著者
高貝 慶隆 古川 真 長橋 良隆 高瀬 つぎ子 敷野 修 亀尾 裕
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.947-957, 2011 (Released:2011-12-31)
参考文献数
22
被引用文献数
12 13

マイクロウェーブ加熱分解/誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による土壌中の235U及び238Uの同位体比分析法を開発した.マイクロウェーブ加熱分解では,硝酸-過酸化水素の混酸を用いることで,ケイ酸塩中の天然ウランの溶解を抑制した.また,同位体比を精確に求めるために,岩石標準物質中のウラン同位体比を実試料の同位体比の指標とし,ICP-MSのセルパス電圧をMSのマスバイアス校正に利用した.これらの効果により,放射能を含む標準線源を使用せずにウランの同位体比を0.37% の精度で測定できた.235U及び238Uはそれぞれ定量でき,それらの検出下限値はそれぞれ0.010 μg/kgであった.原子力災害などの緊急時において,本法は,従来法である完全酸分解/ICP-MSあるいはα線スペクトロメトリーと比較すると迅速で広範囲の状況把握が可能である.さらに,東京電力福島第一原子力発電所から7~80 kmの範囲(福島県下115箇所)でモニタリング調査を行った.その結果,サンプリングの地域によってウラン総量に差異はあるものの,同位体比はほぼ一定の天然同位体比であることが確認された.