著者
立山 千草 本間 伸夫
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
no.3, pp.37-48, 2012

平成19年総務省統計局「全国家計調査年報」の「食料」部門における各項目の金額(支出金額252項目)、数量(購入量141項目)、価格(141項目)と47都道府県庁所在地の経緯度との相互関係について相関係数を算出・解析し、下記のごとき結果を得た。(1)経緯度と金額、数量、価格との相関係数の値は+0.803~-0.734と広範囲にわたっていた。これらの結果から、食料各項目と経度、緯度との関係は、無関係から関連性の高いものまで多様である。(2)経緯度と消費との相関は正の相関が負よりも多数であることから、食料消費は日本の南・西方面よりも北・東方面が盛んである。(3)経緯度と消費との相関係数(絶対値)は北緯より東経との値に大きな値を示す項目が多いことから、食料生産に直接関わると思われる緯度よりも、主に人文的な影響を与えると思われる経度の方が、食料消費への影響が大きいという可能性を認めた。また、日本国土の経度を愛知(名古屋市)・岐阜(岐阜市)・福井(福井市)以東と三重(津市)・滋賀(大津市)以西で東西二分し、相関関係を比較・解析した結果、食文化の東西についての新知見を得た。
著者
玉木 有子 伊藤 直子 佐藤 恵美子 立山 千草 太田 有子 伊藤 知子 松田 トミ子 山田 チヨ 長谷川 千賀子 山口 智子 小谷 スミ子 渡邊 智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】平成24~25年度日本調理科学会特別研究『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』の一環として新潟県村上市の食と行事の結びつきについて調査を行った。郷土料理や伝統的な食の文化が親から子へ伝承されにくい傾向がある状況の中で、年中行事や慣わしが現代に受け継がれてきた村上市の現状を報告する。<br> 【方法】村上市在住の75~88歳の高齢者(平均80.5歳)から平成25年11月~平成26年3月に聞き書き調査を行い、村上市の史料館や歳時記を参考に現代に伝え継がれている年中行事、慣わしに関する食と行事の結びつきを調査した。<br> 【結果】昭和34年頃までは旧暦が用いられ、現在も名残が残る。季節毎の年中行事や慣わしが多く受け継がれており、主に祭事に関する料理が残っている。神社の信仰により伝承されてきた村上大祭(7月7日)(村上地区) 、瀬波大祭(9月4日)(瀬波地区)、岩船大祭(10月19日)(岩船地区)の3大祭りの他、稲荷神社の初午(2月の第1の午の日)、七夕祭り(8月16日)、地蔵堂の地蔵祭り(11月3日)などは今日まで受け継がれており、市民生活の潤いとなっている。初午では、粳米に小豆を入れて炊いた小豆飯、糠鰯、三角油揚げ、煮しめなどを食べる。古くは米俵のサンバイシにのせて地域のお稲荷様に供えた。節分では、まいた豆を保存し厄除け代わりに一年中食べる慣習がある。この他にも鮭を特別な魚(魚の中の魚)として大切に食しており、村上市の食と行事の結びつきには精神性の高い食の文化が伝え継がれている。
著者
立山 千草 五十嵐 喜治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.218-224, 2006-04-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
6 11

ナス果菜外果皮の色が異なる4種のナス果菜において,外果皮,果肉,花弁部位を3%トリフルオロ酢酸で抽出して得られる粗抽出液およびそのSep-Pak Plus C18カートリッジ吸着画分からメタノールで溶出して得られる画分(粗精製抽出液)についてアントシアニン色素およびクロロゲン酸含量の測定を行った.また,DPPHラジカル消去活性を測定し,それら含量と消去活性との関連性について推察した.(1)緑ナスおよび白ナス外果皮の試料からはアントシアニン色素が検出されなかった.これらの花弁には,ナスニンが主要アントシアニン色素として含まれていた.米ナス外果皮の主要アントシアニンはデルフィニジン3-O-ルチノシドと同定された.また,新たにデルフィニジン3-O-ルチノシド-5-O-グルコシドも含まれることが明らかとなった.(2)各種ナス果菜外果皮および花弁粗抽出液,粗精製抽出液はいずれも,DPPHラジカル消去活性を示した.各ナスのDPPHラジカル消去活性は,クロロゲン酸含量と高い相関を示し(相関係数r=0.762),クロロゲン酸がこれらナスのラジカル消去活性と強く関わっていることが推察された.
著者
佐藤 恵美子 松田 トミ子 山田 チヨ 渡邊 智子 山口 智子 伊藤 知子 伊藤 直子 太田 優子 小谷 スミ子 立山 千草 玉木 有子 長谷川 千賀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた聴き取り調査結果から、昭和35~45年頃までに定着した新潟県のおやつについて報告する。<br />【方法】村上、新潟、長岡、柏崎、魚沼、上越、佐渡の7地域のおやつについて検討した。<br />【結果】新潟県は米を中心とした主食の豊かな食文化があり、うるち米、もち米、くず米、米粉を使ったものが多く、おやつにも主食と類似した文化がみられた。うるち米を使ったものには、おにぎりに生姜味噌をつけて焼いた「けんさん焼き」(魚沼)、米を二度炊きにしてから搗いた「にたて餅」(村上)があった。もち米を使った「餅」はきな粉や砂糖醤油をつけて頂き、「あんこ雑煮(おしるこ)」や「あられ」・「かたもち」(新潟)にして食された。米麹から作る「甘酒」(新潟)、灰汁に漬けたもち米を笹の葉で巻いた「灰汁笹巻」(村上)も特徴的である。もち米や米粉を使ったものには、新潟県の特産品として親しまれている「笹団子」(新潟・県全域)があり、中に餡を入れたものだけでなく、ひじきやあらめの煮物を入れたものも食された。新潟県のおやつには笹の葉を用いたものが特徴的であり、笹団子の他に「三角粽」(柏崎・県全域)や「笹餅」(魚沼)などがあり、地域により笹の用い方に違いがみられた。くず米の利用として、あんや大根菜を入れた「あんぼ」(魚沼)、「おやき」(柏崎)、「みょうが団子」(上越)などがある。佐渡では米粉を使ったものとして、雛祭りには「おこしがた」、釈迦祭りには「やせうま」、ケの日には「とびつき」が食べられていた。その他のおやつに含まれるものに「バタバタ茶」(上越)があり、糸魚川市で泡立てた番茶をいただく風習があった。
著者
立山 千草 坂口 淳 本間 伸夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.174, 2005

<br>【目的】地域の風土に根ざした多様な地方野菜は四季折々の郷土料理の素材としてその地域で生活する者の健康をも支えてきたと考えられる。しかし、現在、全国地方野菜、地方品種の作物における生産と消費の現状および今後の展望については、様々な視点から注目を集めながらも不明な部分が多く、新潟県の地方野菜においてもおおよそ同様な状況下にある。そこで、新潟県の37種の地方野菜に関する認識の程度を把握する目的で調査を行った。<BR>【方法】県立新潟女子短期大学生活科学科食物栄養専攻生、専攻科食物栄養専攻生の96名およびその家族(72名)を対象に新潟県の地方野菜に関する事項について2004年12月に調査票を用いた記述方法によるアンケート調査を行った。さらに、インターネット会社の協力を受け、2005年3月にWeb上でネット調査登録している全国約35万人を年代(20から29歳、30から39歳、40から49歳、50から59歳の4段階)ごとに無作為抽出し、アンケート協力の依頼のメールを送付し、アンケート調査(n=701)を実施した。<BR>【結果】37品種の地方野菜について、本学学生とその家族(回答者168名)に調査を行った結果、知名度が高い品種、極めて低く、食べたことがない品種も複数存在することがわかった。一方、本学関係者の間で知名度が比較的高い品種について全国ネットによる知名度調査の結果、今回のアンケートではじめて知ったと答えたパネリストがほとんどであった。地方野菜が市場に流通されることなく生産された土地で消費される傾向にあること、歴史にはあまり関心がなく、利用に強い関心がもたれていることが原因と考えられる。