著者
中野 聰志 牧野 州明 吉田 泉 真庭 香奈恵 澤田 一彦 坂下 風子 河野 俊夫
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.759-773, 2019-10-15 (Released:2020-01-10)
参考文献数
46
被引用文献数
3 4

系統的な色変化を示す花崗岩中赤色アルカリ長石4種について,国際的色表示パラメーターであるL*,a*,b*を,パソコンとスキャナーによる新しい簡便な方法で求めた.得られたa*-b*図上での4試料を通しての色変化に対する回帰直線は、赤鉄鉱含有量支配の色変化に対比できる.反射顕微鏡とEMPA観察により,微細赤色含鉄粒子とともに白色要因であるマイクロポアの存在を確認した.ラマンスペクトル解析により,これらの赤色粒子は赤鉄鉱と一部マグへマイトであることが判明した.反射電子線像とその画像解析により,微細鉄酸化鉱物粒子とマイクロポアについての分布パターンとそれらの含有割合(面積比)を見積もった.これらのデータは,今回のアルカリ長石色変化が,主として酸化鉄鉱物が寄与する赤色要因とマイクロポアのサイズ分布と数密度が寄与する白色要因の両方に支配されていることを示している.
著者
貴治 康夫 沓掛 俊夫 中野 聰志 西村 貞浩 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.53-69, 2008-02-15 (Released:2009-02-21)
参考文献数
67
被引用文献数
13 7

東西6 km・南北7 km規模の比叡花崗岩体は,琵琶湖周辺の白亜紀末山陽帯花崗岩体のうちで,最も西寄りに位置する.これまで琵琶湖コールドロン形成に関係した琵琶湖南部環状花崗岩体の西端部の岩体と考えられてきた.比叡花崗岩体は,中心相と考えられる中粒斑状黒雲母花崗岩とそれを取り囲むように分布している中粒等粒状黒雲母花崗岩からなる.両者は漸移関係にあり,活動時期は100 Ma頃と推定される.比叡花崗岩は,年代値,岩相,化学的性質において琵琶湖南部の他の花崗岩類とは異なるので,およそ70 Maの琵琶湖コールドロン形成に直接関与した環状岩体を構成するものとしては考えられない.本岩体中には,岩体西縁部で南北方向に貫入している花崗斑岩脈と花崗閃緑斑岩脈のほかに,優白質微花崗岩,流紋岩,玄武岩,ランプロファイアの小岩脈が岩体全体に点在している.そのうちの花崗斑岩と花崗閃緑斑岩の岩脈は,琵琶湖コールドロンの外縁を画する環状岩脈の一部であると考えられる.
著者
周琵琶湖花崗岩団体研究グループ 橋本 勘 久田 義之 沓掛 俊夫 中野 聰志 西橋 秀海 西村 貞治 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬 吉田 源市
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.380-392, 2000
参考文献数
22
被引用文献数
6

田上花こう岩体(東西方向約20km×南北方向約8km)は,後期白亜紀末の"琵琶湖コールドロン"形成に関わった環状花こう岩体のうちで最も南に位置する.田上花こう岩体は,粒度と組織から4つの岩相に区分される(中〜粗粒黒雲母花こう岩,中〜粗粒斑状黒雲母花こう岩,細〜中粒斑状黒雲母花こう岩,細粒黒雲母花こう岩).田上花こう岩体は,丹波帯のジュラ紀付加コンプレックスと新期領家花こう岩と考えられる観音寺花こう閃緑岩に貫入している.観音寺花こう閃緑岩を含む岩体の北西部に貫入している花こう斑岩岩脈は,雁行状配列を示している.同じく岩体の北西部では,湖東流紋岩類に属すると考えられる珪長質火砕岩を捕獲または伴う石英斑岩岩脈が産する.これらの岩脈群は,"琵琶湖コールドロン"形成時の環状割れ目を充填しているものと考えられる.主要・微量元素全岩化学組成上,観音寺花こう閃緑岩は田上花こう岩とは異なる特徴を持つ.岩脈類も,微量元素組成の点で田上花こう岩類とは異なり,特に石英斑岩は湖東流紋岩類の秦荘石英斑岩に似ている.田上花こう岩は,琵琶湖南部周辺の花こう岩類と密接な成因的な関係を有する.
著者
澤田 一彦
出版者
滋賀大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

3D映像や組み立て自在の粒子模型を活用し,いかにすれば科学的思考力を高めさせることができるのかを実践で明らかにし,その有効性を検証することを研究の目的とした。3Dは,映像に現実味を持たせることに長けている。3Dによる資料提示は,一度に多くの生徒に注目させる必要があり,以下の点で偏光方式が適していた。●偏光による3Dは,アナグリフ方式と異なり,生徒の色盲・色弱に配慮する必要がない。●偏光による3Dは,片眼の生徒には2Dとなり,新たな差別を生まない。●コンテンツの投影・作成は,安価,簡単に導入できる。自作のマジックテープによる組立て自在な発泡スチロール球は,友だちと考えを交流ながら体験的に理解させることに長けている。従来のものと比較して,次のような利点があった。●みんなからよく見えることは,討論に適している。●価数にあたるマジックテープで組立てることにより,実在の物質を生徒が容易に作成できる。これらの教材を単発的に使用せず,次の点に留意して授業を設計し,関心・意欲を喚起する学びの誘い,生徒の考えを揺さぶる言葉がけ,驚きのある体験のしかけ,明らかにしたことを確かにする場面を構成した。●生徒の持っている知識,概念,イメージの誤謬,半わかりを明らかにして,生徒の科学的思考を高める。●予想や考察をモデルや文章でかかせて,生徒の科学的思考を高める。●的確な指示,考える観点を絞らせるような具体的な発問をして,生徒の科学的思考を高める。●生徒が考えを交流したり,練りあう場を設けたりして,生徒の科学的思考を高める。●学習内容を焦点化して,授業のねらいを明確にして,生徒の科学的思考を高める。成果と課題をまとめるにあたって,授業者による観察と質問紙調査を行った結果,図や文章では表現しづらい粒子概念の定着が図られ,発展的な内容に関して好奇心を満足させている生徒の変容が明らかになった。