著者
周琵琶湖花崗岩団体研究グループ 橋本 勘 久田 義之 沓掛 俊夫 中野 聰志 西橋 秀海 西村 貞治 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬 吉田 源市
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.380-392, 2000
参考文献数
22
被引用文献数
6

田上花こう岩体(東西方向約20km×南北方向約8km)は,後期白亜紀末の"琵琶湖コールドロン"形成に関わった環状花こう岩体のうちで最も南に位置する.田上花こう岩体は,粒度と組織から4つの岩相に区分される(中〜粗粒黒雲母花こう岩,中〜粗粒斑状黒雲母花こう岩,細〜中粒斑状黒雲母花こう岩,細粒黒雲母花こう岩).田上花こう岩体は,丹波帯のジュラ紀付加コンプレックスと新期領家花こう岩と考えられる観音寺花こう閃緑岩に貫入している.観音寺花こう閃緑岩を含む岩体の北西部に貫入している花こう斑岩岩脈は,雁行状配列を示している.同じく岩体の北西部では,湖東流紋岩類に属すると考えられる珪長質火砕岩を捕獲または伴う石英斑岩岩脈が産する.これらの岩脈群は,"琵琶湖コールドロン"形成時の環状割れ目を充填しているものと考えられる.主要・微量元素全岩化学組成上,観音寺花こう閃緑岩は田上花こう岩とは異なる特徴を持つ.岩脈類も,微量元素組成の点で田上花こう岩類とは異なり,特に石英斑岩は湖東流紋岩類の秦荘石英斑岩に似ている.田上花こう岩は,琵琶湖南部周辺の花こう岩類と密接な成因的な関係を有する.