著者
玉蟲 敏子 相澤 正彦 大久保 純一 田島 達也 並木 誠士 黒田 泰三 五十嵐 公一 井田 太郎 成澤 勝嗣 野口 剛 畑 靖紀 吉田 恵理
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

朝岡興禎編『古画備考』原本(1850-51年成立、東京藝術大学附属図書館)に集成された書画に関する視覚・文字情報の分析によって初めて、自身の見聞や親しい人脈から提供された第一次情報に基づく出身の江戸狩野家、同時代の関東や江戸の諸派は詳細である一方、上方については一部の出版物に頼り、浮世絵も最新の成果が盛り込まれていないなどの偏向性が確認され、朝岡の鷹揚なアカデミズムの視点から、近代における美術史学成立直前の都市・江戸で開花した書画趣味の実態、価値観、情報の伝達経路を浮上させることに成功した。
著者
玉蟲 敏子 五十嵐 公一 野口 剛 三戸 信惠 渡辺 雅子
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果として特筆されるのは、17世紀の宮廷で制作された和歌を伴う画帖・屏風絵が、絵画ばかりでなく書の料紙の装飾や縁裂の装飾なども重視して制作されていた事実を明らかにしたことである。伊達家伝来の狩野探幽・安信等合筆「百人一首画帖」には明清風の木版摺料紙や伝統的な金銀箔散し・墨流の技法が複合的に用いられ、その表現は仁清の色絵陶器にも共通している。山本素軒筆「明正院七十賀月次図屏風」の表装は七十賀の記録と一致しており、当時のまま伝承されていることが判明した。ともに17世紀後半の京都の装飾感覚を示し、その成立事情から宮廷文化に対する武家方の憧憬や、緊張した当時の朝廷と幕府の関係などがうかがえる。