著者
五月女 さき子 鳴瀬 智史 六反田 賢 澤田 俊輔 河岡 有美 兒島 由佳 柳本 惣市 梅田 正博
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.94-100, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
10

骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移などに対してビスフォスフォネート製剤やデノスマブ製剤などの骨吸収抑制薬が広く使用されているが,薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を発症することがある。MRONJに対して最近では外科療法の有効性が報告されるようになった。今回80歳以上の高齢者に発生したMRONJに対する治療法と予後について後ろ向きに検討した。3施設で加療を行ったMRONJ180例(80歳以上66例,80歳未満114例)の背景因子や治療法の差,予後の差,および治癒率に影響する因子について,Fisherの正確検定,One-way ANOVA,Kaplan-Meier法,Log rank検定,Cox比例ハザードモデルにより解析を行った。80歳以上の高齢者では骨粗鬆症で長期間骨吸収抑制薬が投与されている患者が多かった。治療法は年齢にかかわらずほとんどの患者で外科療法が選択されており,年齢による治癒率の差はなかった。治癒率に関連する因子として,原疾患(骨粗鬆症/悪性腫瘍),治療法(外科療法/保存療法),術前CTにおける骨膜反応の有無の3変数が独立した因子となっていたが,年齢は治癒率とは関連性はみられなかった。これらのことから,MRONJは年齢よりも原疾患やCT所見を主眼において治療法を選択することが望ましく,また若年者と同程度の予後が期待できるものと思われた。
著者
五月女 さき子 船原 まどか 川下 由美子 梅田 正博
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.190-197, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
16

頭頸部がんの放射線治療時にしばしばみられる有害事象の一つに重症の口腔粘膜炎があるが,有効な予防法は確立していない.本稿では,MASCC/ISOOガイドラインに示されている頭頸部がん放射線治療時の口内炎対策とそれに対する著者らの知見を示し,含嗽剤やステロイド局所投与について,関連する情報と著者らの基本的考え方について述べる. さらにわれわれが行っている有害事象バンドル(①感染源になる歯の照射前抜歯,②スペーサー作製,③口腔ケア,④塩酸ピロカルピンの投与,⑤デキサメタゾン軟膏+オリブ油の塗布,⑥保清と保湿,ステロイド塗布などの皮膚ケア,⑦フッ化物局所応用の予防策)についても紹介する. 周術期口腔機能管理が保険収載され数年が経過し,多くの医療機関で放射線治療時の有害事象の予防が歯科に求められるようになったが,管理方法の標準化や有効性に関するエビデンス検証は今後の課題である.多施設共同臨床研究などにより,放射線性口腔粘膜炎の重症化予防方法を確立していくことが重要である.