著者
五十嵐 喜治 吉田 哲哉 鈴木 恵津子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.138-143, 1993-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
15
被引用文献数
29 40

長者ナス(小ナス)から単離したナスニン,および他の2~3のアントシアニン色素が,リノール酸-リポキシダーゼによるβ-カロチンの退色,およびリノール酸の自動酸化に及ぼす影響について,それぞれ,カロチン退色法,ロダン鉄法を用いて検討した.pH 7においてカロチン退色法で測定した抗酸化効果はナスニンで最も強く,次いで,マルビン,ルブロブラッシンの順であった.pH 2.8においてロダン鉄法で測定した抗酸化効果も同じ傾向を示した.また,抗酸化効果はアグリコンのディルフィニジン,マルビジンおよびシアニジンにも認められたが,後2者の活性はそれらの配糖体と大差がなかった.ナスニンはディルフィニジンに比べて高い活性を示した.この結果はリノール酸の自動酸化系におけるナスニンの強い活性にそのp-クマール酸部分が関わっている可能性を示した.
著者
立山 千草 五十嵐 喜治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.218-224, 2006-04-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
6 11

ナス果菜外果皮の色が異なる4種のナス果菜において,外果皮,果肉,花弁部位を3%トリフルオロ酢酸で抽出して得られる粗抽出液およびそのSep-Pak Plus C18カートリッジ吸着画分からメタノールで溶出して得られる画分(粗精製抽出液)についてアントシアニン色素およびクロロゲン酸含量の測定を行った.また,DPPHラジカル消去活性を測定し,それら含量と消去活性との関連性について推察した.(1)緑ナスおよび白ナス外果皮の試料からはアントシアニン色素が検出されなかった.これらの花弁には,ナスニンが主要アントシアニン色素として含まれていた.米ナス外果皮の主要アントシアニンはデルフィニジン3-O-ルチノシドと同定された.また,新たにデルフィニジン3-O-ルチノシド-5-O-グルコシドも含まれることが明らかとなった.(2)各種ナス果菜外果皮および花弁粗抽出液,粗精製抽出液はいずれも,DPPHラジカル消去活性を示した.各ナスのDPPHラジカル消去活性は,クロロゲン酸含量と高い相関を示し(相関係数r=0.762),クロロゲン酸がこれらナスのラジカル消去活性と強く関わっていることが推察された.
著者
菅原 哲也 五十嵐 喜治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.516-520, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

現在,国内で栽培されている日本ナシの主要な栽培品種である ‘幸水’,‘豊水’ について,結実から成熟まで主なポリフェノール成分を定量するとともに,その構成成分とDPPHラジカル消去活性との関係を明らかにした.日本ナシの主要なポリフェノール成分は,‘幸水’ および ‘豊水’ ともに,アルブチンとクロロゲン酸であり,結実時の果実ではポリフェノール含有量が顕著に高く,成熟にともない減少するものの,果実1個体あたりのポリフェノール量には顕著な増加が認められた.また,日本ナシ果実のDPPHラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量に比例して増加し,今回分析した成分の中でクロロゲン酸の寄与率が最も高い値を示した.日本ナシ成熟果のDPPHラジカル消去活性はアルブチン,およびクロロゲン酸が多量に蓄積している果皮において最も高い値を示し,続いて果芯において高い値を示した.日本ナシ果実において,ポリフェノールの局在部位は,果実や種子において,紫外線や酸化ストレスに対する防御機構に関与している可能性が示唆された.
著者
菅原 哲也 野内 義之 五十嵐 喜治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.232-235, 2006-04-15
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

(1)'ジェネバ'果汁は酸味,渋みに特徴があり,他のリンゴ果汁と比較し,糖度が低く,有機酸(リンゴ酸,クエン酸),カリウム,総ポリフェノール含有量が高かった.<BR>(2)'ジェネバ'果汁に含まれるポリフェノール成分(低分子成分)のうち,主要な8成分を推定し,このうち6成分を同定・定量した.リンゴ果汁中に最も多く含まれる成分はクロロゲン酸であり,続いてプロシアニジンB2,(-)エピカテキンの順であった.リンゴ赤色素成分であるシアニジン3-ガラクトシドも,'ジェネバ'果汁の含有量が最も高かった.<BR>(3)リンゴ果汁のDPPHラジカル消去活性は,総ポリフェノール含有量が最も高い'ジェネバ'の活性が最も強く,ポリフェノール含有量の低い果汁ほどラジカル消去能も弱くなる傾向がみられた.