- 著者
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宋 建華
福島 春子
胡桃澤 伸
田中 究
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.4, pp.145-177, 2001-03-31
- 被引用文献数
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精神分裂病患者で成育歴に心的外傷体験を持つものは少なくないが, このような患者には精神分裂病固有の症状に加え, 心的外傷に起源をもっと考えられる症状を認めることがある。著者らは, 神戸大学精神神経科外来に通院する90名の精神分裂病患者に対して, 解離症状質問票 (Dissociation Questionnaire ; DIS-Q) および解離体験尺度 (Dissociative Experience Scale ; DES) を用いて, 心的外傷に関連した症状とその頻度を調査し, 検討した。さらに簡易精神症状評価尺度 (Brief Psychiatric Rating Scale ; BPRS) を用いて解離と精神症状の関連について調査した。この結果, 精神分裂病患者においても, 健常群や他疾患群と同様に解離傾性を認めた。高解離群では精神分裂病の発症年齢が有意に低く, 心的外傷後ストレス障害にみられる症状を認めた。また, 心的外傷を有する群は解離傾性が高く, 心的外傷のない群より, 離人感, 現実感喪失および行動, 思考, 感情の制御不全が生じやすく, 心的外傷のない群では情動の平板化, 感情緊張の低下, 感受性や興味, 関心の欠如といったいわゆる陰性症状が優位に見られた。また, DESとDIS-Qは強い相関を認め, 精神分裂病の解離傾性を解析するのにDISQはDESと同様, 有用な検査法であることが示された。現象的に精神分裂病症状の中に心的外傷起源の幻聴 (解離性フラッシュバック) が含まれ, 言語的あるいは非言語的な刺激, 特定の状況, それにともなう感情を想起したときに, 思路障害が生じる場合があることを示し, 精神病理学的な検討を試み, 心的外傷を考慮した精神分裂病治療が必要であることを述べた。