著者
中野 聰志 岡村 聡 赤井 純治
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.221005, 2023 (Released:2023-01-31)
参考文献数
54
被引用文献数
2

The usage of “potassium feldspar” and “alkali feldspar” has been confused in earth sciences for a long time. The term “alkali feldspar” is for the solid solution series between the two components of KAlSi3O8 (potassium feldspar) and NaAlSi3O8 (sodium feldspar), including more or less CaAl2Si2O8 (lime feldspar) as the third component. The term “potassium feldspar” is in practice for KAlSi3O8 as an end member of the feldspar solid solution. At present, the scientific or appropriate usage of the two terms without confusion is needed in earth sciences. This review outlines the history of hitherto confused usage of the two terms, and interprets how important the appropriate usage of the two terms is in earth sciences, especially in mineralogical and petrological sciences. We recommend that perthite should be termed not “potassium feldspar” but alkali feldspar, and that the term potassium feldspar should be applied to alkali feldspar at least with KAlSi3O8 content ≥ 90 mol%.
著者
小川 英晃 牧野 州明 石橋 隆 中野 聰志
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.108, 2008 (Released:2009-04-07)

苗木花崗岩ペグマタイトに産出する玉滴石は紫外線照射下で緑色蛍光を発することがある.本研究ではこの蛍光原因・蛍光特性を明らかにするために,産地の異なる3種の玉滴石についてWDX,FT-IR,蛍光測定を行った.ひとつは苗木産の玉滴石,ひとつは滋賀産の玉滴石,最後のひとつは佐賀産の玉滴石である. 化学組成分析によると苗木産の玉滴石はUを含むのに対して,滋賀産及び佐賀産の玉滴石はUを含まず,蛍光も発しない.また,苗木産玉滴石の薄片試料における蛍光分布写真とU分布はよく一致している.そして蛍光強度とU含有量も整合性が認められる. 苗木産玉滴石の蛍光強度は400℃以上で加熱することにより小さくなる.そして,加熱温度が高くなるにつれて蛍光強度は小さくなる傾向が認められる.これは玉滴石中の水が蛍光に影響を及ぼしていることを意味する. 以上のことから苗木産玉滴石の蛍光にはU,H2OまたはOHの両者が原因だと推定できる.
著者
河野 俊夫 中野 聰志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.472-475, 2011-08-15 (Released:2011-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Many transparent calcite crystals exhibit striking fluorescence together with own birefringence. On the basis of these two characteristics (fluorescence and birefringence), suitable calcite crystals can be utilized to visualize the splitting of both monochromatic and polarized light emitted from a laser pointer, as the light passes through a crystal. This new device should serve as a learning tool in introductory microscopy courses or whenever learning the principles of polarizing microscopy.
著者
中野 聰志 牧野 州明 吉田 泉 真庭 香奈恵 澤田 一彦 坂下 風子 河野 俊夫
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.759-773, 2019-10-15 (Released:2020-01-10)
参考文献数
46
被引用文献数
3 4

系統的な色変化を示す花崗岩中赤色アルカリ長石4種について,国際的色表示パラメーターであるL*,a*,b*を,パソコンとスキャナーによる新しい簡便な方法で求めた.得られたa*-b*図上での4試料を通しての色変化に対する回帰直線は、赤鉄鉱含有量支配の色変化に対比できる.反射顕微鏡とEMPA観察により,微細赤色含鉄粒子とともに白色要因であるマイクロポアの存在を確認した.ラマンスペクトル解析により,これらの赤色粒子は赤鉄鉱と一部マグへマイトであることが判明した.反射電子線像とその画像解析により,微細鉄酸化鉱物粒子とマイクロポアについての分布パターンとそれらの含有割合(面積比)を見積もった.これらのデータは,今回のアルカリ長石色変化が,主として酸化鉄鉱物が寄与する赤色要因とマイクロポアのサイズ分布と数密度が寄与する白色要因の両方に支配されていることを示している.
著者
貴治 康夫 沓掛 俊夫 中野 聰志 西村 貞浩 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.53-69, 2008-02-15 (Released:2009-02-21)
参考文献数
67
被引用文献数
13 7

東西6 km・南北7 km規模の比叡花崗岩体は,琵琶湖周辺の白亜紀末山陽帯花崗岩体のうちで,最も西寄りに位置する.これまで琵琶湖コールドロン形成に関係した琵琶湖南部環状花崗岩体の西端部の岩体と考えられてきた.比叡花崗岩体は,中心相と考えられる中粒斑状黒雲母花崗岩とそれを取り囲むように分布している中粒等粒状黒雲母花崗岩からなる.両者は漸移関係にあり,活動時期は100 Ma頃と推定される.比叡花崗岩は,年代値,岩相,化学的性質において琵琶湖南部の他の花崗岩類とは異なるので,およそ70 Maの琵琶湖コールドロン形成に直接関与した環状岩体を構成するものとしては考えられない.本岩体中には,岩体西縁部で南北方向に貫入している花崗斑岩脈と花崗閃緑斑岩脈のほかに,優白質微花崗岩,流紋岩,玄武岩,ランプロファイアの小岩脈が岩体全体に点在している.そのうちの花崗斑岩と花崗閃緑斑岩の岩脈は,琵琶湖コールドロンの外縁を画する環状岩脈の一部であると考えられる.
著者
多賀 優 河野 俊夫 中野 聰志
出版者
日本地学教育学会
雑誌
地学教育 (ISSN:00093831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-12, 2015-05-31 (Released:2016-07-20)
参考文献数
30
被引用文献数
2

紫色レーザーポインターからの光線(405 nm)を照射することによって蛍光を発するコナラの枝を浸した水(コナラ水と呼ぶ)やウランガラスプリズムをそれぞれ方解石と組み合わせて方解石の複屈折現象を教材化した.本教材では,方解石への入射光路,方解石中の光路,方解石からの出射光路のすべてを紫色レーザー光励起による蛍光の輝線として連続して観察できる.開発したコナラ水やウランガラスプリズムを用いて,高校で光の性質(直進,反射,屈折)を示す演示実験を行った.その結果,光の性質についての認識が深まった.
著者
中野 聰志
出版者
滋賀大学教育学部
雑誌
滋賀大学教育学部紀要 自然科学 (ISSN:13429272)
巻号頁・発行日
no.49, pp.9-17, 1999

The textural and compositional variations of alkali feldspar in a trachyte from St.Angelo, Ischia island, Italy were examined preliminarily with an X-ray microanalyser. Thefeldspar phenocrysts show complicated textures like flow or ripple, consisting of two alkali feldspars (Or13.5 Ab79 An7.5~Or69 Ab31 An0.3). Their textures are similar to those of the alkali feldspar in a olivine-hedenbergite trachyte from Oki-Dogo island, Japan, although the chemical compostions of the both alkali feldspars are somewhat different in An content. There has been no description on the chemical variation in each individual crystal nor on the detailed textural features of the alkali feldspar.
著者
石原 舜三 中野 聰志 寺島 滋
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3-4, pp.93-98, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
9 7

滋賀県南部,田上花崗岩体の代表的試料6 個について主化学成分と微量成分とを明らかにし,特に希土類元素と放射性元素の持つ意味について考察した.田上花崗岩は珪長質 (73.3 ~76.7% SiO2; 8.0 ~8.9% Na2O+K2O) であり,Rb/Sr比は高くマグマ分化が進んでいる.アルミナ過剰度は1.05 前後であり,I タイプに入る.粗粒な中心相はF, Liなどに富み,細粒周縁相はこれら揮発性成分に乏しい.田上花崗岩は全体的に希土類元素と放射性元素に富み,特に重希土類元素に卓越し,フラットな希土類パターンを示す.その原因は,原岩が還元的な珪長質物質であり,かつマグマ分化作用が進んだことに求められる.雲母粘土化変質作用の熱源は花崗岩中の放射壊変熱であった可能性が指摘された.
著者
井内 美郎 衣笠 善博 公文 富士夫 安松 貞夫 中野 聰志 志木 常正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.61-70, 1993-03

琵琶湖の西岸付近の湖底堆積物には肉眼で確認される砂層以外にもシルトを主とする細粒の粒子からなる湖底地滑りを起源とする堆積物が多くはさまれている。これらのタービダイトの堆積年代を重量堆積速度を基に推定した結果, 歴史地震と対応する事が明らかになった。湖底地滑りを起こした地震の震度の下限値は, 琵琶湖においては気象庁震度階のIVとVのそれぞれの下限値の中間である。この震度を加速度表示した場合, 約44galに相当する。これはMM震度階のVIとVIIの境界の加速度に相当する。
著者
周琵琶湖花崗岩団体研究グループ 橋本 勘 久田 義之 沓掛 俊夫 中野 聰志 西橋 秀海 西村 貞治 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬 吉田 源市
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.380-392, 2000
参考文献数
22
被引用文献数
6

田上花こう岩体(東西方向約20km×南北方向約8km)は,後期白亜紀末の"琵琶湖コールドロン"形成に関わった環状花こう岩体のうちで最も南に位置する.田上花こう岩体は,粒度と組織から4つの岩相に区分される(中〜粗粒黒雲母花こう岩,中〜粗粒斑状黒雲母花こう岩,細〜中粒斑状黒雲母花こう岩,細粒黒雲母花こう岩).田上花こう岩体は,丹波帯のジュラ紀付加コンプレックスと新期領家花こう岩と考えられる観音寺花こう閃緑岩に貫入している.観音寺花こう閃緑岩を含む岩体の北西部に貫入している花こう斑岩岩脈は,雁行状配列を示している.同じく岩体の北西部では,湖東流紋岩類に属すると考えられる珪長質火砕岩を捕獲または伴う石英斑岩岩脈が産する.これらの岩脈群は,"琵琶湖コールドロン"形成時の環状割れ目を充填しているものと考えられる.主要・微量元素全岩化学組成上,観音寺花こう閃緑岩は田上花こう岩とは異なる特徴を持つ.岩脈類も,微量元素組成の点で田上花こう岩類とは異なり,特に石英斑岩は湖東流紋岩類の秦荘石英斑岩に似ている.田上花こう岩は,琵琶湖南部周辺の花こう岩類と密接な成因的な関係を有する.
著者
中野 聰志 大橋 義也 石原 舜三 河野 俊夫
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1-2, pp.25-49, 2013-04-22 (Released:2013-05-29)
参考文献数
71
被引用文献数
1

琵琶湖周辺の優白質花崗岩体中には珍しい細粒暗色包有岩 (MME) の産出を,琵琶湖南方の田上花崗岩体を構成する中−粗粒黒雲母花崗岩と中粒斑状黒雲母花崗岩中で確認した.それらの大きさは1 cm程度から最大20 cm強であり,形はほぼ球状から楕円状であるがやや細長いものもある.有色鉱物として黒雲母のみ含む (最大約27 %).本地域のMMEは,アプライト・ペグマタイトとしばしば共存している.中粒斑状黒雲母花崗岩中のMME について,全岩化学分析 (主成分元素,REEを含む微量元素) を行うとともに,鉱物集合状態と鉱物組織の観察ならびに鉱物化学組成 (長石類,黒雲母,イルメナイト) の解析を行った.これらの結果は,産状や組織等のデータとともに,本MMEがよく知られているマグマ混合による産物であるとの考えではなくて,中粒斑状黒雲母花崗岩マグマからの早期晶出による産物であるとの考えにより整合的であるように思われる.MMEとアプライト・ペグマタイトとの共存は,MMEの成因における揮発性成分の重要な役割を示唆する.