著者
森 清文 久保寺 秀夫 西 裕之 古江 広治
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.299-302, 2015

種子島は本土最南端佐多岬から大隅海峡を隔てた南東40kmの沖合に位置し,南北58km,東西5~12kmと細長い島である。標高は最も高いところでも282mしかなく,総面積は445km2で農業が可能な平地が多く分布している。北側から西之表市,中種子町,南種子町の1市2町からなり人口は約32,000人,農業ではサトウキビ,でん粉原料用サツマイモ,早期水稲が主で,近年では種子島で選抜育成された青果用サツマイモの「安納紅,安納こがね」など付加価値の高い土地利用型畑作物の生産が盛んである。種子島の農耕地面積は6,980haで,そのほとんど(6,347ha)が黒ボク土である(鹿児島県,1978)。黒ボク土は強酸性でアルミニウムの過剰障害など農業生産上問題の多い非アロフェン質黒ボク土と比較的酸性度の弱いアロフェン質黒ボク土に分類される。松山ら(1994)は,九州南部地域について,阿蘇山と流紋岩~安山岩質の霧島山,桜島,池田湖,喜界カルデラのテフラが厚く堆積し,年降水量は1,200~2,800mm,P-E指数は120~200であるとしている。
著者
久保寺 秀夫
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1091-1096, 2008-10

マージ土壌は南西諸島に分布する土壌で、堆積岩や礫層を母材とする酸性の赤色土や黄色土の国頭マージと、石灰岩上で生成する弱酸性〜アルカリ性の暗赤色土の島尻マージからなる。マージ土壌は沖縄本島では全農耕地の72%を占める重要な土壌だが、全般的に物理性が不良で、保水性の低さや下層土の緻密性(島尻マージ)、排水不良や受食性(国頭マージ)などが営農上問題となる。その問題の一つに、土壌が乾燥した際に強く硬化して砕けにくい土塊となり、耕耘砕土の障害となることがあげられる。このように物理性が不良な土壌の改良方法として、一般に、堆肥など有機物資材の施用が有効な方法とされる。有機物資材の施用は土壌の団粒化を促進し、膨軟化、通気性・保水性・排水性の向上を促す作用があり、その効果は多くの試験により実証されてきた。一方、有機物の施用により、土壌の過乾、過湿、排水不良など物理性の悪化が生じる例も報告されている。物理性がもともと良くないマージ土壌に有機物を施用する場合、物理性のさらなる悪化が生じないよう、施用が土壌の物理性に及ぼす影響を詳細に把握し、適正な施用を行うべきである。本稿では、有機物資材の施用がマージ土壌の乾燥時の硬化に及ぼす影響について、久保寺(2007)を元に紹介する。
著者
小川 泰浩 清水 晃 久保寺 秀夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.329-336, 2006-10-01
被引用文献数
2

1995年に雲仙普賢岳噴火活動が終息し数年が経過した時点において,降下火山灰が堆積した林地と火砕流堆積地における火山噴出物表層の透水性変化過程を明らかにするため,表層の飽和透水試験と土壌薄片による表層の土壌微細形態を解析した。リターが地表に堆積したヒノキ林地と広葉樹林地の火山灰層では粗孔隙が分布し,透水性はリターの堆積によって向上していた。ヒノキ林地の中でもリターが地表にみられない場所の火山灰層には薄層がみられ,孔隙率と飽和透水係数はヒノキリターが堆積した火山灰層に比べ低い値を示した。この薄層は,表面流で移動した火山灰が堆積して形成された堆積クラストであると考えられた。火砕流堆積地では細粒火山灰が流出した結果,孔隙特性が良好となって表層の透水性が上昇したと推察された。噴火活動終息後数年が経過することにより,林地と火砕流堆積地における表層の透水性には違いがみられ,土壌微細形態解析によってこの違いはリターの堆積や細粒火山灰の流出に伴う表層の堆積構造の変化により引き起こされていると推察された。