、大学生の入浴スタイルの違いが、睡眠と作業効率に及ぼす影響を検討すること。さらに、保温増強が作業効率に及ぼす影響を検討することである。方法:対象は、普段シャワー浴のみの健常学生18名とした(19.6±0.7歳、平均年齢±SD)。41°Cの浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(保温無群:BB)と、入浴後に保温シートと寝袋にて身体を被覆し30分間保温する群(保温群:BBW)について、各々を2週間で実施するcrossover研究を行った。なおWash-out(シャワー浴)期間は2週間とし、平成24年11月〜12月の6週間実施した。測定した項目は、起床時の起床時睡眠感(Oguri-Shirakawa-Azumi sleep inventory MA version; OSA-MA)、主観的入浴効果(Visual Analog Scale; VAS)、作業効率検査(パデューペグボードのアセンブリー課題)の3項目について測定を実施した。起床時の主観的評価は6週間毎朝記載してもらった。作業効率検査は2週間ごとに4回行った。結果:OSA-MAのBBおよびBBWは、シャワー浴と比較して有意差はなかった。VASの結果は、BBおよびBBWは、シャワー浴と比較して、熟睡感、身体疲労感、身体の軽快感が有意に高値を示した。パデューペグボードテストは、BBおよびBBWはシャワー浴に比べて有意に高値を示した。考察:シャワー浴からバスタブ浴へ入浴スタイルを変えることで睡眠の質が良好となり疲労回復がなされ、その結果、パデューペグボードの作業効率が向上したと考えられる。
著者
久保 高明 安田 大典 渡邊 智 石澤 太市 綱川 光男 谷野 伸吾 飯山 準一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.124-134, 2017-10-31 (Released:2017-12-21)
参考文献数
49

背景:頻回のバスタブ浴を行う日本の中高年者は,睡眠の質やメンタル面が良好であるとの諸家の報告がある.  目的:本研究の目的は,大学生の入浴スタイル(シャワー浴,バスタブ浴,無機塩類含有炭酸ガス入浴剤添加浴)の違いが,睡眠と気分・感情に及ぼす影響を検討することである.  対象と方法:普段シャワー浴のみの健常学生20名(平均年齢20.3±2.1歳)を対象とし,41℃の浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(BB)と,前述の浴槽に無機塩類含有炭酸ガス入浴剤常用量30gを添加し入浴する群(BBK)について,各々を2週間で実施するcrossover研究を行った.なおwashout期間を2週間とし,研究開始の1週間前からのアンケート調査を含めて,計7週間の研究を2015年10~12月に実施した.計測項目は睡眠に関するものはOSA睡眠感調査票MA版(OSA-MA)および1ch式ポータブル睡眠脳波計(EEG)で,OSA-MAは毎朝記載させ,EEGは毎就寝中に計測した.気分・感情に関するものは日本語版Profile of Mood States短縮版(POMS),うつ病自己評価尺度(SDS),やる気スコア(AS)で2週間ごとの計4回記載させた.  結果:睡眠について,OSA-MAの「起床時眠気」と「疲労回復」はシャワー浴に比べBBKで有意差を認めた.EEGについては有意差を認めなかった.気分・感情について,POMSのT得点は,シャワー浴に比べBBで活気(V)が有意に値が高かった.そしてシャワー浴に比べBBKで活気(V)が有意に値が高く,疲労(F)で有意に値が低かった.POMSのtotal mood disturbance (TMD)スコアは,シャワー浴に比べ,BBおよびBBKで有意に値が低かった.SDSスコアはシャワー浴に比べBBKで有意に値が低かった.ASはシャワー浴に比べBBおよびBBKで有意に値が低かった.  考察:睡眠については,BBKでは炭酸ガスによる血管拡張作用や無機塩類による浴後保温持続効果,そして香りや色調による疲労軽減・活力低下予防効果がOSA-MAの主観的評価に影響を及ぼしたと考えた.気分・感情については,睡眠脳波では有意な差を認めなかったため,睡眠とは独立した因子,すなわち温熱暴露習慣が気分や感情に関する中枢神経機能に影響を及ぼしたものと考えた.  結論:シャワー浴習慣からバスタブ浴習慣に行動変容することは,健常学生のメンタルヘルスを向上させる.
著者
飯山 準一 川平 和美
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.173-179, 2008 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7

Dry skin causes many skin disorders such as dry dermatitis. It requires a lot of time and medication to treat patients with skin disorder that cover a vast skin area. Although glycerin is a component of many skin care creams and cosmetics, there is no report regarding the effects of glycerin alone as a bathwater additive. We investigated the effects of bathing in warm water with added glycerin on skin conditions and the prevention of skin disorders in patients with severe motor and intellectual disabilities.Two studies were conducted to analyze the effects of a glycerin+warm water bath (GWWB). In study 1, the skin conditions in a total of 18 subjects were compared between the glycerin group (G) and nonglycerin group (NG). In the G group, skin moisture, skin pH, and skin sebum were measured with a skin analyzer noninvasively at the forehead and precordial and lateral forearm after GWWB for approximately 6 months. Subjects in the 2 groups had bathed 2 times per week and were immersed in warm water at 40 to 41°C for 2 to 3min. In the G group, 250ml glycerin was added in a 14001 bathtub. In study 2, a total of 78 subjects were examined retrospectively; their medical records after GWWB for approximately 6 months were investigated to gain information regarding cutaneous diseases (number of diagnosis, drugs, areas affected with cutaneous diseases, and days of treatment) in order to compare the G and NG groups.Skin moisture levels at forearm improved significantly (p<0.05) in the G group. The average skin moisture level in other areas was higher in the G group than in the NG group but without sig nificance. Skin sebum levels at the forehead improved significantly (p<0.05) in the G group. The number of diagnosis, drugs, and areas with cutaneous disease were significantly lower in the G group than in the NG group. Further, the average number of treatment days was lower in case of the G group than in case of the NG group but without significance.The moisturizing effects are produced due to a thin film formed by glycerin after GWWB, especially in an area where there is friction between the skin and clothes. Skin sebum is also maintained due to glycerin-film formation.It is possible that maintenance of skin moisture protects the skin from cutaneous diseases due to xerosis. In conclusion, these results indicate that GWWB maintains skin moisture and sebum and prevents skin disorders.
著者
岩下 佳弘 渡 孝輔 前田 曙 杉本 和樹 山田 しょうこ 飯山 準一
出版者
The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2345, (Released:2021-10-14)
参考文献数
40

温熱治療によって増加する熱ショックタンパク質(heat shock protein, Hsp)は,アポトーシスを阻害し,尿細管の生存能力を維持し,腎保護に作用する.その一方で,近年,嚢胞性腎疾患においてHspが治療ターゲットとなり得ることが示された.そこで,我々は,多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease, ADPKD)モデル動物を用いて,サウナ介入を反復させたときのADPKDへの影響について調査した.我々は,DBA/2FG-pcy(pcy)マウスを用い,サウナ介入を実施し,脱水予防のために4%スクロース水を摂水させた(TS)群,4%スクロース水のみを摂水させた(SW)群,および,サウナ介入を行わないコントロール群の3群(各n = 3)で実験を行った.熱負荷には遠赤外線サウナ装置を用い,マウス直腸温を約39°Cに上昇させ30分程度維持した.1週間に2回のサウナ介入を4週間実施した.  実験終了時のクレアチニンやBUN値に有意差は認められなかったが,TS群は他よりもわずかに高い値を示した.しかしながら,TS群とSW群の嚢胞の成長はcontrolに比して軽減しており,Hsp90の発現は有意な減少を示した(p < 0.01 or p < 0.001, vs. control).またTS群では,嚢胞形成や増殖に関与するErkの有意な減少が認められた(p < 0.05, vs. control).Hsp27の発現およびリン酸化はTS群で増加し,caspase-3の発現は減少傾向であったが,活性化に差は認められなかった.  4週間のサウナ介入は,一時的な脱水とそれに伴う腎機能低下のリスクや熱負荷に伴うHsp27の発現増加による嚢胞形成や増殖を刺激するリスクを示唆するものであった.その一方で,熱負荷直後に適切な水分多量摂取を実施すれば,脱水予防と同時に嚢胞成長の抑制が期待できると考えられた.

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著者
前田眞治 上月正博 飯山準一執筆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
2014