著者
五月女 さき子 船原 まどか 川下 由美子 梅田 正博
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.190-197, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
16

頭頸部がんの放射線治療時にしばしばみられる有害事象の一つに重症の口腔粘膜炎があるが,有効な予防法は確立していない.本稿では,MASCC/ISOOガイドラインに示されている頭頸部がん放射線治療時の口内炎対策とそれに対する著者らの知見を示し,含嗽剤やステロイド局所投与について,関連する情報と著者らの基本的考え方について述べる. さらにわれわれが行っている有害事象バンドル(①感染源になる歯の照射前抜歯,②スペーサー作製,③口腔ケア,④塩酸ピロカルピンの投与,⑤デキサメタゾン軟膏+オリブ油の塗布,⑥保清と保湿,ステロイド塗布などの皮膚ケア,⑦フッ化物局所応用の予防策)についても紹介する. 周術期口腔機能管理が保険収載され数年が経過し,多くの医療機関で放射線治療時の有害事象の予防が歯科に求められるようになったが,管理方法の標準化や有効性に関するエビデンス検証は今後の課題である.多施設共同臨床研究などにより,放射線性口腔粘膜炎の重症化予防方法を確立していくことが重要である.