著者
鷹野 剛 上村 豊 五明 佐也香 上笹貫 俊郎 松島 久雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.535-540, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1

埼玉県メディカルコントロール協議会(以下,県MC協議会と略す)は,平成29年4月1日から指導救命士制度を導入し認定を開始した。導入にあたり指導救命士による教育指導体制の構築にはどのような活動を行い,役割を担っていくべきかが検討課題となった。そのため「教育」,「事後検証」,「学術活動」の指導体制の現状と,指導救命士による今後の活動予定について県内27消防本部に対してアンケート調査を実施した。アンケート結果では県内で統一した救急隊員の教育指導にかかわるガイドライン作成の要望が寄せられた。県MC協議会は新たに指導救命士部会を設置し,プロトコール研修会と事後検証を実施するための県内で統一したガイドラインを作成し各地域メディカルコントロール協議会(以下,地域MC協議会と略す)へ通知した。作成にかかわった指導救命士部会のメンバーとして,埼玉県の指導救命士による教育指導体制の構築へ向けた取り組みと今後の展望を報告する。
著者
一杉 正仁 安川 淳 五明 佐也香 槇 徹雄 徳留 省悟
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.3-8, 2011 (Released:2018-03-01)
参考文献数
15

1997年から2011年の14年間に獨協医科大学法医学講座で行われた四輪自動車運転者の法医解剖91例のうち、運転中の体調変化によって病死した33例(走行中病死群)および事故による外傷で死亡したが、原因が運転者の機能的変化によると推定される8例(外傷死群)を対象に、その特徴を調べた。いずれの群ともに、70%以上の運転者で何らかの既往疾患が認められ、高血圧、心・大血管疾患、糖尿病が多かった。事故による損傷の重症度では走行中病死群で平均ISSが4.7と低いが、外傷死群では37.0と有意に高かった。すべての身体部位のAIS値は外傷死群で高かったが、特に胸部の平均AIS値が4.1と著しく高く、頭頸部の2.0、四肢の1.8と続いた。交通事故死の約1割で運転者の体調変化が事故原因となっているため、まず、運転者の健康管理を厳格に行う必要がある。また、交通外傷と診断された患者の中には、事故原因が運転中の体調変化に起因する例が潜在的に含まれる。したがって、外傷患者に対しても、交通事故の原因として運転者の体調変化を念頭に置き、検索をすすめる必要があろう。
著者
鈴木 光洋 横田 泰佑 五明 佐也香 佐伯 辰彦 上笹貫 俊郎 速水 宏樹 杉木 大輔 池上 敬一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.324-327, 2016-05-01 (Released:2016-05-02)
参考文献数
8

64歳,女性。既往歴:気管支拡張症。突然大量に喀血し,当センターへ搬送された。気管挿管を施行し,気管支鏡を施行,来院時喀血は止まっており経過観察とした。第3病日大量に喀血し酸素化不良となり,veno venous extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)を開始した。血管造影検査にて右気管支動脈より出血を認め,中心循環系血管内塞栓促進用補綴材(セレスキュー®,アステラス製薬)による血管塞栓術にて止血を行った。酸素化は改善せず,気道内よりoozingを認めた。このためECMO施行中の抗凝固療法には強い制限があった。気道内には血餅が充満しており,気管支鏡にて慎重に血餅除去を行いながら人工呼吸管理を行った。徐々に肺の含気が得られ第15病日よりhigh frequency oscillatory ventilation(HFOV)を開始した。第32病日にECMOから離脱した。第95病日にリハビリテーション目的に転院となった。本症例では出血のリスクが高く,ECMO施行中の抗凝固薬使用には強い制限があった。しかし,血栓性の合併症は回路の交換1回のみであり,安全にECMOから離脱することができた。